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ラノベ: 『スノウピー、恋愛する』 スノウピーへの助言

 以前にレビューした作品がシリーズになっていて、これはその三作目です。

 感想を書いてみたいことは二つ。一つはその観念的な世界観。もう一つはスノウピーが悩んでいる「恋」とは何?ということについて。

 この作品で多用される概念、その辺はなんとなく面白いと思います。
 主人公は、理系だからよくわからない、みたいなことを言っていたりもしますが、こういうのはむしろそういう人に向いた話なのでは、とかも思いますね。本作のそういうところはなんとなく、曖昧さや掴みどころのなさとはちょっと離れた、理屈っぽさを感じさせるからです。
 例えば、コンピュータは仮想化、抽象化、記号化して概念をいじくりまわす世界ですし。純粋数学の人なんか、「具体的過ぎてわからない」とか言い放ったりするようですし(笑)。

 主人公たちを夜道で襲ったやつらも、そんな感じです。p133辺りからいくつかぱらぱらと抜き出してみます。

「言葉っていうのは、何かを指し示す指標のようなものよ。指標記号。示されている先には実存在があるの。TVでそんなふうに記号論の解説をしていた」
「ユリが文章で指し示していたものは、人間にとって普遍的な意味を持つ何かだったのかもしれない」
「僕がそれを紙の中から引っ張り出したっていうのか?」
「紙じゃないの。指し示された先の世界からよ」
「指し示された先?」
「元型の世界」
 僕は眉間にしわを寄せる。理解が難しい。元型っていったい何だ?
「……あるいはインスタンスみたいなものかもしれないけど」

 こんな感じで。
 この妙な世界観には、実はなんか妙に親しみを覚えるのですよね、私は。

 二つ目の話題に入ります。
 この作品、タイトルの通り、スノウピーが「恋」をします……と言っていいのだろうか?
 なんか、あまりそういう気がしないんですよね。というよりも、そうであって欲しくない、とも言えます。異世界からきた存在が、そうそう当然のように知らないはずの感情を抱いてしまっては、なんかおかしいとか思うんです。
 実際は、「恋」という、「理屈を超えた、変てこな行動をさせる」ものに興味を持ち、追及しています。
 そんな中で起きた事件で、主人公の、そしてスノウピー自身の「理屈にあわない」行動を見て、「恋は魔法使いが駆使するマジックみたい」「恋はひとに理屈を超えたふるまいをさせる」などと感じ、「理屈よりも強く働く力が、この世にはあるかもしれない」という考えに至らしめるのです。

 でも。
 理屈好きで、最初からずっとそういう存在として描かれてきたスノウピーには、ちょっと待って欲しい。もうちょっと「理屈」で粘って欲しい。このくらいで理屈を放棄したりしないで欲しい。
 「恋」を、理屈が破綻する特異点のように結論付けるのは、まだ早い。

 というわけで、理屈でその「変てこな行動」について解釈してみましょう。スノウピーの助けになるように。

 「死ぬのはやっぱりいやなことよ。それは生物の持ついちばん強い理屈なの」
 それに反した行動を自身が取ったことにより、理屈の及ばないものがあると想定したのですが、ここには、もう一つの解釈があるはずです。
 つまり、理屈、法則が効力を失ったとするのではなく、パラメータ、ここでは「それ」が「いちばん強い理屈」であるという前提が絶対ではない、という選択肢です。
 それを想定すると、実は今回問題になった行動は、理屈で説明できると言えます。

 行動が「変てこ」に見える理由は、二つ。
○ 的確な判断がなされていない
○ 判断の基準である価値観の変革が起きている
 前者は、理屈の破綻ではない。要するに、それを当てはめる能力が働いていないだけで、「超えて」いるというよりもむしろ「そこに至っていない」という状態でしょう。
 後者が、上述の件です。つまり、理屈による判断の基準となる価値観、自身の存続が最も重要である、という前提が成立しなくなった場合です。
 こう考えると、まだまだ理屈の破綻は起きていないと言えます。

 ここで、自身が最重要でないという判断が自身により下されている以上、その判断も最重要視すべきものでないという、一種の矛盾に陥ってしまっているようにも見えます。
 そこで、自身を二つに分割してみます。価値を計る対象、客体である自身と、判断の主体です。判断の主体にとって重要なのは判断の正しさであり、存続ではない。価値観が変革を起こしたとき、その分割が可能になるのです。存在しなくなってしまったら意味がない、という当たり前のように思える前提が、覆ってしまっているからです。

 この理屈、これを更に覆したとき、そして覆したものを説明する理屈が見つからなかったときまで、それが「理屈を超えた」ものであると結論付けるのを待ってくれないかな。
 理屈好き、それこそがキャラクターであるスノウピーだから、理屈をもっともっと追求して粘って欲しいものです。
 「恋に落ちる」までの間は。

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(2011/06/18)
山田 有

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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