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独り言: 音楽教育と著作権

 音楽大学を卒業した人と話をする機会がありました。いや、正確に言うと、大学院を修了しています。
 その話で私は愕然としました。
 なんと、著作権の講義を受講していなかったのです。
 というかそもそも、カリキュラムに著作権の講座がない!

 私でさえ、プログラマやってたときには著作権について調べたりしたのに。まあ、場当たりでやったので網羅的な知識は持ってませんけど。
 でも、音楽とか、著作権法知らないで仕事になるんでしょうか? 日本の音楽教育、大丈夫なのか!?

 例えば、こんな話があります。
なぜ無料でノーギャラのコンサートにJASRACが金を取りに来るのか?

神奈川フィルハーモニー管弦楽団がノーギャラで奉仕活動でやっているコンサートで、JASRACが著作権使用料を要求したというニュースがありました

これは、著作権法38条1項の規定によればしょうがないと言えます。

ここで、無料、ノーギャラについては特に問題ないと思いますが、「非営利」という要件については多少誤解があるようです。たとえば、企業が主催する無料コンサートは、仮にノーギャラであっても、企業の広告宣伝という営利活動なので上記38条1項の規定には該当せず、権利者の許諾が必要となります(たとえば、中山『著作権法』p276を参照)。今回の件も神奈川フィルハーモニー管弦楽団が主催であった以上、議論の余地はありますが、まあしょうがないと言えそうです。元記事によれば、神奈川県や市が主催の時には、JASRACは来なかったそうなので辻褄は合っています。

 著作権の話をしてる割には長々と引用してしまいましたが(笑)、知識がないとこういうのが予測できないわけですよね。

 以前、こういう本を読んだという話をしました。
ハルヒ in USAハルヒ in USA
(2010/07/09)
三原 龍太郎

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 アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の北米での展開について研究した論文ですが、ここにこんなことが書いてありました。

BEの社長によれば、彼の会社は、ファンサブやファンサブ制作者と戦う際には東京の製作委員会からのサポートはほとんど得られないという。その理由は「東京は海外市場で訴訟など起こしたくないし、彼らには訴訟を嫌う文化がある」からである

p270

 この本では、ファンサブについてかなり攻撃的に書いてます。まあ、ファンサブが著作権的にクロであることは確かなんですけど、問題は別のところにあるのでは。
 そもそも、日米の著作権法では、著作権の保護に関するスタンスが全然違います。非常に大雑把に言うと、こんな感じ。

○日本
 法律で、やってもいいことは全部決めておくよ。それ以外はやっちゃダメだからね。
○アメリカ
 法律ではとりあえず、やっちゃいけないことだけ決めておくから、適当にやって。で、トラブったら訴訟でなんとかしてね。

 アメリカでは、「フェアユース」という考え方があります。これの本質は、極論してしまえば、権利者が得することなら別にいいんじゃない?という発想です。つまり、"fair use" = 「公正な利用」と認められれば著作権者の許諾がなくても権利の侵害とされずに著作物を利用できる。そのための判断基準もちゃんと用意してあります。
 上記の『ハルヒ』の例で言えば、こんな状況があったわけです。

インターネットは「協調・交流の場」であった。「ハルヒ」アニメのローカライザーは、自分たちのビジネスから利益を得るために、自らの著作権を「犠牲」にしつつインターネットに「依存」していた。「ハルヒ」を通じた権利保持者と消費者との協調的なコミュニケーションは、「ハルヒ」文化を「凍結」するどころかむしろ「繁栄」させた。

p211

 こんな状況で、フェアユースという考え方を基本に持っているアメリカで、訴訟を避けていたら、そりゃみんなガンガン進めますよね。条件を満たしたと言えなくても、権利者に認められたようなものですから。

 日本では、音楽CDが売れなくて業界では困っているようです。で、彼等がなんと言っているか。
「違法コピーのせいだ!」
 うーん、確かにネットには無断でコピーされた楽曲がごろごろ転がってます。でも、ほんとにそのせい?
 よく聞く声はこの二つ。「今の曲、つまんねー」「高すぎ」
 もしこれで、この間Amazon.co.jpが始めたMP3ダウンロード販売で沢山売れたら、業界の人、なんて言いますかね。既に、AppleのiTSで、DRMフリーで販売したりしています。これは上手い商売で、ちゃんとAppleは儲かるようになっているし、レコード会社も必ずしも損ではない。
 結局、日本の音楽業界は、状況や法律とかの一面、というか目先しか見てなくて、商売の機会を逸している恐れがあるわけです。いや、音楽だけじゃない。ダビング10とかみたいなばかばかしいことをやってる場合じゃないんでは?

 冒頭に述べた音楽は勿論のこと、著作物に関わる人は、特に今の時代、著作権について知らないと色々不利益があるかも知れない。なのに、学校でそういう教育をしていない(どうも、私が会った人の学校だけではないらしい)。
 そんなんで大丈夫なのかな? 音楽とか、データが世界を飛び回る時代では、日本のは勿論それだけじゃなく、少なくとも大国アメリカの著作権法もちゃんと知っておかないと、仕事に差し障りがあるんじゃないのかな?

tag : 著作権

コメント

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No title

悪用する奴もいないだろうから著作権なんか詳しく知らなくて良いというおめでたい思考がまだまかり通ってるんですかねえ・・・

Re: No title

学校側の関係者は、著作権法というのは難解な法律として数えられている、という話をしていました。
まあ、音楽大学とかはクラシックやなんかを主に扱うので、著作権切れてるのが多くてあまり問題にならないのかも知れません。だから、わざわざ難しい法律を勉強しなくても、と。
でも、今やそんなこと言ってる場合じゃないと思うんですけどね。
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Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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