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アニメ: 『魔法少女まどか☆マギカ』 第11&12話 レビュー#2 感想編

魔法少女まどか☆マギカ
  • 第11話「最後に残った道しるべ」
  • 最終話「わたしの、最高の友達」
のレビューその二、その一の続き、です。

 虚淵玄というシナリオライターについて、またその作品については、鬱だのバッドエンドだのという評価がよく聞かれます。
 また、本作まどか☆マギカを、エヴァとの類似という観点から評価する人もちらほら。
 まあ確かに、世界の危機、重苦しい空気、戦い、そう言った共通点は多いですね。似ていると言えば似ています。
 ……しかし。

 さて、本筋の話に入る前に、鹿目絢子ママと早乙女和子先生の対話について。
 杏子が保存していたさやかの遺体は、杏子の死によって滞在先のホテルで発見されることになり、葬儀が営まれました。
 和子先生にとっては直接受け持った教え子であり、また、三年生にも行方不明者(マミ)がいて、先生方は大変です。
 第11話の中盤、和子先生と絢子ママが酒を酌み交わすシーンがあるのです。そう、あの「バリキャリ」で結婚して二人の子供もいるママと、いつも男と長続きしない「冴えないオンナ」の先生です。
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「やっぱね、……教え子とこういう別れ方って言うのは、辛いわよ」
「だよな……」

 確かに先生も大変なんですが、この場ではどちらかというと、ママの方がまいっています。

「……まどかちゃんはどう?」
「わっかんねぇ。あたしの勘じゃ何か知ってる様子ではあるんだ。でも嘘を吐いてるようにも見えねぇ。……初めてなんだよ、あいつの本音を見抜けないなんて。情けねぇな、自分の娘だってのに」
「絢子が弱音を吐くなんてね……」

 この台詞から察するに、ママは昔から(多分、この二人の付き合いはかなり長いのではないかと)何でもできる強いオンナで、弱音なんて滅多に吐かない人物だったんでしょう。

「近頃、妙だなとは思ってたんだ。何か一人で背負い込んでるって察してはいたけど、いつまで経ってもあたしに相談してこねぇ。ちった頼りにされてるって思ってたのにさぁ」
「あの年頃の子供はね、ある日いきなり大人になっちゃったりするものよ。親にとってはショックだろうけど」
「そういうもんか」

 まあ、自分達もその年頃を通過したわけではありますが、やはり、日々そういう子供達を見守っている先生には敵いませんか。さすが、プロ。

「信じてあげるしかないわね。今まどかちゃんに必要なのは、気持ちを整理する時間だろうから。しばらくは待ってあげないと」
「キツいなぁ、何もできねぇのって……」
「そういうところで要領悪いの、相変わらずよね、絢子は」

 ある意味、以前ママがアドバイスした通りのことをして、大人になろうとしているまどか。そしてそれに戸惑うママ。
 自分で何でもできる人が、それを封じられたときに戸惑う。まあよくあるシーンです。
 自分でどんどんやって先に進み、また引っ張る人。そして、人を信じて待っていられる人。
 どちらが優れている、勝っている、というわけでもないでしょう。人それぞれ。
 そういう意味では、いい組合わせの二人ですね。だからこそ、アンバランスに見えたこの二人が親しくできているのかも知れません。
 ところで、鹿目絢子と岩男潤子の会話、というところにちょっと笑ったり。

 さて、注目のまどか。
 例によってキュゥべえが現れ、Incubatorと魔法少女の過去について語ってみせます。
 さやかや杏子が死んだことについて、キュゥべえを責めるまどかに、キュゥべえは、家畜の話を持ち出すのです。牛や、豚や、鳥が、一体どのようなプロセスで人間の食卓に並ぶのか。それを、なんか怪しい力で見せ付けて。

「──やめてよ!」
「その反応は理不尽だ。この光景を残酷と思うなら、君には本質が全く見えていない。彼等は人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している。牛も豚も鳥も、他の野性動物に比べれば種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。君達は皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか」
「同じだって言いたいの?」
「むしろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと君達に対して譲歩しているよ。曲り形にも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」

