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ラノベ: 『ジュエルガール』 1.眠り姫と心の玉座

 いきなりですが、本エントリでは、最後に大きなネタバレします。
 でも、大体途中でわかるし、まだ第1巻で導入とも言える段階だし、第一帯に書いてあるし(笑)。
 世界観とかキャラ配置とか雰囲気とか、色んな意味で妙にアレと被るこの作品ですが、タイミング的にパクりとかではあり得ない気がするので、偶然なんでしょうね。
 ……シンクロニシティ(笑)?

 まず物語は、プロローグで、主人公の克輝が姉の友人の六花と出会うところから始まります。
 二人は自然に惹かれ合い、付き合い始め、でもある日のデートに六花が姿を現さなかった。六花は、誘拐されてしまったのです。
 そして本編が始まります。

 デートの待ち合わせ場所で、ちょっと遅れるという内容のメールを受け取っていた克輝は、それを持って警察に行きます。が、露骨に手抜きの警察官に追い払われるように、警察を後にします。
 この作者がどういう作風の人なのかよく知らないのでわかりませんが、場合によってはこの露骨さにはなんか意味があるかも? まあ、ないかも知れませんが。
 そして、克輝は、美海に出会うのです。
 彼女は、攫われた六花を探していました。でも、どうにも危険な世界の住人らしく、克輝から情報を引き出そうとはしますが、関わるなと言ってきます。
 この美海というキャラが、一つ年下の中二なのに、妙に気迫がある。目力が違う。クール。冒頭で挙げたアレのほ××みたいな(笑)。

 でも結局足を突込むことになった克輝のところに、六花を誘拐した「組織」から監視がやって来ます。
 それが、「組織」、名前は「AKG」のジュエルガールである灯華です。なんか豪気なお姉さん。
 ところが、なんの弾みか、克輝が灯華の心の中(『心理世界』、ソウルフィールド)に入ってしまいます。
 ジュエルガールというのは、組織「AKG」によって、その心の重要な感情を抜き取られ、宝石(『封印石』、シールストーン)に閉じ込められてしまった人です。そんなわけで心が不自然な状態になっているジュエルガールは、意識を保つことすらできません。エンハンサーという特殊な能力を持った人に憑依してもらわなければ。
 克輝はそのエンハンサーで、そのとき灯華にエンハンスしていた「クロガネ」というエンハンサーを追い出してしまった。

 そこにやってきた美海。
 彼女は実に色んなことを知っていて、結局、灯華と克輝を仲間にすることにします。美海は、奪われた感情を取り戻すために、独り切りで戦っていたのでした。
 克輝は巻き込むまいとしていましたが、克輝がエンハンサーであったことから、事情が変わったので。

 ……ほんと、なーんかこう、似てますよね、アレに(笑)。

 克輝は、怖がったりしながらも、六花の名前が出る度になんとか勇気を奮い起こし、協力するのですが。
 その姿を、なんか眩しげに見ている美海。
 美海がAKGに奪われた感情は、【アドブタ】。興奮に相当するもので、感情の起伏が乏しい状態になっています。どうも、本来は、本人曰く「とても感情豊かでクラスの中でもムードメーカー的人気者だった」そうで。
 逆に灯華は、【シャーンタ】、冷静さを奪われているために激しい性格になっていたわけで、元はかなり控え目で地味な人だったと思われる。
 そんな美海が、克輝が六花の名前を聞く度に立ち上がるのを見て、なんか反応するわけです。

 やがて、また一つ、これは美海も知らなかったことが明らかになります。
 エンハンサーが憑依しただけではジュエルガールの本当の力(その宝石の硬度によって決まる)は発揮できなくて、エンハンサーを「玉座」に座らせなければいけない。

 実は、とある仕掛けがあって、美海はエンハンスされたことがない。

 ここまでで、美海はかなり克輝に心が傾いています。感情の起伏が殆んどない人の筈なのに。
 そして、「玉座」のことを知るため、克輝にエンハンスさせる美海。

 この辺りの描写が、いいですね。
 ソウルフィールド、即ち自らの心に克輝を招き入れ、さらに、ジュエルガールが全てを明け渡すような行為である「玉座」にエンハンサーを座らせる。
 エンハンスされたとき、ソウルフィールドで美海が目を覚ました部屋。
 そこに、「玉座」がある。

「なんだかこの部屋を克輝さんに見られるのが、恥ずかしいような気がするんです」
「へ?」
「なぜだか分かりませんが……そんな気分です」

 そして。

「いいでしょう、覚悟を決めました。でも、この扉は克輝さんが開けてくれませんか?」
 美海ちゃんは扉から離れ、代わりに僕の背中を押した。
「いいけど……。鍵とか掛かってる?」
「克輝さんに対しては掛かってないと思います」

 更に。

「いいですよ。自分でもどうしてなのか分からないのですが、ここに誰かを座らせるのがなんだか怖いような恥かしいような……そんな変な気分ですけれど、ここに座るのが克輝さんなら別にかまわないって感じです」
 美海ちゃんがちょっと僕から目を逸らして、モジモジとしながらも僕を玉座に押しやる。
「? よく分かんないけれど、座るね」
「はい。……優しくしてくださいね?」


 出会った頃の、素っ気なくて冷たいくらいの美海を思うと、いや、そういう意味ではあまり変わってないんですけど、だからこそこういう反応があると、妙に心惹かれるものがあります。
 克輝がそこに座ったとき、何かが伝わってきます。

(寂しい……。嬉しい……。でも寂しいよ。私も……。私も……さんに……想われてみたい。大事にされてみたい)


 そして、こんなことを告げる美海。

『いいんです。でもAKGを壊滅させて私が感情を取り戻したら、今の事を思い出して泣くでしょうけれど』
「泣くんだ!? わざわざ思い出してまで泣くんだ!?」
 なんだか精神的に大きな借金を抱えてしまったような気がする。
『当然です。わざわざアドブタの感情を選んで奪われるほど、元々の私は心の動きが鋭敏だったんです。きっと私にアドブタの感情が戻った時には、もの凄い勢いで泣きますよ?』
「えっと……。僕、どうしたらいいのかな?」
 遠回しのようだけれど、けっこうな勢いで責められているのはわかった。
『まぁ、強制はしませんが私が泣いたときには私を思いっきり慰めて下さい。いいですね?』


 そもそも何のためにエンハンスしてみてかというと、美海がエンハンスされたときにどの程度の能力が発揮できるかを調べるためでした。
 というわけで、色々データを取って、パソコンに打ち込んで分析、検討していて一つの結論に達した美海が、一言。

「はい、大発見です。どうやら私……克輝さんに恋をしているようです」

 で、帯に書いてある台詞に続きます。

「好きです、大好きです克輝さん」


 何にせよ、印象に残るのは、こうして感情を奪われてしまったジュエルガール達の哀しみ、そして宿命。
 こんな風にしか告白できない、元々は感情豊かだった筈の美海。
 灯華も、過去に色々あったらしい。
 そして、六花もジュエルガールにする目的でAKGに誘拐された。
 自分の感情を取り返そうとする美海達。六花がAKGに狙われる理由となった感情とは? 六花はジュエルガールにされてしまうのか?
 克輝が六花と再開するとき、何が起きるのか?
 六花の、そして美海の感情は? 特に、克輝への想いは?

 これは……この話を読み始めて、彼女達を知ってしまったからには、最後まで読まなければいけないですね(笑)。

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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