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ラノベ: 『なれる!SE6 楽々実践? サイドビジネス』

 相変わらず飛ばしまくってるこのシリーズですが、今回のは一寸一服の中短編集。
なれる!SE〈6〉楽々実践?サイドビジネス (電撃文庫)なれる!SE〈6〉楽々実践?サイドビジネス (電撃文庫)
(2012/02/10)
夏海 公司

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 エピソード1~5まであって、うち「1」が全体の半分くらいのページ数です。というわけでこれが「中編」ということでしょう。エピソードタイトルも標題の「楽々実践? サイドビジネス」ですし。
 では、順に感想書いてみます。

○ エピソード1 楽々実践? サイドビジネス
 これの感想は、主観一直線で行きます! いや、いつも独断と偏見で感想を書いてますが、それでも一匙の薬味くらいの客観性は調合しているつもりなんですよ。
 でも、このエピソードはそれもヌキ。
 話はどんなかというと、まず工兵がゼミの同窓会に出席したところから始まります。で彼は、ゼミのアイドル的な存在だった伊織にバイトを持ちかけられるのです。
 彼女は今、某ちっちゃなベンチャーに勤めているんですが、そこでなんもわからないのに情報システム担当にさせられて困っているとのこと。だから、工兵がSEをやってると聞いて、なんかのときに相談できるように連絡先を交換しました。
 アイドル伊織のメアドをゲットして浮かれる工兵に、なんと彼女の方から週末ランチのお誘い。
 舞い上がって出掛けた工兵ですが、待ち合わせ場所に伊織がやってこない。と、担当している社内LANでトラブってて困り果てていると連絡が来ます。
 取るものもとりあえず参上した工兵。トラブルは、単なるケーブルの配線ミスで、あっさり解決。

 こっからが問題です。散々おだてられた工兵は、上記のようにバイトを持ちかけられます。しかも、副業がバレないように伊織が気遣ってくれたりして、ついつい引き受けてしまうのです。

 それが、実に巧妙な企みで、どんどん「お願い」がエスカレートしていくのです。しかも、アメとムチでがっちりと捕まえて逃がさない。思えば、確定申告が不要なように20万以内に押さえさせたのも、ディスカウントのためか?

 なんでもかんでもやらされて疲れはて、ついに工兵は通勤途中、カモメさんの目の前で派手にぶっ倒れてしまいます。
 怒り狂ったのは立華。

 すいません! バイトなんかして本当申し訳ありませんでしたぁあ!
 頭を抱えていると、だが。
「無線LANリプレースが十万!? あんたアホ? 技術料込みで三十万は取れるでしょ、何やってんのよ!」
「え、怒るのそっち!?」

 いや勿論、ほんとはやっちゃいけないことだというのは前提なんですが、伊織のあまりの仕打ちに、立華の方が報復せずにはいられない気分になってしまったのです。

 で、悪いことにそこのタイミングで、最初から全部伊織に仕組まれていたことが判明し、更に追加のサポート要請まで重なります。

 立華は工兵に計画を何も告げず、その「トラブルシュート」について行きます。で、工兵一人では対応できないから「複数人」で対応させてくれ、ついては今日一日分だけでいいから追加のバイト代をくれ、「絶対にトラブル解消してみせ」るから、と。
 最後の一言が効いたのか伊織が頷くと、突然乗り込んでくる扶桑通建のエンジニア集団!
 まるで軍隊のように、確実に問題点を潰して、潰して、潰しまくるむくつけき男達!
 かくして、一時間ほどでトラブルは見事解決!
 そして、一流SIerに対する正当な報酬を請求します。
小計:百万円

