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PCで: いわゆるウイルス罪についてのやっぱりヤバいところ

 先日、法務省の公開文書についてちょっとエントリを書いたりしましたが、まあ私の結論としてはこんな感じでした。

 というわけで、あの法律がこういう考え方のもとで運用されるのであれば、日本のIT一気に壊滅、という事態は避けられるかも知れません。


 しかし、世の中そんなに甘くないようです。産総研のセキュリティ研究者、高木浩光氏が、弁護士の方と話をなさった際の様子を書いています。

日弁連サイバー犯罪条約対応担当(当時)弁護士と語らってきた

JNSA時事ワークショップ「コンピュータに関する刑法等の改正の効果と脅威」にゲスト招待されたので、参加して質問してきた。


 ここでの内容は、まさに私が前のエントリで前提にした「こういう考え方のもとで運用されるのであれば」という点が全く期待できないことを示しています。

 以下、ところどころ引用します。
 引用部、「私」は高木浩光氏、「弁」は北沢義博弁護士をそれぞれ示し、強調は引用者によります。

 まず、これ。

私:この「人の電子計算機における実行の用に供する」ということの意味というのは、「目的で、何を」というところにかかっているので、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿わず、意図に反する云々」というような、そういうプログラムとして実行させる、そういう目的でという解釈だとされているので、(略)

弁:いやでも条文を素直に読むと、これは「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」と書いてあるので、だから、条文からして読むと、電子計算機における実行の用に供する目的でと、単独の構成要件と読まざるを得ません。

 前のエントリで私は何度も、条文読んだだけじゃこうは解釈できないよね、という感想を述べました。この発言より、やはり素直に読むとそうならざるを得ないというのが普通の感覚だということみたいですね。
 この少し後にも、繰り返されています。

弁:(略)でも裁判官はそう読まないと思いますよ。これだけ読んだら。(略)私はむしろ、法務省の方の説明は、どうやったら法律家としてそう読めるんだろうかと、ちょっと若干、疑問ではありますよね。

弁:(略)文言解釈するしかないんで。法律家としては。


 そう言えば、例の東京都の表現規制条例の騒動のときも、都が条文の解釈についてQ&Aとか出してましたが、誰かがそれを持ち出す度に「そんなの無意味。条文が全てなんだから」と返されるというやり取りが散々繰り返されました。
 今回のは法務省の立法担当者の文章なのでもしかしたら、と思ったのですが、これ↓でいきなり引っくり返されましたね。

北沢弁護士:(略)裁判所がさきほどの法文を忠実に解釈して、犯罪に当たるか判断するわけで、(略)実は立法担当者の見解というのはあんまり参考にしていません。いざ裁判になると。

 こうもあります。

弁:もちろんそれが法律のリスクであって、さっきも議論しているように、全ての裁判官は全部の文献を読んで、あるいは法制審の議論を読んで判決するとは限らないわけです。まず条文を読むわけで


 このやり取りの間中、どうも高木氏と北沢弁護士の間に食い違いがあると思えるんですけど、それは恐らく北沢弁護士の(ここでの)立場についての認識がずれているからではないでしょうか。
 推測ですが、高木氏は北沢弁護士に、法の専門家として答えて欲しいと思っている。しかし北沢弁護士は、あくまで「弁護士」として答えている。
 こういうやり取りもあります。

私:どういうときに起き得るんでしょうかね。そういうのが無視される状況というのは。

弁:今の部分ていうのは犯罪の成立とあまり関係ないですよね。社会的法益なのか予備罪なのかというのは、講学上の議論なので、それによってそれが犯罪適用の有無が左右されるかっていうと、ほとんどされないんです。


 そう言えば、以前誰かがどこかで言っていましたが、司法試験で「べき論」を展開したら間違いなく落ちる、とのことですね。法がどうあるべきか。それは司法の考えることではない、立法のやることだ、という意味です。

 しかし、ここのところはちょっとどうかと思いました。司法の在り方として。

弁:むしろ、最初から相手にしてなかったんじゃないですか? 私もね、よくわからないんですよ。この世界。本当に申し訳ないけども。だけども、法律家はさっきも言いましたが、裁判官はそれでも判断せざるを得ないんですよ。ほとんどの裁判官はこの議論についていけないですよ。今の段階では。でも、来たときに勉強してやってるんです。

 他のところで、「社会状況がかわってきたりする」から「立法者がこう言ったからそれでもう決まりでというのは」おかしい、という内容のことを言っています。
 それは確かにそうなんですが、でもそれとは違う意味で、つまり、立法者の考えを判断のための「勉強」のネタとして尊重する、そのくらいはしてくれてもいいんじゃないかな、と私は思いますね。

 それにしても、結局のところ、これが一番の問題です。

私:ですからー、本人がわざとやっているときは、もうそれはバグではないと。

弁:わざとなんてのはわからないんですよ。難しいんです。主観ですからね


 前のエントリ本文でもコメントでも述べたことですが、最終的にはこれが立ちはだかる、ということなんですね、やっぱり。
 日本のITの将来は、相変わらず暗いようです。

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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