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読んだ: 『小説 言の葉の庭』感想

 某所に、ラストがアニメ版と違うとあったので読んでみました。

小説 言の葉の庭 (角川文庫)
新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー (2016-02-25)
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 いやまあ、そもそも本作に関心があったのは劇場アニメ『君の名は。』を見たからなんですけど。
 で、読んでまず思ったのは、この『小説 言の葉の庭』はだいぶアニメ版よりも『君の名は。』に近いな、ということでした。

 勿論、『君の名は。』に雪野先生本人であるところのユキちゃん先生が出ているとか、本作の主人公の一人である孝雄がバイト先で客に絡まれてたりとか、挙げ句勅使河原とサヤちんなる人物が出てくるとか(笑)、そういうところもあるんですけど。
 でもここで言いたいのはそうではなく、ラストがあれに近い感じになっているということです。

 この小説版は第一〜十話及びエピローグからなり、各話ごとに視点が変っています。孝雄や雪野先生は何度も出てきますが、他にも周辺の人物、例えば孝雄の兄の翔太の視点からの話などもあったりします。
 そのようにそれぞれの人物が深く掘り下げられているわけですが、雪野先生の子供時代なんて、色々あったもののこれで言い尽くされている感じだったようです。

 愛媛での子供時代を通じて、雪野は周囲の誰よりも美しい存在であり、そしてその美しさは彼女をおおむね不幸にしていた。

 大人になり、後に孝雄が入学することになるあの学校に来たときに、やがてトラブルの元となる祥子が見抜いたところでは、「美しさを抑える」メイクで身を守る術を会得していたようですが。

 そんな風に二人、特に雪野先生のこれまでと今を掘り下げられたその上であのアニメ版の終り方だったら、これもう誰がどう見てもバッドエンドですよね(笑)。

 雪野先生の(一応)元カレである同僚で体育教師の伊藤は、その二人が互いを認識しているという意味で知り合う前から、何故か夢の中で二人を娶せています。いや勿論この表現はあまりにも飾りすぎていますが、彼は孝雄と雪野先生が持っている共通点に気付いています。脳筋体育教師のくせに! いやだからこその野性のカンかも知れませんけど。
 そんな二人が、まあアニメ版でも手紙のやり取りはしていたようですが、あのまるで訣別を象徴するような終り方をしていたら、もう雪野先生なんて孝雄が言う通り「ずっとひとりで、生きてく」しかなかったかも知れません。しかも彼女は運の悪い(?)ことに、孝雄と出会ってしまっています。「ひとりで生きてく」としても、それは「ずっと」と言えるようなものになったのか?

 つまり、伊藤が見抜いたような存在であるあの二人がダメなのなら、彼等にはもう希望の持てる関係なんてあり得ないとしか思えない。
 もしかすると、そのためにラストをあのようにせずにはいられなくなったのかも知れませんね(笑)。まあ想像ですけど。

 ところでこの伊藤という教師、私の印象では最も重要な人物、別の言い方をすると功労者であったのではないかと思います。
 彼が窮地に陥った雪野先生の手を取らなかったからこそ、彼女は孝雄との接点を持つことができたわけで。そして、その頃にはもう彼は離れています。
 まあそういう意味ではその窮地とやらは祥子のせいで……と遡れもしますが、伊藤の言では、「教師という仕事には、こういうことも最初から含まれている」ということなので、祥子がいなくともいずれはあのようなことになったとも言えます。

 さて、後はもうだいたいおまけ。
 伊藤の回想では雪野先生があの学校にやってきたとき、まだ髪が長かったんですね。「ミディアムロングの黒髪」と表現されています。ただ、その表現の最後にとんでもないものが登場しますけど(笑)。
 あと、祥子が雪野先生をハメたのって、実は百合だったんじゃないかなどと思ったりもしました。先輩ってのは比較的どうでもいい存在で、実は伊藤にいらついてたとか。けど、違いましたね。まあでも新海さんの場合、そういう方向ではあまり普通から踏み出さない気がするので、そうだったら違和感あったかも。

 それから、やはりコメントせざるを得ないのは、ほんと女性側が年上(もしくはそういう感じ)である関係好きですよねこの人(笑)。

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

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