 そして、Incubatorが、過去の数多の魔法少女達とどのように歩んできたか、それも同様に見せ付けるのです。
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「僕達はね、有史以前から君達の文明に干渉してきた。数えきれないほど大勢の少女が、Incubatorと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねて行った。祈りから始まり、呪いで終る。これまで、数多の魔法少女達が繰り返してきたサイクルだ。中には、歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた子もいた」
「もうやめて! ──みんな、みんな信じてたの? 信じてたのに裏切られたの!?」
「彼女達を裏切ったのは僕達ではなく、自分自身の祈りだよ。どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを産み出すことになる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ。でも、愚かとは言わないよ。彼女達の犠牲によって、人の歴史が紡がれて来たこともまた事実だし。そうやって過去に流された全ての涙を礎にして今の君達の暮らしは成り立っているんだよ」
「……」
「それを正しく認識するなら、どうして今更高々数人の運命だけを特別視できるんだい?」

 それは確かにそうです。ですが、まどかはこう切り返します。

「ずっとあの子達を見守りながら、あなたは何も感じなかったの? みんながどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの?」

 そもそも、自分がさやかや杏子を特別視しているというよりも、キュゥべえが彼女達、他の全ての魔法少女を軽く扱いすぎている、そう感じたのでしょう。
[訂正:2011.5.10]
 ちなみに、これで第11話の予告のまどかの台詞の意味がわかったわけですが、これ、TBSの第10話放送では流されませんでした。
 放送されてました。私の気のせいです。
[訂正終わり]

「それが僕達に理解できたなら、わざわざこんな星まで来なくてすんだんだけどね。僕達の文明では、感情という現象は極めて稀な精神疾患でしかなかった。だから君達人類を発見したときは驚いたよ。全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね!」
「もしも、あなた達がこの星に来てなかったら……?」
「君達は今でも、裸で洞穴に住んでたんじゃないかな」

 この指摘は、後に、まどかの判断に大きく影響します。

 『ワルプルギスの夜』の襲来。
 スーパーセルの発生と判断されたその異変により避難指示が出され、まどか達は避難所にいたのですが、まどかは当然のことながら、ほむらのことが気になってならない。
 そして、キュゥべえはまどかに、ほむらが戦い続けなければいけない、選択肢などない、そういう状況にあることを告げ、まどかがついに行動に移るわけ、ですが。
 ママが、引き留めます。

「どこへ行こうってんだ? おい」
「ママ……。私、友達を助けに行かないと」
「消防署に任せろ。素人が動くな」
「私でなきゃだめなの!」

 確かにあれは、消防署ごときでどうにかなるものではない。それは、この場ではまどかにしかわからない。

「てめぇ一人のための命じゃねんだ! あのなぁ、そういう勝手やらかして、あれがどれだけ」
「わかってる! ……私にもよくわかる。私だってママのことパパのこと、大好きだから、どんなに大切にしてもらってるか知ってるから、自分を粗末にしちゃいけないの、わかる。……だから違うの。みんな大事で、絶対に護らなきゃいけないから、そのためにも、私今すぐ行かなきゃいけないところがあるの!」
「理由は説明できねぇってか」
「……」
「なら、あたしも連れて行け」
「だめ。ママは、パパやたつやの側にいて、二人を安心させてあげて」

 まどかには、わかっている。自分の役割、そしてママの役割が。更に、そうやって理詰めで説けばママには伝わる、と。

「ママはさ、私がいい子に育ったって、言ってくれたよね。嘘も吐かない、悪いこともしないって。今でもそう信じてくれる? 私を正しいって思ってくれる?」

 どの面下げてそれを言う(笑)。
 さやかの葬儀から戻ったとき、まどかはママに聞かれ、こう答えています。
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「さやかちゃんの件、本当に何も知らないんだな」
「うん」

 間髪を容れず。そしてママは、まどかが何かを隠していることに気付いていた。
 「うん」と答えたことは、まどかがさやかの死の事情を知っていることに反しています。正に、明らかに、嘘です。
 ……しかし。
 そもそも、「嘘」とは一体何か? それは、まあ、事実とは違うことを口にすることですね、単純化して言えば。
 でも、ママが言う「嘘」とは、そういう意味でしょうか?
 そうではないでしょう。
 ママは、まどかは嘘を吐かないいい子だと言った。つまり、ママの言う「嘘」とは、悪い子が吐くもの。人を騙すために、自分の利益のために人から何か(モノに限らず)を奪い取るために、口にするもの。そういうもののことなのではないでしょうか。
 だから、言葉に引きずられるべきではなく、ここではまどかは、やはり嘘など吐かないいい子のまま、なんです。きっと。