 結局、これで法的手段も視野に入れて話を通し、今後一切工兵には相談しないとの念書まで書かせて、「トラブル」解決。

 いやもうなんつーか、痛快!です(この辺り思い切り主観(笑))。
 立華と、扶桑の薬院さんの台詞をちょっくら引用します。まず立華。

「あの手のたかり屋は言葉でやり合っても埒あかないしね。一旦完璧に仕事をやりとげてからかかるコストを見せつける。自分達の要求がどれだけ法外なものか思い知らせた方がいいのよ。そのためには扶桑通建みたいな電設会社の手を借りるのが一番ってわけ。ルータの設定作業量は『知らない分からない』で突っぱねられても、工事の作業ボリュームまで見てとぼけられないでしょ」

 そうなんです。「モノ」を見せる、これは確実。逆に言えば、「モノ」を見せないと理解しない。これがこういう人達です。
 続いて薬院さん。

「エンジニアを馬鹿にする人間は会社を問わず私達の敵です。今日のメンバーも自由参加で集まったんですよ? 他人を利用することしか頭にない、勘違い女こらしめたいんですけどって呼びかけたら」

 まあ、こちらはやや一般的な話になりますが、似たようなもんですね。
 この話は、ある意味勧善懲悪的な結末でした。まあ、そう言う私の「悪」の基準がやっぱり主観的ですけど(笑)。

 ちなみに、この薬院さん、いつの間にかしっかりフラグが立ってました。
 ……立華命、という(笑)。
 なんせ、今回の件で立華が工兵のために腹を立てていたと知って、工兵にライバル宣言してましたから(笑)。

 あと、ちょっと気になったのがp79にある用語。「OS」を「オペレーションシステム」と言っていますが、正しくは「オペレーティングシステム(Operating System)」ですね。ただまあ、この作者さんがこんな勘違いするとはとても思えないので、校正で間違えられたかな?とか思ったり。
 それから、これは単に説明を省いただけかと思いますが、p96の「クロスケーブル」の件は、場合によるんですよね。ま、ここはそこまで書いても冗長になってしまうシーンですけど。

 それにしても、相変わらずメーカの実名がばんばん出てきますね、ヤマハとかバッファローとか。
 実は、以前会社でRT100iを使って気に入ったので、自宅でもヤマハのルータを使っています。以前はRT80i、今はRT57i。
 対して、モノじゃなくSIとかの会社は架空のものですね。まあ、ネタにしているからというのもありますが、これはフェアユースみたいな考え方なんでしょうか?

○ エピソード2 今すぐ始める? 検証作業
 エピソード1が標題作なわけですが、この話も業務時間外にやれと指示されたことを考えると、ある意味でサイドビジネスかも? というか、そう言ったらエピソード4まで全部そうかも?
 会社に来てた売り込み。なんでも「次世代統合ルータ」とかいう触れ込みで、なんかそれが気になってしまった工兵が検証作業をすることになります。立華は、ちゃんと検証してNGになれば断りやすいくらいで丸っ切り信用してませんが。
 妙にハマり込んでしまう工兵。そばで立華が寝こけていても気にならないくらいに。

 ……これが──悟りか。
 呻くようにつぶやく。
 いや、生身の女の子より機械に興奮している時点で立派に変態な気もするが、そんな些末事に囚われることなく工兵は新しい通信を開始した。


 ところが、勿論このキカイはダメダメで、使い物になる代物ではないんですが、工兵が「面白い」と言ったのを聞いた社長がそれを使うことにしてしまい(笑)、工兵と立華でなんとかすることに。

 結局、今回は短編のためか工兵の奇跡もそれほど派手ではなく、複数機能を同時に上げるとリソース不足でハングアップする、なら二台使えばいーじゃん、ということで。

 オチ。
 その導入先の人が、工兵と全く同じようになんかこのマシンを気に入っている様子(笑)。

○ エピソード3 絶対合格? 採用面接
 なんと、工兵が立華と一緒に採用面接官をすることに(笑)!
 次々に応募者を切り捨てる立華。お陰で圧迫面接をするってことでネットで評判に(勿論悪評)。
 一人だけその立華を凹ませるほどの実力者が来ましたが……賀茂さんという人。でも、結局彼はもっといいところに行ってしまいました。
 とかいう経過の末、採用担当から新しい企画が。

 ドSなロリ顔エンジニアがあなたを圧迫面接!? 専門用語で罵られたい技術者はスルガシステムに集まれ!


