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ラノベ: 『ソードアート・オンライン プログレッシブ004』感想

 墓地墓穴を掘るアスナ(笑)。

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)
川原礫
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2015-12-10)
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 つまり、見栄を張って強がって、結局苦手なアストラル系のモンスターとご対面することになってしまった流れのことですが、今回アスナは、二つの弱点を見せています。一つはその霊の類ですが、もうひとつは以前も指摘したような、メンタル面のことです。
 これは冒頭にもありましたが……いやあの冒頭のキリトのデュエル、なんだか某天使t、違った『天使の3P!』シリーズの出だしのようですな(笑)。いや、話がそれましたが、笑いを取るようなシーンですけどまさに物語の現時点でのテーマの本質を示していると言えると思います。

 結局、今のアスナはまだまだ、そういう意味では強くないわけです。そして重要なのは、今回の「冥き夕闇のスケルツォ」のエピソードで、キリトもそのことに気づいたということですね。

 物語の展開の背景について全く書かずにここまで来てしまいました。この巻、12の章(かもしくは節)から成っていますが、前半の6章はアスナ視点、後半の6章はキリト視点(かつ一人称)となっています。
 今いるのは五層ですが、アスナはここに来る直前にキリトがPKに触れたときのことが気になっていて、キリトに対人戦のレクチャーを頼んだ、それが冒頭のまるで二人が訣別しようとしているかのようなシーンです。
 ここには二つの要素が含まれていて、一つは前述のアスナのメンタル面での弱さ、もう一つはまだ名前は出てきていませんが(というか決まっているのかどうか)、後の≪ラフィン・コフィン≫であるPK集団の動きです。ちょっと笑いを取るだけのシーンのようでいて、テーマがここに凝縮されているみたいです。

 その後は、冒頭に述べたアストラル系のモンスターでアスナが恐がる(笑)クエスト、そして夜に宿屋から出て行ったキリトを追ってアスナが遭遇する危機、そこでラフコフの動きに絡むことになり、後半はそのラフコフの策略に対抗して、キリトが招集した数少ない知り合いと共に五層のボスを倒すことに。そんな流れです。

 この「プログレッシブ」のシリーズについては最初の感想の冒頭で「このアスナがあれだけデレるのかー!」などと書いてしまいましたが、そのためなのかそれとも最初から本質が見えていたということ(笑)なのか、やはりキリトとアスナの人間性、そして二人の関係性といったところに目が向きます。
 だから、ラフコフの方はまあ取り敢えずいいとして(いや重要なテーマではあるんですけど(笑))、気になったのはキリトがアスナの抱える「弱さ」を認識したことです。そしてもう一つ、キリトとアスナが、その「動機」を再確認したこと。

 プログレッシブ003ではまだなんとなくでしたが、今回アスナは本当に危機的な状況に追い込まれ、自分がいかにキリトに依存していたかを実感していますね。
 アストラル系のモンスターに遭遇して醜態……ではないですな、羞態?(笑)を晒したエピソードは、アスナの弱点の表現でもあり、また、キリトを追って地下に赴いたときにミスを犯す理由付けであるとも言えます。

 さて。
 今回キリトは、まずは冒頭の対人戦レクチャーで、続いてアストラル系モンスターとの遭遇で、アスナの剣技という観点での強さと別に、メンタル面での弱さのようなものを感じ始めています。実際、これはラフコフのお陰とも言えることですが、彼等の駆使する様々なトリックからアスナが自分の身を守るためには、対人戦も教えなければいけないと決意しています。
 アスナのそれはある意味、彼女の真っ直ぐさ、人と対したときの接し方や人の見方、そういったものの違いから生じる美点でもあるのですが、やはり降り懸かる火の粉から身を守る術は必要です。

