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ラノベ: 『魔法少女まどか☆マギカ』 公式ノベライズ版読了につき感想。

 アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の、脚本虚淵玄が所属しているニトロプラスによる公式ノベライズ版がリリースされたので、早速読みました。
 著:一肇, 監修:虚淵玄, イラスト:ゆーぽん、というニトロプラススタッフによるノベライズです。

 これは、アニメ本編相当部分を主にまどか一人称で描いたもので、基本的にはアニメと殆んど同じ内容です。ストーリー展開や台詞など、かなり一致しています。
 いくつかある例外は、まどか視点では表現できなかったことについてです。それらについては、キュゥべえが意図的にテレパシーで会話を送ってきたり、夢の中のような状態で聴いていたりすることが多いのですが、何カ所か、アニメではまどかがいなかったのに本作ではまどかがいたりするシーンがありました。
 まあ、私としてはあまり気になる改変ではありませんでしたね。というわけで、ほぼアニメと同一のストーリーと言っていいと思います。
 そういう作品で、イラストがそう多くないので、ところどころ、アニメを録画したのを再生しながら読んだりしました(笑)。

 アニメ版では、各話毎に色んなキャラの台詞がサブタイトルになっていましたが、本作ではまどか一人称ということで、多くはまどかの台詞からです。なので、アニメと同じのと違うのがあります。こんな感じです。
第一章 「夢の中で逢った、ような……」
第二章 「それはとっても嬉しいなって」
第三章 「わたしなんかで、良かったら」
第四章 「そんなの、聞いてない」
...

 このお話、虚淵によるオリジナルの脚本は、多分人によって様々な受け取り方ができると思いますが、本作では、テーマが非常にはっきりしています。
 一版(「にのまえ」と読むんですけど、これだと初版と言ってるみたいですね)では、「友達」がメインテーマと言っていいでしょう。

 まず出だしです。ちょっと引用します。

 わたしに、本当の友達っているのかな……?
(略)
 でもきっと、そんなことを口にしちゃったら、さやかちゃんは「は? それって冷たくない? あたしは何な訳?」って怒るだろうし、仁美ちゃんは(略)ただ、わたしがふたりの友達になれてるのかなって、ひとりで不安になるのです。本当の意味でわたしが誰かの友達になれたことなんてないんじゃないかって、そう寂しくなるのです。


 後の方で何カ所か、アニメにはないまどかの過去、例えばさやかとの出逢いのエピソードとか、そういうのが挿入されていたりします。そういったことも含めて、本作では一貫して「友達」がキーワードなのです。
 そして、まどかはずっと不安を抱えてきたのです。頼っているばかりで何もできない自分は、果たして、例えばさやかと「友達」というような対等の関係と言えるのだろうか?と。

 最初の何章かは、まどか主観であっても、「事実」、つまりストーリーに沿ったこと以外はそれほど多くありません。
 そうですね、大体第四章辺りからでしょうか、起きていることに対するまどかの主観が追加されるのは。
 例えば、第四章(TVの第四話相当)で、まどかが魔女の結界に取り込まれてしまったとき。アニメでは、いきなり「罰なのかな……これって」というモノローグが入ることになるんですが、その前段にこういうのが入っています。
 結界の中、テレビのようなモニタがマミの姿を映しているのを見て。

「わたし……」
 ──本当に、私と一緒に、戦ってくれるの? 側にいてくれるの?
「わたし……本当に、そう思って……思ったんです……」
 ──でも、いてくれなかったのね。
「……わたし、わたし、ごめんなさい……」
 ──側にいてくれるって言ったのに。
 ──私はひとりじゃないって思ったのに。
「……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 ──とても、嬉しかったのに。


 これが、あのとき魔女が仕掛けてきていた誘惑だったのですね。絶望、そして死への。
 思えば、アニメの第十話(本作第十章)で、ほむらの最初の時間軸でほむらが結界に取り込まれるときにも、「だったらいっそ──死んだ方がいいよね」という声がどこからか(まるで自分が思っているかのように)心に忍び込んできました。本作では誰の声とも言っていませんが、アニメを見たときにはまどかの声かな、と私は思いました。
 今回も、魔女は、卑怯にも(臆病にも?)他人の声を使って絶望に誘い込むのです。

 ちなみに、この直後、魔法少女になったさやかがまどかを助けるわけですが、本作ではその後が描かれていて、さやかが魔法少女になる決意をするに至った理由、恭介との対話の内容などをさやかがまどかに説明しています。
 その過程で、まどかが「友達」とは、と考えてしまうわけです。

 ──わたしは、聞いてない。
 ──魔法少女になるなんて、聞いてない。
 さやかちゃんは、今日のお昼、あの屋上で、もう決意していたの?


