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読んだ: 『ビッグデータ・コネクト』感想

 昨日(2015-05-05)の読売新聞朝刊で紹介されていたのを見て、面白そうなので買ってみました。

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)
藤井 太洋
文藝春秋 (2015-04-10)
売り上げランキング: 985

[追記: 2015-05-08]
 書き忘れました。文脈からわかるかと思いますが、これは小説です。
 予言書ではありません(笑)。多分。
[追記終わり]
 舞台は2019年の日本。近未来ですね。滋賀県の大津市が行政サービスを民間に委託する<コンポジタ>というシステムを作っているんですが、その開発に当たっている下請会社の月岡という人が誘拐されたところから。
 そこで何だか色々あって呼ばれたのが、京都府警サイバー犯罪対策課の万田です。
 彼は二年前、何者かが他人のパソコンを遠隔操作するウイルスを作成して人を陥れた事件に関わっており、容疑者の武岱なる人物を長期間勾留しつつも結局起訴できなかったという過去があります。今回これまた色々あって万田達はその武岱に捜査の協力を依頼することになるのですが、別に必ずしも実力を買ってというわけでもなく、犯人もしくはその関係者である可能性も考慮に入れて、という判断。

 そして、武岱が驚異的な能力を見せ付け事件の真相がどんどん明らかになっていく……。

 のですが、ここで感想を述べると、はっきり言ってその事件は比較的どうでもいい感じです。
 結局のところこの物語、警察対IT関係者、という構図ですね。万田を含むサイバー犯罪対策課は、その中間的な立ち位置という感じ。捜査を妨害するのは警察だし、「誘拐」され後に殺された月岡は、そしてそれに肩入れすることになった武岱も、結局は警察OBで大津市長である半田を相手取って戦ったわけですし。
 更に言えば、相手は警察組織そのものと言ってもいい。その象徴が、万田や武岱の捜査に引っ付いてきて、状況の解説を促す役も担った綿貫であると思います。状況の解説を促すというのはつまり、ITに無知な人物がいないと細かいことを全く説明せずに話が展開してしまうという意味ですが、同時にその蒙昧さで見当違いなことばかり考えています。

 その綿貫も、途中からは、つまり<コンポジタ>の事件の真相に迫ろうという頃には御役御免になりましたが。本物の敵が見えてきましたからね。

 ところで本作、何だか登場人物がわかりづらいですね。特に警察の人物、登場のときに説明が少ない感じで。
 そんな風に振り返ってみてはたと気づいたんですが、女性が武岱の弁護士の赤瀬一人だけじゃないですか。

 さて、この作品、何と言うか色々モデルが具体的に浮かびすぎます(笑)ね。
 企業だったり法律だったり慣行だったり事件だったりシステムだったり。「電話会社グループの<データ・システムズ>」って、<データ>って略したら全然架空に見えないよ(笑)。
 武岱が逮捕され勾留された事件は勿論例の所謂PC遠隔操作事件だろうし。大津市長の半田や<TAC>カードも色々と連想させますし。ちなみに、「二〇一三年にオープンした佐賀県のカフェ付き図書館」というのもちらっと出てきます。
 そういえばちょっと話は逸れますが、これ文春文庫なのに、もしくは文春文庫だからなのか、週刊文春のポカみたいなのも出てきましたっけ。

 法律については、「名称と実体のかけ離れたIT系の法律」という言葉が出てきますが(p197)、ほんとそうですよね。法の目的とか理念とか法益とか、結局どこ行っちゃったの?みたいなのが多すぎて。

 また、業界の慣行や勤務状況、作ったばかりのシステムなのになんか古いじゃん?みたいなところ、文字コードのあれこれなんかの技術的なことも。文字コードに関しては、たまたまつい最近IVSをいじったりしたので印象的でした。

 そして、作品タイトルにもなっているビッグデータ。
 ビッグデータに関しては、以前さらっと述べたことがあり、その後も触れたことがあります。個人的にはビッグデータ解析は、名寄せのようなものだと思っています。ただ、名寄せは求める対象がはっきりしている(「人」)のに対し、ビッグデータ解析は、何が出てくるかを知ること自体が目的でもあると。
 それで今回、まさに「名寄せ」に使われたわけです。

 が、そこではたと思い当たりました。考えてみると、そもそもビッグデータという概念が誕生したのはトラッキングの世界だったんでは?
 となると、この<コンポジタ>は本来的な意味でのビッグデータの利用法ということになりますかね。

 それにしても、武岱が仕掛けた最後の罠。
 あのシステムの穴、あまりにもばからしすぎて逆にとてつもないリアルさですね。物凄く「ありそう」。その絶妙な点を突いたところは見事でした。
 でも、同じリアルでもやはり、ラノベである某シリーズとはだいぶ違いますね。強いて言うと7巻的な?

tag : 文春文庫 藤井太洋

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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