 前回、キリトとアスナの「強さ」の概念のずれ、齟齬がちょっと気になったのですが、まだしばらくは二人の近しい関係は続きそうですね。
 ……個人的には嬉しいことなのですが、一体いつどうやって二人は袂を分かつ、とまでは行かなくとも違う道を歩み始めることになるのか。
 やはり、ヒースクリフのスカウトのためでしょうか。
 6章でキリト視点に切り替わり、最初に語られたのが、地下でのアスナの危機に対しキリトが感じた恐怖のようなものや、怒りのようなものでした。そこでキリトは自分のすべきことを再確認しています。
 アスナを輝かせるために、彼女を守り、成長を助け、伝えられることを伝える。そして、その時が訪れたときに引き留めないこと。

 まあ先のことはともあれ、キリトのそういう考え方は以前から変っておらず、今回変ったとすればその伝授すべきことに対人戦のような、そういうあまり綺麗でないことが加わったということでしょうか。もしかするとキリト的には不本意かも知れませんが、アスナであればそんなのは超越してくれると考えているかも知れません。
 実際、後のアスナは、この頃のように真っ直ぐなままで、人間を相手にしても堂々と立ち回っています。

 ただ、それは、キリトが今ここにいて、彼女を伸ばそうとしているからかも知れません。
 キリトと比較すると、まあキリトだってかなり成長したのですが、アスナの変りようは著しい。SAOに閉じ込められた当初は恐怖も感じないくらい捨て鉢だったのが今は目標を見つけており(p135)、キリトに依存するばかりの自分でなくキリトと同じくらい強くなりたいと思うようになっている。
 そして、アインクラッド編の頃にはキリトと並んで戦えるようになっており、伴侶となって、でもマザーズ・ロザリオ編の頃にはそのために逆に、弱さを見せられないことに悩み、結果辿り着いたのが、母親に語ったような、「誰かの幸せを、自分の幸せだと思えるような」「疲れた人をいつでも支えてあげられるような」生き方でした。
 ……その過渡期がバーサクヒーラー(笑)?

 その萌芽のようなものが、すでにこの頃に表れていますね。この巻でアスナはキリトに、こう言っています。

「誰のために泣くかは、わたしが決めるの!」

(p380)

 キリトが、自分に誉めてもらう資格はないと言ったときに、アスナはこう言い、「なら、わたしがキリト君を誉めてあげる」と言っています。
 ここのシーンには、キリトとアスナの考え方の違いがよく表れています。それは後々になってもずっと続いているように思いますが。
 キリトは、自分のしたことを「エゴイズム」だとしています。

「…………それは、俺が選んだことなんだ。(略)自分と、自分の近くにいる人たちを守れるなら、他のことはどうだっていいんだ」

(p379)

 つまり、自分は自分の価値観、物差しに従い、自分のしたいようにしているだけなのだ、別に人のためを思ってしていることじゃないと。
 対するアスナは多分、まあ「しない善よりする偽善」じゃないですが、そんなことはどうでもよくて、結局人のために戦い人を救っている、ならば評価されるべきではないかとでも考えていそうです。しかも、そのキリトの「物差し」自体が利他的ではないかと。

 キリトのような考え方の人は、まあその価値観自体はどうあれ、現実に結構いるんじゃないですかね。他者に対してそういう評価をする人も含めるともっと。
 後者の人はともかく、そのような人にはアスナのような人が支えになるんでしょうが、こちらは現実には少なそうです。

 まあ閑話休題。
 そんなキリトなので、まだこの頃のアスナでは、多分アスナのために二人の絆を切り捨ててしまいそうなキリトを止めることはできなそうな感じです。
 ただ、それはまだだいぶ先になりそうな気が段々してきました。

P.S.
 今回だいぶ二人の触れ合いが多かったような……。そのためにシステムの設定についての考察が入っている(笑)?

P.S.2
 ブルーブルーベリータルトのために全力ダッシュして落っこちたのはキリトだとしか思えない……(笑)。

tag : 電撃文庫 川原礫

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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