FC2ブログ

マンガ: 『金木犀の踊る夜』

 毎年この時期になると、ふわりと甘い香りが漂い始めます。
 金木犀ですね。
 今朝雨戸を開けたら、だいぶ強く香ってきました。ここ数日、ああ、咲き始めたな、と思ってたのです。
 まあ実際には、似たような時期に銀木犀も咲いていて、やはり甘い香りを放っているのですが、実は私には区別がつきません。なんか、違う香りがあるな、とは思うのですがどっちがどっちなのか。

 私がこの香りを意識するようになったのは、川原由美子著『金木犀の踊る夜』を読んでからです。
 これは、三作の短編からなるシリーズ『花盗人たちの夜』(コミックス『花盗人たちの夜』収録)の第一作で、夜の街で出会った青年と少女の、ほんの一時の、憂いを帯びつつも綺麗な物語でした。
 青年はちょっと行き詰っていて、ちょっと投げやりになっていた。
 そんな彼が出会った少女Aは、……花を盗んでいました。

 くさっていた青年を、快活なその少女Aが連れまわします。立食パーティーにもぐりこんで一緒に花を盗んだり……したような。実は、ここでのレビューでは初めてですが、本の現物が手元にないので、記憶を頼りに書いてます。
 遊び人のその青年は、少女Aに手を出したりとか考えもしますけど、結局そうはせず、逆に、危ないからどっかいけと振り捨てちゃいます。
 ……でも少女Aは戻ってきて、「おにーさん」にまだ付きまとい、色んな話をして……自身のとても悲しい宿命を打ち明けるんです。
 どうして今は冬なんだろう。

 青年は、最期に、少女Aを救ってあげることを約束して、意識を失います。

 青年が気づくと、そこは病院。少女Aのお陰です。
 そこには、仲違いした筈の恋人がいました。青年の体調が悪かったのは、実は栄養失調。彼女がいない間、大変に手を抜いた食生活をしていたせいでした。
「太らせてやる!」
 と叫ぶ恋人。
 少女Aは、いませんでした。手紙を残して、立ち去っていたのです。
 病院の人は彼女を知っていて、彼女がこれからどうするかも簡単に伝えてくれます。
 青年は、少女Aのために祈るのでした。

 少女Aが抱いていた夢は、金木犀の大木を見ることでした。彼女は、金木犀の香りがとても好きだったのです。
 そんなこんなで、私も金木犀の香りが気になるようになり、それ以来毎年、この時期になって香り始めると、あの話を思い出すのです。


川原由美子傑作集〈2〉花盗人たちの夜  (フラワーコミックス)川原由美子傑作集〈2〉花盗人たちの夜 (フラワーコミックス)
(1984/05)
川原 由美子

商品詳細を見る

tag : フラワーコミックス 川原由美子

コメント

非公開コメント

プロフィール

水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
月別アーカイブ
アクセス解析中