「絶対に下手うったりしないな。誰かの嘘に踊らされてねぇな」
「うん」

 そしてこの答え/応えは、キュゥべえが言ったことをしっかり受け止めている、その自覚と覚悟を表しています。
 ところで。

「ありがとう、ママ!」

 こういうときに、やや声を抑え気味にするのが、悠木碧流、というやつなのでしょうか。

 ほむらの危機、絶望に飲み込まれようとするその寸前、まどかはほむらを掬い上げます。しかし、そのまどかがほむらに告げたことは、ほむらにとって到底受け入れられるものではなかった。

「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」
「まどか……そんな!」

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 でも、このときのまどかの表情の清々しさ。

「私、やっとわかったの。叶えたい願い事を見付けたの。だからそのために、この命を使うね」
「やめて! それじゃあ、……それじゃあ私は、何のために!」
「ごめん。ほんとにごめん。これまでずっと、ずっとずっと、ほむらちゃんに護られて、望まれてきたから、今の私があるんだと思う。ほんとにごめん」

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 片手だけですがりつくほむら。もう、ほむらには力など残されていない。

「そんな私が、やっと見つけ出した答えなの。……信じて! 絶対に、今日までのほむらちゃんを無駄にしたりしないから」
「まどか……」

 しかし、ほむらにもまどかの気持ちは、少くとも様子を見るくらいには伝わった。でなければ、ここまで言うまどかを拒否したら、それこそほむらは何のためにこれまで頑張ってきたのか、ということになりますし。

「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう!」

 ……おい。
 やっぱ望みを叶えるのは本人の力かい!

「私、……全ての魔女を、生れる前に消し去りたい! 全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を──この手で!」

 この台詞は、一字一句たりとも見逃せないものです。
 全て。過去も現在も未来も。そして全ての宇宙。他の時間軸まで。
 生まれる前。倒すのではなく。そして、これは気を付けなければいけないのですが、そもそも生まれるような仕組み自体を壊してしまうこともできたかも知れないのに、そうは言わなかった。
 更に、「この手で」。自分が、全部背負う。その覚悟、決意の表明です。

「その祈りは、そんな祈りが叶うとすれば、それは、時間干渉なんてレベルじゃない! 因果律そのものに対する反逆だ!! 君は本当に神になるつもりかい?」
「神様でもなんでもいい。今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいて欲しい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる……変えてみせる! これが私の祈り。私の願い。さあ!! 叶えてよ、Incubator!!!」


 どことも知れない、場所、時間。
 まどかと、マミ、杏子のお茶会。

「鹿目さん、それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの?」
「多分」
「未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠に戦い続けることになるのよ」
「そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる。死ぬなんて生易しいものじゃない、未来永劫に終りなく、魔女を滅ぼす“概念”」として、この宇宙に固定されてしまうわ」
「いいんです。そのつもりです。希望を懐くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます!」

 これが、これこそが、後で触れますが、エントロピーを凌駕する力、なのかも知れません。

「あなたは希望を叶えるんじゃない。あなた自身が希望になるのよ。私達、全ての希望に」

 そして、ついに、ついに変身するまどか。
 まどかは、全ての魔法少女に、高らかに宣言します。

(あなた達の祈りを、絶望で終らせたりしない!)

 魔女が生まれないようにするなら、そもそも、戦い続けなければいけない宿命を背負った魔法少女なんていう哀しい存在を生み出さなければいい。そのシステム自体を否定してしまえばいい。
 しかし、まどかはそうはしなかった。
 多分、キュゥべえが見せた、過去の魔法少女達の姿もあったのでしょう。
 まどかは、魔法少女達の祈り、希望、それまでは否定しなかった。
 祈り、願い、希望のために戦う。それまで否定することは良しとしなかった。
 それは、大切な想いだから。
 そして、戦い、戦い、戦い続けて、いつか敗れ、斃れたときには、まどかが手を差し延べる。

(あなた達は、誰も呪わない! 祟らない! 因果は全て、私が受け止める!)
(だからお願い。最後まで自分を信じて!!)

