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ラノベ: 『ブルー・ブラック・プラネット〜僕らは地球の夢を見る〜』感想

 こういうSF系の作品は推理小説にも似て、ネタバレなしで感想を書くことが難しいので、もう最初に予めネタバレありと宣言しちゃっておきます。


 さて。

 舞台は「アイランドスリー」。そこは、地球の周りを回るスペースコロニーの一つです。
 そこでは、人は人工子宮から生まれます。18歳になるとアプティチュードテスト(適性検査)があり、職業はそこで「マザー」、つまりアイランドスリーを統括管理するコンピュータが決めます。
 というか、コロニーのことは全てマザーが決めてると言っていい。

 その結果が出る瞬間を、主人公の誠司や主要な人物と言えるアイリーン、シンイチロウ達が待っている。そんなところから物語は始まります。
 アイリーンは優秀だし容姿端麗でクラスの女王的存在。またシンイチロウは頭脳明晰。対する誠司は、能力面ではさしたるところもない少年ですが、子供達の中では珍しく「アルミの溶接工」という変った職業に就けることを期待しています。
 アルミとはコロニーの外壁の通称で、その溶接工というのはつまり、コロニーの外に出ることができる職業だということです。それが、誠司がその職を希望する理由です。

 ところが、結果が出てみれば阿鼻叫喚。
 誠司は「マスター」と呼ばれる管理者階級で、アイリーンに至っては「イレギュラー」。恐ろしいのは、そこで即座にアイリーンの排除処分が決まり、同時に執行、つまり宇宙に遺棄されそうになったことです。
 管理社会ではあってもさほど不穏な空気の見られなかった舞台が、いきなりディストピアに。まさにブラックです。
 このままではヒロインの筈のアイリーンが遺棄、処分されてしまうというところで誠司が宣言。
 自分はマスターだから、イレギュラーである彼女を預かり教育指導する、と。
 結局、排除命令は停止されたものの人権は停止されてしまったままのアイリーンは、コンピュータ「マザー」が管理する社会に於ては衣食住にも困ってしまう状況です。というわけで彼女は、誠司のために用意された住居へ引き取られることに。
 マザーの措置に納得できない二人は行動を始め、後にシンイチロウも合流し、マザーに 迫っていくことになるのですが……。

 うーん、なんだか導入部の説明だけでだいぶ書いてしまいましたが、まあネタバレに行き着くまでの文字が稼げたからいいかな(笑)?

 というわけで感想に入りますが、まず、本作を読んで思い出した作品があります。それは、新井素子の『大きな壁の中と外』です。なお、『大きな…』の設定やストーリーについての詳細は省きます。
 作中にも、それを意識していると推測される個所があります。例えば、p177の「革命やっちゃえ」という言い回し。これは『大きな…』の中で主人公のあゆみが言った「革命やっちゃお」という言葉にそっくりです。
 実際、本作ではこのディストピアは、決して悪意や支配欲などといった負の感情から生まれたものではありません。
 マザーは、誠司達のような、将来が危ぶまれ管理が必要な人々を任せられる人物の登場を待っていたのです。
 こういうタイプの設定の系譜というか、そういうのってどんなのがあるのかなーなどと思い出そうとしてみたのですが、考えてみるとそもそも実は私は、ちゃんとしたSFとか大して読んでませんでした(笑)。若い頃は小説とか全くとはいいませんがあまり読まなかったので……。

 でも、『大きな…』との大きな違いもまた見て取れます。
 あちらでは、壁の配置と人々の巣立ちは、いわば計画されたものでした。ところが本作では、地球が戦争により音信不通になり、続いて他のコロニーが壊滅状態になってから数百年間、「プロジェクトC」、つまり危機管理システムが稼働している状態であったわけです。
 マザーが生み出されまたそのマザーが執行していたのは、計画されたものではなく非常事態に対応するための特例的な措置でした。それにしても500年はちょっと長すぎでは……可哀想にマザーさん(笑)。