 いや、勿論立華が却下しましたが(笑)。
 ところで、今回ついに、カモメさんの本名が明かされました。
 それを知らなかった工兵は「人の名前を覚えられない奴」と言われることに(笑)。
 ……私も知らなかったんですけど、実はどっかで出てきてたんでしょうか? なら私も「人の名前を覚えられない奴」?

 この件で工兵、ひとつ気づいたことがあります。昔の自分について。

 あの頃の工兵はひたすら面接の必勝法を探すことに汲々としていた。何か全面接官の望む正解がありそれを答えるのが就活だと思っていた。
 馬鹿な話だ。面接官はただ工兵の能力・価値・可能性を見ようとしていただけなのに。当の自分がマニュアルやテンプレートで「桜坂工兵」という個人をガチガチに押し殺していたのだ。コミュニケーションが成り立つはずもない。あれで受かったら本当奇跡だった。

 この作品、どのキャラも見掛けによりませんよね。あのホストみたいな採用担当も。

○ エピソード4 心に残る? 3分間スピーチ
 後輩の結婚式のスピーチで失敗して凹んでる橋本文月課長。しかも、同じようなことが直後に迫っています。
 スピーチの練習に付き合うことになった工兵。
 結局、橋本課長(29)の個性を活かしたスピーチをしたらいいという結論に。
 まあ、最終的には盛り上がって、……収拾つかなくなった?んですけど。なんか、昔のドイツの指導者に似ていると言われたとか(笑)。
 ちなみに、参考にした本は『歴史人物に学ぶ名演説法』。

○ エピソード5 完全? 禁酒マニュアル
 このタイトル、昔の『完全○○マニュアル』のパロでしょうか(笑)?
 このエピソードだけは、工兵視点ではなく梢視点です。
 禁酒しなければ、と決意した梢の、涙ぐましい徒労(笑)が描かれています。
 しかし、最後に文京区役所に連れ込まれたらしい工兵、どうなったんでしょう? ネットでの目撃情報へのコメントでは、「……その男、終わったな」とあったようですが(笑)。

 エピソード1から4までは、そのまんまとは言えなくてもなんか工兵のサイドビジネスっぽい感じでしたが、梢視点のエピソード5は、メタな視点から、この作品自体のサイドビジネスって感じでしょうか。

tag : 電撃文庫 夏海公司

コメント

非公開コメント

No title

水響さんのこのシリーズの感想を読んでていっつも思うんですけど、このシリーズってどの“層”をメインターゲットに想定してるんでしょうね?(笑)

Re: No title

最初は、私のようなIT業界OBじゃないと楽しめないかなと思いましたが、現役の人が結構読んでるみたいですね。
実は最近、これ、将来IT業界に進みそうな若者をターゲットにしているんではないかと思うようになりました。

マトモな技術と今更隠しようもない業界のブラックさを描きながら、ブラックな会社の体裁を整えつつも実質はしごく真っ当なスルガシステムという会社を舞台にし、極めて優秀な技術者である立華を脇に置いて経験もない工兵を主人公に据え、ミラクルな活躍をさせる。
これは、事実を混ぜることで嘘っぽさを丁寧に潰した、正統派のヒーローものですよね。

ちなみに、6巻のあとがきによるとこの作者さん、某企業の『新人エンジニアの育成について』というパネルディスカッションに参加して話してきたそうです。

No title

工事には大仰な装備を腰から大量に下げてるってハッタリも結構有効です(笑)
インパクトドライバなんかあのドルルルルて豪快な音立てて壁のパネル開けたり
こんだけ手間かかってんだぞみたいな

Re: No title

自慰……じゃない、示威行動のようなものですね(笑)。
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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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