 しかし、それでまどかがさやかを恨んだわけではありません。まどかはマミのことで頭が一杯だったので、相談を受け止められる状態ではなかったことに自分で気付いてしまったからです。このちょっと後に、まどかのさやかに対する思いが、こう表現されています。

 ──わたしは、ちゃんとさやかちゃんの友達になれてるの?


 この思いはどんどんまどかの心を侵していて、ほむらに相談するために和子先生にほむらの住所を聞きに行ったとき、クラスから浮いているほむらを心配する先生からこう言われてしまいます。

「そこに住所と電話番号が書いてあるから。友達になってあげてね?」
 そう何気なく言われた和子先生の言葉に、またわたしの心はすこし重くなっていました。
 それは、ほむらちゃんと友達になるのが嫌だとかそんなつもりは無くて──
 わたしが誰かの友達になれるのかな、という思いです。


 この後も、さやかとの関係はどんどんすれ違っていって、まどかのこの思いもどんどん強くなっていきます。
 アニメにない、さやかとの過去のエピソードがいくつか挿入されるのも、ここの辺りです。いつもいつも、まどかはさやかに助けてもらっていた。しかし、自分は……?

 ほどなくしてさやかは魔女化するわけですが、実は本作では、中々に興味深く、恐ろしい演出が入っています。
 さやかの最期、そのときの杏子とのやりとりを、キュゥべえがまどかの心に伝えていたのです。
 あと、アニメとの違いがもう一つ。さやかの遺体を抱えた杏子とほむらがまどかと会って、ほむらが色々説明したとき。アニメでは杏子が「こいつはさやかの……さやかの親友なんだぞ」と言ってくれたのに、本作では「親友なんだぞ」というところを言ってくれませんでした。

 杏子とさやかに関しては、更に追加があります。
 杏子は、さやかを助けに行こうとまどかを誘うときに、さやかにしたのと同じ説明をまどかにもします。その中で杏子は、さやかが、自分のことだけ考えている筈の杏子が何故さやかのことを心配するのかと言ったことを伝えました。こんな言葉と共に。

「負けたって──思ったよ。こいつはあたしより数倍強えって。なれなかったあたしが、なるべきだったあたしがここにいるって──(略)


 ここでまどかは、ママに言われた言葉を思い出しています。そして、こう思いました。杏子は、さやかのために間違えてあげたのだ、と。

 しかし、杏子との関係でも、またまどかは「友達」について考えてしまうことになります。
 魔女になったさやかに語りかけるまどかの台詞に、アニメ版ではなかった言葉があります。

「さやかちゃん、さやかちゃん、ごめんね。(略)これまでもここからも、何がどうなったって、さやかちゃんをひとりにはしないから……(略)


 勿論、これでさやかが目覚めることはありません。そして、あとはアニメと同じ展開です。

「独りぼっちは、寂しいもんな……いいよ。一緒にいてやるよ。さやか……」


 意識を失っていたまどかですが、夢の中のような心地で、この言葉を聞いていました。つまり、まどかは「ひとりにはしない」と言ったのに結局それは果たせず、杏子は「一緒にいてやる」と言ってそれを実行に移しました。そのことにまた、まどかはどう思ったでしょう? 第十一章でそのことに気付いていますが……。

 第十章は、アニメ第十話と同じくほむら視点です。
 そして、これもアニメ版と同じく、ほむらとまどかが入れ替わったかのようです。まどかが「友達」について悩んでいたのと全く同じことを、これから勝ち目のない戦いを挑もうとするまどかを見ながら考えていました。

 私はいったい、鹿目さんの何なのだろう?
 友達? ううん、出逢ってから今まで、一方的に勇気を与えられて、守られてきただけの存在だ。私の方から、鹿目さんの役に立ったことなんてない。そんな対等でもない私は、鹿目さんの何なの?


 そうして、第一章のあのときにまで至るのですが。
 ここで私は思いました。ああ、ほむらはまどかのために「間違えて」あげていたのかな、と。

 これまで幾つも幾つも、まどかの「友達」という関係についての悩みのタネが登場しましたが。
 『ワルプルギスの夜』が来る前、訪ねてきたまどかにほむらが「あなたを、私に守らせて」と言って、そのことでまどかが初めて、何かに気付きます。
 そして、ほむらが戦い続けなければいけない理由をキュゥべえから聞いたとき、まどかは、ほむらが「間違えて」くれていたのだということにも気付きます。
 ここが、ターニングポイント、でしょうか。

 数多の魔法少女達に「自分を、信じて」と告げたとき、ついにまどかは悟ります。

 ううん、友達なんて、いつもそこにいるんだって気がついたのでした。
 こちらから友達になろうとさえすれば、誰とだって友達になれたはずなのです。


 そして、ほむらに「あなたはわたしの、最高の友達だったんだね」と伝えたとき、それが本作冒頭と呼応しているわけですね。

 更に。
 魔法少女の、エントロピーを凌駕する何かとは何なのか?
 まどかが『ワルプルギスの夜』を癒した(?)ときのモノローグです。

 たぶん──
 それはきっと、鹿目まどか、という存在が消えた瞬間で。
 すべての哀しみは、ひとりで持つととっても重いけど──
 くじけそうになるほど、重いけど──
 みんなで持てば、重さなんて意味を無くすということを──宇宙が知った瞬間でした。


