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ラノベ: 『ソードアート・オンライン プログレッシブ』開始で見えてきたキリトとアスナの関係

 なんだか三夜連続になってしまった、『ソードアート・オンライン プログレッシブ001』の感想です。
ソードアート・オンライン プログレッシブ1 (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ1 (電撃文庫)
(2012/10/10)
川原礫

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 さすがにこのくらいで終りにしようかと思いますが、三つ目となる本エントリでは、キリトとアスナの関係についての感想を書いてみることにします。

 『プログレッシブ001』は、最初に感想を書いた「星なき夜のアリア」からスタートするわけですが、その冒頭は、この一文で始まります。

 一度だけ、本物の流れ星を見たことがある。

 即ち、『プログレッシブ』シリーズの最初の一文でもあります。
 キリトの回想ですが、それに続く述懐から、当時小学校の四年か五年くらいだった和人(=キリト)には、かなり印象的で感慨深い経験だったように思われます。そして、それを思い出させたのは、始まって間もないデスゲームであるSAOの中、たまたま見掛けたアスナの剣技でした。
 それは、細剣[レイピア]の基本技に過ぎなかったのですが、とにかく、スピードが凄まじい。キリトは、こう表現しています。

俺は、あれほど恐ろしく、また美しいソードスキルをいままで見たことはない。


 子供の頃の印象的な経験を思い出させるようなその剣技。文章表現としてはこれは、一つの言葉を想起させます。
 それは、「一目惚れ」です。
 最初キリトは、その人物が女性だとは思っていなかったわけですが、一瞬で魅了され、憧憬を懐いたはずです。

 一方のアスナ。
 彼女は、この世界にやってきてしまったことを後悔し、絶望しか見出せず、そしてまた後悔するという完全なるループ状態に陥っていました。

「…………どうせ、みんな死ぬのよ」
「どこでどんなふうに死のうと、早いか……遅いかだけの、違い…………」

 そんな、既に心が先に死んでしまったようなアスナにとってキリトは、≪本物≫を教えた人物でした。

 一ヶ月前まで暮らしていた現実世界で、これほど何かを食べたいと思ったことが、果たしてあっただろうか? これほどまで強くお風呂に入りたいと思ったことがあっただろうか?
 食べたくもないのに、親に言われるがまま機械的に口に運んでいたオーガニック食材のコースメニューと、口に唾が湧くほど体が求める仮想のクリームパン。そのどちらを、≪本物≫と呼ぶべきなのか…………?

 ──これがこの世界の≪戦い≫だとするなら、わたしが昨日までしていたのは似て非なる何かだった。

 そして、二層の街の夜が賑やかであることについては、こう口にしています。

「……もっとも、ボス戦でどこかの誰かが踏ん張ってくれなかったら、この光景は存在しなかったでしょうけどね」

 アスナは良家のお嬢様で、父親は一代で自分の会社を急成長させたわけですがそれも一族の潤沢な資金があったからでもあります。母親も大学教授。客観的には恵まれた家庭に育っているのですが、仮想世界であるSAOの中で出会った≪本物≫ほどに本物と思えるものに触れたことがなかった。

 アスナにとって、本物はすべてキリトが教えた。それはまるで、imprintingのようです。

 二人とも人間的に、特にキリトについては相手の性別を知る前から魅了されているわけで、そういう部分で惹かれ合っている間柄は、結婚してからもうまく続きそうですね。

 物事の考え方も、非常に親和性が高い。
 例えば、最初に二人が出会った迷宮[ダンジョン]から、倒れてしまったアスナを助け出したキリトに、彼女はこう言いました。

「余計な……ことを」

 なぜ置いていかなかったのかと問われたキリトは、こう返しました。

「助けたかったのは、あんたが持ってるマップデータさ」

 これで、「合理性で応じられると何も言えない」と思ってしまうような、アスナはそんな人物であり、その後もずっとキリトとはそんなやり取りを見せることになります。しかも、幼い頃からエリートコースを走ってきたこともあってか、実に博識です。