 なんと、なんと強い想い。
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 そう言えばまどかは、第10話で(別の時間軸で)、「護りたいものだって、沢山、この世界にはあった」と言っていましたっけ。

 まどかが最悪の魔女である『ワルプルギスの夜』を癒したとき、ほむらはどことも知れない場所へと飛ばされます。

「ここは……」
「まどかがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだよ。そうか。君もまた、時間を超える魔法の使い手だったね。じゃあ一緒に見届けようか。鹿目まどかという、存在の結末を。……あれが、彼女の想いがもたらしたソウルジェムだ」
「──そんな!」
「その壮大すぎる祈りを叶えた対価に、まどかが背負うことになる呪いの量がわかるかい? 一つの宇宙を造り出すに等しい希望が遂げられた。それは即ち、一つの宇宙を終らせる程の絶望をもたらすことを意味する。当然だよねw」

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 しかし、そんなキュゥべえの得意げな解説も、まどかが吹き飛ばしてくれます。

『ううん、大丈夫』
「!」
『私の願いは、全ての魔女を消し去ること。本当にそれが叶ったんだとしたら、私だって、もう絶望する必要なんて、ない!』

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 まさにちゃぶ台返し。
 キュゥべえ、ざまぁw

 しかし、ほむらとしては納得が行かない。当然ですね。

「まどか、これで君の人生は、始まりも、終りもなくなった。この世界に生きた証しも、その記憶も、もうどこにも残されていない。君という存在は一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。君はこの宇宙の一員では、なくなった」
「何よそれ! これがまどかの望んだ結末だっていうの? こんな終り方であの子は報われるの!? 冗談じゃないわ!!」
「これじゃ、死ぬよりももっと酷い……! 酷い!」

 結局、まどかはどうなるのだ。ほむらが護ろうとしたまどかは、救われないではないか。

『ううん、違うよ、ほむらちゃん』
「!」
『今の私にはね、過去と未来の全てが見えるの。かつてあったかも知れない宇宙も、いつかあり得るかも知れない宇宙も、みんな』
「まどか……」
『だからね、全部わかったよ。いくつもの時間で、ほむらちゃんが私のために頑張ってくれたこと、何もかも。何度も泣いて、傷だらけになりながら、それでも私のために……。ずっと気付けなくて、ごめん……ごめんね』
「──」
『今の私になったから、本当のあなたを知ることができた。私には、こんなにも大切な友達がいてくれたんだって。だから嬉しいよ。ほむらちゃん、ありがとう。あなたはわたしの、最高の友達だったんだね!』

 私は常々、今の日本人は形のないもの、心とか情報とか、そういうものを軽視する、と主張してきました。なんでも頑張ればいい、気力はいくらでも出てくるんだ、という根性論に、私は否定的です。心の力というのは、叩けばいくらでも出てくる、そんなお気軽でお気楽なものではない、と。
 でも、そういう私だからこそ、「希望」を持ち続けられるまどかという人間に、本当の強さを感じるのです。

 叩けば出てくるなんていうものではない。
 その辺りを見抜き、でも所詮微視的でしかなかったキュゥべえは、希望と絶望のゼロサム論を展開したわけです。
 しかし、「何か」があれば、それは無限に湧き出てくるもの、でもある。
 その「何か」は、人により、状況により、異なるものでしょう。
 この場面では、ほむら、だったのかも知れません。
 ほむらが、これまでずっとまどかのために、自分自身よりもまどかのために、力を尽してくれたこと、それが、まどかの「希望」の源の、もっとも大きな力なのかも。
 でもそれは、更に遡れば、魔法少女は人を助けるもの、そう想っていたまどかがほむらを助けたからでもあり、それをまどかに伝授した師匠のマミ、もっと言えば、過去の魔法少女が紡いできた祈り、なのかも?

