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ラノベ: 『まよチキ!』~10巻感想、そしてヒロイン奏の魅力に迫る

 先日、10巻の感想をちょっとだけ書いたこの作品。
まよチキ!10 (MF文庫J)まよチキ!10 (MF文庫J)
(2012/01/23)
あさのハジメ

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 私は、アニメ版から入ったわけですが、その第一話の第一印象で既に奏にハマりそうなことを言っていました。そしてその予想通りになりました。
 アニメの最終回の感想でだって、奏がメインヒロインと言い切ってましたし。

 で、その後原作にも手を出し、原作でもやっぱり奏をメインヒロイン認定しました(笑)。

 出会いとそれからしばらくのエピソードでこそスバル目立ってましたけど、実際のところ、終始物語をコントロールして導いていたのは奏に他なりません。
 それは勿論、彼女が一番「見えて」いたからでしょう。状況も、人の心も、まあ神じゃないですから完璧とは言えなくても少なくとも登場人物の中では。ジロー以外にそれなりの分量の一人称描写があったのが奏だけだというのもありますし。

 この物語、非常に構成がいい感じですね。
 奏、スバル、そしてマサムネという三人のヒロインを巧妙に配置し、他にもナクルやシュレ先輩、紅羽などが登場しはしますが、ある程度以上近づかせない、そんな節制が効いている。
 何でも見えているようで、何でもは見えていない、見えるものだけしか見えていない奏の死角は、対極的な存在であるマサムネが埋めています。

 ところで、物語が始まったとき、ジローがスバルの秘密を知ってしまい、ほぼ同時に奏も登場します。
 だからジローは、正体を現した、本気の、つまり仮面を付けていない奏をそこで見たのですが、ジローが主人公であることから、我々読者は、仮面を付けていない奏ばかりをずっと見てきたわけです。
 つまり、ジローをいじって楽しむ姿、楽しそうな姿です。
 だからこそ、それが失われたときの重みが感じられます。
 またその中で我々は、奏の勘の良さ(洞察力という意味で)と、行動力、優秀さを見せ付けられます。だから、デレちゅきさんの登場などという荒唐無稽なこともアリかな?みたいに思えてしまいます。

 さて、その奏が「天敵」とまで言っていたマサムネ。奏は彼女の一体どこをそれほど警戒していたのか?
 マサムネがジローに接近した理由は、自分を変えてくれるのではないかと思ったからです。マサムネは、友達のいないスバルに自分を重ねていて、そのスバルを変えたジローなら、と。
 マサムネは他人が信じられない。だから、他人を近づけられない。しかしそれは、見えすぎてしまうからかも知れません。
 現にマサムネは、奏の本質を見抜き、ついには、自分と奏は同じである、即ちどちらも「人間不信」なのだと喝破します。

 誰も信じられずに壁を築いてきたマサムネ。人当たりの良い仮面を付けてきた奏。
 この関係で、思い出した作品があります。それは、故・氷室冴子の最初期の作品(新人としての受賞作という意味ではデビュー作)である『さようならアルルカン』です。
さようならアルルカン (集英社文庫―コバルトシリーズ 52B)さようならアルルカン (集英社文庫―コバルトシリーズ 52B)
(1979/12/10)
氷室 冴子

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 この作品の主人公の少女小田桐(ざっと読み返してみたけど名前がわからない……)と彼女が小学生の頃から追い続けていた賢く純粋な少女柳沢真琴、そして洒脱な少年宇野緒美。ある事件より、真琴は皆に親しまれる人気者になりました。「仮面」を付け始めたのです。一方緒美は、誰も近づけず孤独を守る、そんな「仮面」です。
 小田桐も含めて三人ともが、「仮面の人生」を送っていたのです。

 そんな奏の仮面を象徴するのが、「涼月奏」という名前だったのでしょう。
 10巻p58で、奏が微笑んだとき、「私は、涼月奏だもの」と言ったことがそれを示していると思います。
 思えば、ジローはいつも、デビル涼月とかその他様々な徒名で(心の中では)呼んでおり、また奏はスバルに自分を「カナちゃん」と呼んで欲しいと思っており、それらが奏にとっての二人の位置付けというものを示しているのではないでしょうか。

 途中までは、絶好調でジローをいたぶって楽しんでいた(かのような)奏ですが、徐々に切迫感が漂ってきます。
 しかし、かなり切羽詰まった状況になっても、かなり危うさが見えてきても、そんなにはらはらさせないのはどうしてでしょう?
 多分、奏はそのことも含めてわかっていたからではないでしょうか。
 たとえどうなるにせよ、予想外のことが起きることも予想の範囲内として受け止める、そんな奏だったのではないでしょうか。

 多分、奏はそんなに強い人物ではないでしょう。実際、高校生になって学校に通うようになり、「仮面」を付けるようになってしまった。
 しかし、その聡明さでもって、なんとか受け止めてきた。
 その辺りに、私が彼女をメインヒロイン扱いする最大の理由があります。やはり私は聡明なヒロインが気になるのです。奏のように、あまり強いわけでなくても。むしろ、それを補うくらいの聡明さが奏には備わっているから。

 付けてきた「仮面」(というより壁?)が正反対であるように、マサムネもまた不安定な状態だったのに、彼女は逆に大人でした。
 マサムネの武器は、これも奏の聡明さとは対極的な、「勘」だったわけですけど。

 ともあれ、そのマサムネの言葉がきっかけとなり、奏も「本音」をジローに告げました。
 以前書いたように、10巻の表紙イラストは、奏がそれをさらけ出したことを示しているのだろうと思います。

 この時点で、奏、スバル、マサムネの三人の気持ちが明確になっており、それを俯瞰したのも10巻最後の奏の一人称でした。
 しかし、ジローの気持ちはスバルに傾いており、すでに一度は告白もしています。
 順当に行けばこの物語でも、ジローとスバルのカップルが成立することでしょう。
 つい、『化物語』に始まる物語シリーズを思い出しました。あれも、宿命的なつながりのある暦と羽川という関係があるのに、暦が選んだのは戦場ヶ原でした。
 そういえば、ガハラさんが羽川のことを「ご主人様」とか呼んだシーンがありましたが(笑)。
 ついでに言えば、先日やったエロゲの『WHITE ALBUM2』もそんな感じでしたが、あの話では雪菜が強烈過ぎて、スバルとは随分違いますね。

 そんな感じで、なんか奏の恋は実らないんじゃないかみたいな気がするんですが、それで引き下がる奏ではないでしょう。ジローとスバルがくっついても、今度は二人をいじって楽しむ、そんな情景が目に浮かぶようです。

tag : MF文庫J あさのハジメ

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

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