 また、まどかを支えてきたのは、「理」になったまどかをも支え続けているのも、そしてほむらを支えているのも、同じものでした。改変後の宇宙での、ほむらとまどかの心の裡です。

 だけど、私の心が潰されることはけしてない。
 いつも、どこかで、誰かが、私の為に戦ってくれていることを忘れない限り。

 崩れそうになるのは、わたしだって同じで、弱虫なのはわたしも同じで、友達がどういうものなのかすらわからなかったわたしに、あなたが教えてくれたんだよ。
 世界のすべてから外れ、この無限の空間で戦うわたしが、けしてひとりじゃないってこと……
 いつも、どこかで、ほむらちゃんが戦ってくれているから──わたしのことを憶えていてくれるから、わたしの心はけして潰れないんだよ。


 『魔法少女まどか☆マギカ』の今回のノベライズ版は、最初から最後まで「友達」がテーマであり、その上、魔法少女達の魔法の謎や、まどかが永遠に戦い続ける力の源まで、全てにそれが関わっている、そういう作品だったのでした。

関連項目
[追記:2012.5.8]
 芳文社より、改版されたものが出版されました。表紙・カラー口絵:蒼樹うめ、本文挿絵:谷口淳一郎(協力シャフト)となっており、本文については、あとがきによると「誤字・誤用表現の修正の他はニトロプラスブックス版と変わりありません」だそうです。
小説 魔法少女まどか☆マギカ (まんがタイムKRノベルス)小説 魔法少女まどか☆マギカ (まんがタイムKRノベルス)
(2012/05/08)
原作:Magica Quartet、文:一肇(ニトロプラス) 他

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 上でちょっと触れた各章のタイトルだけ、ここで挙げておきます。太字は改版で変更のあったものです。
 ニトロプラスブックス版芳文社版テレビ放送版(参考)
第一章夢の中で逢った、ような……夢の中で逢った、ような……第1話 夢の中で会った、ような・・・・・
(BD版:夢の中で逢った、ような……)
第二章それはとっても嬉しいなってそれはとっても嬉しいなって第2話 それはとっても嬉しいなって
第三章わたしなんかで、良かったらわたしなんかで、良かったら第3話 もう何も恐くない
第四章そんなの、聞いてないそんなの、聞いてない第4話 奇跡も、魔法も、あるんだよ
第五章わたしが、心を決める時わたしが、心を決める時第5話 後悔なんて、あるわけない
第六章こんなの、絶対おかしいよこんなの、絶対おかしいよ第6話 こんなの絶対おかしいよ
第七章本当の気持ちと向き合えますか?哀しみも、苦しみも第7話 本当の気持ちと向き合えますか?
第八章わたし、サイテーだよわたし、サイテーだよ第8話 あたしって、ほんとバカ
第九章友達なんて、いないんだから友達なんて、いないんだから第9話 そんなの、あたしが許さない
第十章もう誰にも頼らないもう誰にも頼らない第10話 もう誰にも頼らない
第十一章あなたも、わたしあなたも、わたし第11話 最後に残った道しるべ
エピローグ最高の、友達最高の友達最終話 わたしの、最高の友達

tag : 魔法少女まどか☆マギカ

コメント

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そういえば。

先日のことなんですけど、連休中に兄が実家に帰ってきたんです。

で、僕とは違って「萌え」とかを毛嫌いしてる兄が何を思ったのか「『まどか☆マギカ』って面白いの?」と訊いてきまして。

観せましたよ、全12話。Blu-rayで、朝の6時から、全12話、ぶっ続けで。

そしたら最初は退屈そうだった兄が、最後には「このシナリオ考えたヤツすげぇな!」と大層感心していまして。

前知識の無い状態で『まどか☆マギカ』を観た兄が物語にハマっていく様子を見ていると、改めて『まどか☆マギカ』のもつ“力”を感じましたね。

ちなみに、やはりというべきか、兄は第10話が一番面白かったそうです。

Re: そういえば。

> 「このシナリオ考えたヤツすげぇな!」と
まあ、虚淵玄という人は元々、血と硝煙の世界を骨太なタッチで描く作品で知られていましたからね。そもそも萌えとはあまり縁のなさげな人です。
でもだからこそ、うめてんてーのキャラ原案ということで、一体何が起きるんだと皆が関心を持ったとも言えますが。

> 『まどか☆マギカ』のもつ“力”
そういう意味では、絵とか声優さんの演技とか音楽とか、脚本以外の色んな意味で特異な作品だったと私は思います。

それにしても、どこで聞き付けてきたんでしょうね(笑)。
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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