 熱力学第二法則を蹴っ飛ばし、エントロピーを凌駕するその力は、そうやって無限に出てくる「想い」によるもの、ということですね、きっと。

「だからって、あなたはこのまま、帰る場所もなくなって、大好きな人達とも離ればなれになって、こんな場所に、独りぼっちで永遠に取り残されるっていうの!?」

 結局のところ、まどかが救われなければ意味がないのですが、ほむらにしてみればこんな孤独は救いとは程遠い。

『ふふ、独りじゃないよ。みんな、みんないつまでも私と一緒だよ』

 しかし、まどかは既に遍在する。
 そういう意味では、まどかは救われない存在ではない。だから、ほむらとしては願いが叶ったとも言えます。

 でも、それでは今度は、ほむらは? まどかが救われた。それはいい。まどかはほむらを最高の友達と言ってくれたわけですが、ほむらにとっても、そうである筈。まあ、第10話でほむらは、「たった一人の、私の友達」とか言ってましたから、最高に決まってますが、相対でなく絶対的な意味でも「最高」である筈。
 なので、話はそちらに移ります。

『これからの私はね、いつでもどこにでもいるの。だから見えなくても聞こえなくても、私はほむらちゃんの側にいるよ』

 これは、死んだ人を想うときの慰めの常套句、ですね。まどかを感じ取れないほむらは、一体どうすればいい?
 これは遍在する者の視点からの発言で、人を超越しているという意味でキュゥべえと同類? でも、ほむらの気持ちまでは見えない? 遍在するが、全知全能の神ではない、ということでしょうか。
 それに対するまどかの言葉も、やはりまどからしい。

『ううん、諦めるのはまだ早いよ』

 なるほど、さすが希望そのもの。

『ほむらちゃんはこんな場所まで付いてきてくれたんだもの。だから、元の世界に戻っても、もしかしたら私のこと、忘れずにいてくれるかも』
『大丈夫。きっと大丈夫。信じようよ』
「まどか」
『だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから』

 最後まで、魔法少女とは何か?を論じる作品でしたね。
 というか、最後にまどかが定義してしまった。
 そして、こういう曖昧な言葉こそ、「希望」の象徴であるまどかにふさわしい。

『きっとほんの少しなら、本当の奇跡があるかも知れない。そうでしょ?』


 ほむらが戻ってきた世界は、これまでとは色々変っていました。
 魔法少女は、力尽きたとき、消えてなくなります。
 でもほむらは、それに向き合う度に、まどかの存在を感じ取ることができているのかも知れません。それは、まどかと再会できる瞬間なのです。
 そして、ほむらはなんだかんだ言って、新しい宇宙のキュゥべえともそれなりに関係を結んでいます。

「ふーん、なるほどね。確かに君の話は、一つの仮説としては成り立つね」
「仮説じゃなくて、本当のことよ」
「だとしても証明のしようがないよ。君が言うように、宇宙のルールが書き換えられてしまったのだとすれば、今の僕らにそれを確かめる手段なんてないわけだし。君だけがその記憶を持ち越しているのだとしても、それは、君の頭の中だけにしかない夢物語と区別がつかない」
「ふん」
「まあ確かに、浄化しきれなくなったソウルジェムが何故消滅してしまうのか、その原理は僕達にも解明できてない。その点、君の話にあった魔女の概念は、中々興味深くもある。人間の感情エネルギーを収集する方法としては、確かに魅力的だ。そんなうまい方法があるなら、僕達Incubatorの戦略も、もっと違ったものになっただろうね」
「そうね。あなた達はそういう奴等よね」
「君が言う魔女のいた世界には、今僕らが戦っているような魔獣なんて存在しなかったんだろ?」
「呪いを集める方法としては、余程手っ取り早いじゃないか」
「そう簡単じゃなかったわ。あなた達との関係だって、かなり険悪だったし」
「ふーん。やっぱり理解できないなぁ、人間の価値観は」

 世界(まどか?)は、キュゥべえの存在すらも、否定しなかった。それもまた理の一環であり、欠くべきではないと考えたのでしょう。
 要するに、キュゥべえも呪わなかった、ということですね。

(たとえ、魔女が生れなくなった世界でも、それで、人の世の呪いが消え失せるわけではない。世界の歪みは形を変えて、今も闇の底から人々を狙っている)