 更には、剣技。
 キリトが最初に見た頃のアスナは、そのスピードでキリトを魅了しつつも、「戦闘の運び方があまりに危うい」という印象も与えました。効率も悪すぎる。
 しかしそれは、逆に言えば、あまりにも惜しいと思わせたはずです。キリトは、こういうことを何度も思っていましたから。

 今日の戦いを生き残れば、アスナはきっと誰よりも速く誰よりも美しい剣士としていつかアインクラッド中にその名を轟かすだろう。恐怖と絶望に挫かれかけた数多のプレイヤーたちを、流星の輝きで照らし導くだろう。俺にはその確信がある。


 一方のアスナは、一層のボス戦でキリトの戦い方を見て、先に挙げたように、これこそが≪本物≫だと感じます。

 ──強い。
 いや、強いのひと言では片付けられない何かが、彼の戦闘にはある。パワーやスピードといった尺度を超越した、≪先の次元≫を感じさせる何かが。
 それが何なのかを、ネットゲームもフルダイブ環境もまるで門外漢なアスナにはなかなか言葉にできない。しかし敢えて表現するなら、最適化された感じ、だろうか。あらゆる動作から無駄が排除され、それゆえに技は速く、剣は重い。

 ──きっと、まだまだ≪この先≫があるのだ。隣を走る剣士は、その道のずっとずっと先を行っている。この世界は仮想の幻で、あらゆる行いは偽物だけれど……でも……でもきっと、この気持は真実だ。彼の見ているものをわたしも見たい、という。


 様々な点で、キリトとアスナは、違いつつも違いすぎず、まるであつらえたようにぴったりと合う、そんな二人です。
 そうであるから、この『プログレッシブ』というシリーズは、まあまだ一冊、二話しか読んでませんが、キリトとアスナの夫婦珍道中(笑)になってしまうわけですね。

 この時期のキリトは、まだ他を圧倒するような強さを感じさせず、どこか成長の途上にある感じに見えます。そんな彼にアスナは、もっと子供の頃に見た流星を想起させるような、追い求めるべき光明を見せたのでしょう。
 そんなキリトがアスナをまた導き、二人が補い合うように登り詰めていく、そんな関係が成立しています。

 『ソードアート・オンライン』の文庫版一巻で結婚までしてしまう二人ですが、そこにはあまり違和感がありませんでした。その、当然とも思える相性の良さは、これまで特に考えてきませんでしたが、出会いの頃からこのように存在していたのですね。
 これは、後にどんな人物が登場してもどうにもこの二人の結び付きを超えると思えなかったのも当然と言えるかも知れません。

 ともあれ、まだしばらくはこのコンビ(本人たちは違うと否定していますが(笑))での攻略が描かれると思われる『プログレッシブ』シリーズ。あとがきには一年に一冊くらいしか出せそうにないようなことが書いてありますが、早くも次が待ち遠しい気分です。

[追記:2012-12-13]
 今月発売の、本家新刊↓
ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫)ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫)
(2012/12/08)
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に、こういう記述がありました。アインクラッドのことを明日奈が思い出しているシーンです。

 たいていの場合、前を≪血盟騎士団≫団長のヒースクリフが歩き、後ろにはボス戦の勝利に沸くギルドメンバーたちが続いていたが、例外もあった。アスナがギルド[KoB]に加入する前、デスゲーム攻略の初期は、すぐそばを黒衣のソロプレイヤーが歩いていたのだ。
 激闘の疲れを感じさせない飄々とした態度で、下手な冗談を言ってアスナを怒らせたり、次の層の情報を教えてくれたり……そして何度かは、果てなき戦いに消耗したアスナの手を引いてくれることもあった。

p171


[追記終わり]

関連項目:

tag : 電撃文庫 川原礫

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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