 また、アイランドスリーには「壁」はあってもその「外」はありません。いや勿論あるんですけど、そこは舞台ではありません。
 つまり、あちらの作品が定常状態であったのに対し、こちらは壁の中が激変する、まさに革命だったわけです。

 マザーが見出した誠司とアイリーンとシンイチロウは、見事その期待に応え、システムの状態はC(Crisis)からR(Revolution、Resistanceの意も)へ移行。そして、このブラックなディストピアの物語はハッピーエンドを迎えます。
 と共にわかったのですが、ブラックだった筈のその社会も、実はさほどブラックではなかった。冷酷に見えたものは、今が非常事態でありに様々なリソースが不足したために仕方なく取られていた措置だったのです。
 その象徴と言えるのが、アイリーンの存在です。
 ……もしかすると彼女は、同じ人に二度恋をしたのかも知れませんね。

 というわけで当初はここで感想の結論を書く予定だったのですが、書こうと思っていたものが妙にブラックに感じられて(笑)。あと大人の事情とか。何だか折角のハッピーエンドにそぐわない気がしてきたので見送ることにしました。なので可もなく不可もない感想となりますが。
 冒頭のショッキングな描写から中盤まで極めて冷酷に思われるマザーとこの世界ですが、そこから大きく舵を切って希望に満ちた出発へと行き着く本作。そこには、いくつかの謎が残されています。例えば、地球は本当はどうなってしまったのか?とか。
 そのように、先が見えないからこそ希望に満ちたエンディングになるということもあるんだな、という今更な感慨は、年を取ってしまったからなのかなーなどと変なことを思ってしまいました(笑)。

コメント

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No title

この作品とは無関係な話ですが、今エロラノベの世界では、と言うよりは美少女文庫の世界ではの方がいいかもしれないが一般ラノベから美少女文庫でも書いている人というのが何人かいます。
 逆にわかつきさんみたいにエロラノベから一般ラノベでもという人も何人かいる。
 こういう人は昔からいたというけれど、 ペンネームも変えずにどっちでも出すという人は
ここ最近の話なのかもしれない。

 鳴海丈という作家がいますがこの人は今で言うライトノベルでデビューしそこそこ人気がありながら、コバルトの許可なくエロ小説を書いたという理由でコバルトを追放されて、さらにライトノベル界も追放されたのか今ではエロ時代劇小説とエロ時代劇漫画の原作をやってます。

 今だったらこんなことはなかったんだろうな。
 なんてふと思いました。
 昔スニーカーから出していたこの人の小説で次で完結、と言っておいて出ないままに打ち切られた作品があって本当に悔しくて悔しくて今も持ってます。
 まあスニーカーは一巻打ち切りというのもあるから、それよりはいいかもしれない。
 
 一般でも活躍するわかつきさんの行動にふとそんな事を思いました。
 それにしても「Myシリーズ」はいつ出すのだろう、フランス書院は。

Re: No title

> 一般ラノベから美少女文庫でも書いている人というのが何人かいます。
あと、同人から持ってきたりもしていますよね。クリムゾンさんとか。

>  こういう人は昔からいたというけれど、 ペンネームも変えずにどっちでも出すという人は
> ここ最近の話なのかもしれない。
もしかすると虚淵玄のような人が出たからかも知れない、などと思ったりしました。
エロゲ原作アニメなどもそれなりにありましたが、やはりまどマギクラスのが登場したりするとね。

> 鳴海丈という作家がいますが
ああ、知ってます。なるほどそんなことがあったんですね。
ただ、今ちょっとWikipedia見てみたんですが、一体どの作品で名前が記憶に残っていたのかよくわかりませんでした。

>  一般でも活躍するわかつきさんの行動にふとそんな事を思いました。
でも、まあこちらは仕方ないことなのかも知れませんが、しずかちゃんの入浴シーン問題が遂に現実になったという辺り、これも時代の流れですねぇ。
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

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