 そして、ほむら達魔法少女は、戦い続けるのです。
 まどかの存在を、感じながら。

『がんばって──!』
「うん!」


 虚淵玄という人は、前にも書きましたが、結構、真っ直ぐで誠実で真面目なのではないかと私は思うのです。
 これまで私が触れた作品群、『Phantom』『ヴェドゴニア』『鬼哭街』『沙耶の唄』などと言った物語は、どれも熱く真摯な想いで満ちていましたから。
 重苦しくておどろおどろしい雰囲気も、その底流を見れば、むしろ極めて素直な気持ちが描かれている、人間というものを信じている、そんな夢追いのようなところがある気がします。
 そういうところが、例えばエヴァとかの、悪く言えばひねくれた作品とは大きく違うかな、と。
 別にどっちが正しくて間違いで、なんて話はしませんが、折角のフィクションなんですから、夢と希望に溢れたものの方がいいかな、とか私は思うんですよね。でも、そればっかり描かれても逆に白けてしまう。
 そういうところが、私を惹き付ける虚淵作品の魅力なのかも知れません。

 ところで。

『ごめんね、私、みんなを迎えに行かないと。いつかまた、もう一度ほむらちゃんとも逢えるから。それまでは、ほんのちょっとだけお別れだネ』

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「まどかあああああ!!」

 これは、続編作るという宣言ですか(笑)?

tag : アニメ 魔法少女まどか☆マギカ

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【アニメ】魔法少女まどか☆マギカ 第11話&最終話 レビューその2

JUGEMテーマ:趣味 それじゃ、続きを気合入れて……と言いたいところですが、書いてた途中でブラウザがフリーズして記事飛ばされた。テンション下がるわー。ソウルジェム濁るわー。でも俺頑張るよ。◆円環の理「魔女が生まれる前に消し去られる」という改変が行?...

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非公開コメント

No title

ここのレビューを見せてもらって自分なりにこんな結末かなと漠然と考えていた予想の範疇の結末でした。
ガンダム00の「破壊の中から再生が始まる」という言葉がふと思い浮かびました。
ほむらはまどかが作り出した新しい世界で魔法少女が絶望から魔女にならなくなった代わりに人の恨みや呪いから生じる歪みを駆逐するための刃となった訳ですね、そのうち刹那みたいに「世界の歪みをこの私が駆逐する!」とか言い出しそうですね、そういえばヤフオクに流出したシナリオは本物だったんですねえ(笑)

この作品はレビューだけに留めて最後まで見なかったのですが、3月末までの私の仕事が発売後の携帯端末の試験だったので使ってる端末達にそれぞれまどか達の名前で番号登録して識別に彼女達の壁紙を登録してました(笑)、もちろんメール試験の時は「魔女見つけた」と送信、試験終了した端末はそのままにしてたので過去機種試験で他の人がそれを見つけて「何これ?」と他のヲタ趣味の人に見せて驚いてましたがあえて黙ってました(笑)QBより酷い奴かも?

Re: No title

> こんな結末かなと漠然と考えていた予想の範疇
以前にも書きましたが、虚淵って、基本的に直球勝負の人なんですよね。だから、あまり意外性のあるものは書かない。前にも使った喩えで言うと、古くさい武器にこだわる戦士、みたいな。
その代わり、そこに何が込められているかを楽しむことになるんです。今回のは、その典型とも言えるものでした。
ブラスレイターはあまりそんな感じではなかったですけど、まああれは脚本というわけでもなかったし。

> 「世界の歪みをこの私が駆逐する!」とか言い出しそう
それをやってしまったら、まどかとの関係が切れてしまうという気がしないでもないみたいな気が。

> ヤフオクに流出したシナリオは本物だった
ああ、そんなことがあったようですね。なんかその画像らしきものがどっかに貼られてましたが、スルーしてました。

> 端末達にそれぞれまどか達の名前で番号登録して識別に彼女達の壁紙を
なんか、よほどハマってる人がやったかと思われた、かも(笑)?

