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ラノベ: 『ありすさんと正義くんは無関係ですか?』 ざ・ちぇんじ!

 エントリのタイトルに、某傑作時代小説みたいなサブタイトルをつけてみました。
 どっかの大統領に絡めることもできたんですが、やはり題材を考えるとこの方が合ってますよね。

 さて、なんかまたいきなり「嫌い」とか言ってくれちゃうヒロインが出てくる本作(笑)。
 出だしはというと、そのヒロインありすが、電車の中で痴漢の被害にあってたのを正義(まさよし)くんが助けたのがきっかけでなんか関係が始まる、みたいな。
 でも、パニック体質的な彼女は、助けてもらったのについ「嫌い」とか叫んでしまった。あとで反省した末、なんとかお礼を言おうと正義が一人になる機会を待って見張ることに。そしたら、どうにも意外な行動ばかり。
 つまり、電車の中でも、みんなの悪い噂でも、陰気で恐ろしいヤヴァい男、という印象だったのに、目立たないところで色んな雑事をやってくれていた、とか。

 そんなこんなでなんとかごめんなさいと、あとお礼を言ったありすは、そのときにはもう、かなり正義に興味を持っていました。

 で、なんか接近せずにはいられないんですが、どうにもうまく噛み合わない二人。
 いやまあ、悪い雰囲気じゃないんですけどね。つかむしろ、とてもいい感じなんですけど、なんか騒動を引き起したり。助けてもらったお礼ということで料理を用意しても、つい「痴漢のお礼」(笑)とかヘンな言い回しをしてしまって周囲に誤解をふりまくとか。
 でも、なんだかんだ言ってもうまくいってる二人。なのになんか周囲に誤解される二人。
 痴漢の件とかを知っていた生徒会長の篤子サンに、正論で痛いところを突かれて、「変わらなきゃいけない」と思うありす。

 そうです。
 私が思うに、これが本作のメインテーマですね。「変わる」こと。
 ところが。

「どんな風に変わるんだよ?」
「きっぱりはっきりくっきりな校倉ありすになるのっ。篤子サンみたいにね! 積極的になるのっ」
「別にいいよ。校倉は校倉、生徒会長は生徒会長。みんないいところがあって、みんないちばん。生徒会長は生徒会長でいいし、校倉は校倉でいいんだよ」

とか言ってくる正義くん。

 それを聞いて(なんてすてきな言葉だろう)とか思いつつ、それでも結局変わろうとするありす。

 大体において、こういうヒトは、自分がイヤであっても、基本的に変化を起こそうとしないもんです。なんだかんだ言って、その状態で安定してしまっている。変わりたいと思っていても、ある意味諦めてしまっていたり、そもそも「変わる」ために必要な力が「変わる」ことによってしか手に入らないとか。

 そして、なんというか、そもそも「変わる」とは?
 正義がああ言ってくれていたのに、つまりそのままでいいと言ってくれたのに、「変わる」のか?
 「向上する」ために変わるんだ、とかいう言い方もできるでしょう。でも、それじゃあ「向上」とは? 「良い方向」に変化するにしても、それは一体どっちなのか?
 イヤだイヤだと思いつつも、現状は結局悪い意味で「安寧」でもあるわけで、それはそれで「良い」わけです。

 それを引っくり返すのが、違う価値観の導入ですね。即ち、この場合は正義くんです。
 「何のために?」というのを、なんとか切り替えてみる。そうするとき、それまでの停滞から抜け出す「動き」が生まれる、というわけです。
 というか、価値判断の基準が、自分よりも正義のために切り替わって「しまった」わけですね、この場合。

 そして更に、上記の「必要な力」についても、今回ありすはある意味ラッキーでした。
 ちょっとした揉め事があって、「直接ごめん」を言うために正義の家に乗り込んだら、法要の日なのに(正義の家は寺)、お母さんが具合い悪くて大変なことに。そこで手伝うことにするありす。
 大体、ありすの悩んでいる変えたいところは、余計なことを考えすぎてしまうためでもあり、また彼女を甘やかす友人の存在のせいでもあり、慣れない仕事を責任持ってやり遂げなければいけないという状況は、それら両方をふっとばす状況なわけで。