> あえて黙ってました(笑)QBより酷い奴かも?
「僕と契約して……」みたいなメールも出しておけば面白かったかも(笑)。携帯だけに。

今日某アニメショップに行ったんですが、店内に置いてあるテレビで『まどか☆マギカ』の11話が流れていて、思わず立ち止まって見入ってしまいました。狭い店内で立ち止まっていた自分はきっとかなり邪魔だったと思いますが、気になってしまうんだからしょうがないと思いませんかッ?(ひとに迷惑かけんな、というツッコミは無しでお願いします……)
いや、ちょうどほむらがまどかを抱きしめて独白するシーンだったもんで……。ほむらを演じる斎藤さんの演技には鳥肌が立ちましたね。ただまぁ「こりゃやっぱ“受け”だな……」と思ったのはここだけの秘密ですが(笑)

さて、『まどか☆マギカ』の結末についてですが、僕はなんとなく学生時代にハマっていたアニメである『コードギアス』の結末に通じるものを感じましたね。
細部や方法は全く異なりますが、『コードギアス』も「主人公が自らの命・存在を以て世界を変える」という結末でしたから。
人によってはその結末をバッドエンドと呼ぶのかもしれません。
また別の人によってはそれをハッピーエンドと呼ぶのかもしれません。
ただ、僕は「ベストエンドではないのかもしれないけれど、ベターエンドではあるのかもしれない」と思いましたね。

……う~ん、我ながら何を言ってるのやら(苦笑) どうも上手い言葉が見つからないんですよねー。
それに僕が気になるのは、この結末が「ほむらにとって」幸せなものか否か、ということなんですよね。
どうも僕はほむらに“肩入れ”していたせいか、この結末が彼女にとって救いになったのか、報われたのかってことが気になってしまうんですよね。まぁ本編をまだ見ていない僕にわかるはずもないのですが……。

Re: タイトルなし

> 演じる斎藤さんの演技には鳥肌が立ちました
第8話でまずそういう感情の発露のシーンがあって、第10話でまどかのソウルジェムを撃ち抜く辺りで最高潮かと思ったのですが、この二話はそれ以上に凄かったです。
以前どっかで、「泣きの斎藤」という表現を見たことがありましたが、今回それがよくわかりました。

> 「こりゃやっぱ“受け”だな……」と思った
ああいう、冷徹っぽいキャラが、まどかみたいな一見ぽわぽわしたキャラに……というのは、結構萌えますよね(笑)。

> 「主人公が自らの命・存在を以て世界を変える」
まあある意味常套手段であるわけですが、今回私は懐かしいものを思い出しました。
それは、中学生の頃に自分が描いた漫画です。結末がそんな感じだったんですよね。もうかれこれ、30年以上前になります。
いや、その話では別に命まで差し出したわけではありませんでしたけど。「上」の世界で生きてました。

> 「ベストエンドではないのかもしれないけれど、ベターエンドではあるのかもしれない」
その辺りは、全くもって共通の解釈は望めないところだと思います。
結局のところ、一体どこに重点を置くか。私流に言えば価値観。
いつでも触れ合える、話ができる、そういう関係をこそ重視する受け手には、そのキャラは失われてしまったも同然ですし、そうでない人にはまた……という感じでしょうね。

> 僕はほむらに“肩入れ”していた
安心してください。私もそうです(笑)。

> まぁ本編をまだ見ていない僕にわかるはずもないのですが……。
多分それは、本人以外の誰にもわからないことだと思います。もしかしたら、虚淵も決めてないかも知れません。

No title

コードギアスも最後は壮絶な幕引きでしたからね

Re: No title

> コードギアスも最後は壮絶な幕引きでした
あれは凄い話だったらしいですね。実は見てないんですけど、あちこちで熱く語られていますから、雰囲気だけはわかります。

ちなみに、今日ちらちらレビューとか見てみたら、どうやら、死んだと解釈しても実は生きてると解釈しても、いずれも矛盾なく状況を説明できるという意味で成り立つそうですね。

No title

先ほど、ニコ動で11話と最終話を見てきました。
……なんというか、言葉が出ない。いえ、悪い意味ではなくて、上手く表現できないという意味っす。ただ率直に一言でまとめるならば、『震えた』というべきでしょうか? しばらく頭の中を整理してから、自分のブログでも感想を書きたいと思います。
それじゃ先に、ここのブログで言っちゃいますか。

ありがとうまどか! アンタは俺たちの希望だよっ!!

Re: No title

> 上手く表現できない
いやー、私も、この文章まとめるのに一旦離れて間をおきましたよ。

> アンタは俺たちの希望だよっ!!
虚淵が言っていた、「夢と希望の物語で終わらせるつもり」の意味がよくわかりました。
でも、「見ている人がそう思ってくれるかどうかは分からない」という発言の意味もよくわかりました(笑)。
プロフィール

水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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