 結局それでうまく行って、大団円なんですけど。
 実際、うまく行ったもんです。正義の言う「校倉は校倉」はキープできて、でもとても大事なものもできて、そのために頑張る、と。
 正義との関係については、微妙な雰囲気がいいですね。

「おまえら、つきあってるのか?」
「えーとその」
 正義は口ごもった。
「友達からはじめることになりました!」
 ありすがはっきりと言った。

 うん、これすごくいい。とても、あの二人「らしい」。
 そうやって少しずつ、というのがありすらしいし、正義にもそれがいいんでしょうね、きっと。

 ところで、生徒会長の篤子サンですが。
 ここまで、正義のことについてはあまり触れませんでしたが、彼がなんか鬱屈していたのは小さい頃にあった出来事のせいで、そのことで篤子サンは色々悔いていたのです。それで頑張ろうと、生徒会長にまでなっちゃった。
 でも、そこまで行っちゃうと逆に……てな具合いで、彼女もなんか複雑な想いを抱えています。
 そう。
 篤子サンは、正義の幼なじみだったんです! いや正義はあまり憶えてませんでしたが。
 ぶっちゃけた話、私は篤子サンに大変興味がありますね(笑)。
 そう言えば、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』で、確かスタッフの誰か(監督か脚本かはたまた?)が言ってました。まどかは主人公でほむらはヒロインだと。
 わたし的には、本作、ありすが主人公で篤子サンがヒロイン、みたいな? いや、二人はそういう関係じゃないんですけど、私の中ではね(笑)。

 あとは細かいことをつらつらと。

 般若心経って、「観自在菩薩……」ですよね。なんか、本文では「んじざいぼさつ……」と書いてあるんですけど。誤植? 他にも記憶と違うところ結構あるし。
 それとも、そう読むこともある?なんせ、作者の先生がそういう学校出てますし。
 実は、私も昔憶えたことがあります。中学生のころ、私は科学部に所属していたのですが、ある時期、なんかを丸暗記するのが流行って、軍歌を憶える奴がいたり(『戦友』とか14番まであるんですね)、私は般若心経を憶えました。懐かしい。
 中に、「(とく)あのくたらさんみゃくさんぼだい」というところがあって、ああ、あの呪文はこっから取ったのか、と、小学生のころに見た特撮ヒーローものを思い出したものです。

 ありすは、『キスからあとをロマンチックに描く乙女小説』(笑)を愛読しているわけですが、その設定が出てきたとき、その内正義と仲良くなったら立場が逆転して、ありすが逆に色々導いてあげるようになるんじゃないかな、とか妄想したりしました(笑)。
 まあ、ラノベだしこういう雰囲気の作品なのでそういうことはないだろうとも思いましたし、実際その通りでした。が。
 この先この二人、そんな展開になることもあり得るかも知れない?とかも思ったり(笑)。
 でもこの設定、ちゃんと役割があって良かった。
 実は、冒頭の電車の中でもそれを読んでたらしく、「嫌い」と叫んでしまったこととも関わりがあるんですけど、ありすが正義に自分をさらけ出すシーンでその趣味を暴露する、という流れがありました。
 ああいう特徴がそれだけで他と何の繋がりもなく設定されていると、属性のための属性という気がしちゃって、なんか今一っぽくなっちゃうんですよね。

 本作は、あれですね。この間レビューした『ダンス・ウィズ・エリシア』と比べて、だいぶ普通に続きができそうですね。ここで終ってもそれはそれでちゃんとまとまってるし、続きを書いたらすんなりと続きになりそう。
 実は、上で属性について書きましたが、こっちの作品でそれ思ったんですよね。というか、今回の作品を読んで、ああ、あれ読んだときに感じたのはこういうことだったのか、と思って。

 最後にイラストについてですが、あとがきにもある通り、本文のありすはなんか幼い感じなのにイラストではちょっと違うな、という感じです。
 でも、これもまたあとがきにある通り、いい感じのキャラデザになってますね。雰囲気が良く出てます。
 とかいいつつも、口絵の篤子サンにどうも目が行ってしまう、とか(笑)。

ありすさんと正義くんは無関係ですか? (HJ文庫 わ 3-4-1)ありすさんと正義くんは無関係ですか? (HJ文庫 わ 3-4-1)
(2011/06/01)
わかつき ひかる

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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