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ラノベ: 『パパのいうことを聞きなさい! 18』感想

 ついに最終巻です。

パパのいうことを聞きなさい! 18 OVA付予約限定版 ([特装版コミック])
松 智洋
集英社 (2015-03-25)
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 長かった……。
 とかいう言い方をするとうんざりしてたみたいですね(笑)。まあわざとですけど。

 この18巻は、プロローグエピローグを除くと六章からなっており、それぞれが主要な登場人物にフィーチャーしたやや独立性のある話になっています。オムニバスというわけではありませんが、それっぽい雰囲気。
 順番は、「第一章 小鳥遊空の覚悟」の空に続き、美羽、ひな、ロ研、祐太、そして再度空。空が注目されている章が二つあるわけですが、二度目では章タイトルに大きな違いがあります。

 話の展開をざっくりと書くと、付き合うことになった祐太と空の相変わらずの様子が描かれ、あまりのことに呆れた美羽が二人に結婚を進言して、空は乗ってくるのですが祐太が条件を出し、その条件のことで一悶着あり、でも結局は丸く収まって、あとはそのまま突き進む、という感じ。
 実際、章が上記のようになっていることからも言えるのですが、もうことここに至っては、人物を追い、描くという構成ですね。

 17巻までもそうでしたが、最後まで本当に真面目で誠実でいい人ばかり登場し、本当の意味で不幸なことは殆んどなく、これも冒頭のようにひねくれた表現をすれば予定調和的な作品です。しかし、この作品はまさにそういうことが描かれるためにあるような気がするし、そういう作品もないと世界はちょっとつまらないでしょう。
 というわけで、小鳥遊空は無事瀬川空になり、第六章のタイトルは「瀬川空の幸せ」となっているのでした。めでたしめでたし。

 予定調和と言えば、結婚の条件を巡って祐太と空が珍しいくらいの本格的な喧嘩をしていますが、駆け付けてきてくれたよし子伯母さんが、心配をかけたと謝る空に曰く。

「ふふっ、逆ですよ。あなたたちが喧嘩をしていると聞いて、私は安心してここに来たんです。夫婦というのはね、素直にぶつかり合えなければうまくいかないものなんですよ」

(p103)

 こうですから。

 更には、最後の巻になってようやく祐太が、下宿するという美羽に策を弄して一矢報いているし、空に申し込まれた結婚を承諾する条件についての約束を巡り、このような一幕がありました。

「約束のことは、気にしなくていいよ。だから、祐太さんの……お兄ちゃんの、一番幸せになれる未来を選んでね。私は、私は……今、本当に幸せだから」
 にっこりと微笑む聖女のような空ちゃん。吸い込まれそうな瞳が俺を優しく見つめる。
「……うん、約束のことは、なかったことにしてほしい」

(p227)

 そう言ってどうするのかと思えば、改めて自分から申し込むという荒業(笑)。彼も成長したものです。

 結末を迎えるにあたってちょっと危惧していた点がありましたが、それも大丈夫でした。何かというと、信吾、祐理の夫婦がひょっこり帰ってきたりするんじゃないかということです。
 ところでこの二人、この巻では結構出番が多かったですね。祐太と二人で信吾さんの墓参りに出かけた信好伯父さんの様子にはちょっとぐっと来るものがありましたし、祐太や空の夢の中に出てきた祐理さんもそう。
 そして、結婚披露宴ではその二人が遺したビデオも出てきましたし。

 ともあれ、開始当初から、描かれるかどうかはともかくこうなることが予想された祐太と空の二人は、晴れて夫婦になって物語は幕を閉じました。
 それにしても、空が披露宴でサーシャに伝えた言葉の中に、一体誰に向けたのか、こんな一節がありました。

「そしてもう一つは……私は、まだ小さな頃、初めて中学生の祐太さんに会った時から一目惚れしていました! だから、祐太さんが光源氏なんじゃなくて、私の初恋が実ったんです! そこは間違えないでくださいね。(略)

(p268)

 ……読者に言ってるんですか?
 あと、自分を紫の上になぞらえるとはまたいい度胸ですな(笑)。

 というわけで、やっとのことで収まるところに収まったという意味では、長かったですねこの話。中々に感慨深い。
 そして、私からは最後に一言添えておきましょう。

 やっと、初恋から卒業できそう──密かにそう思って、美羽は微笑んだのだった。

(p105)

 やったぞ、美羽がフリーになった(笑)!

tag : スーパーダッシュ文庫 松智洋

コメント

非公開コメント

空の言葉について

本当にいい作品だったと思います。
書いてある通り18巻は予定調和で人物を追い描くって感じだったと思います。
ただ伯父さんが言ってたことが、さらっと軽く言われているだけなので、
贅沢を言うと最終巻になる前に親戚が絡む話とか、祐太の両親の話なども聞けていたら
もっと引き込まれたと思って、これで終わってしまって悔しいと言う気持ちもありますが
これからも別視点とかの話が続いていけばいいなーとまだ思っています。

それとブログで書かれている空の「祐太は光源氏なんじゃなくて」の部分は
読者ではなくて、その話の前に友人代表の挨拶で佐古会長が
祐太は現代の光源氏であると発言していたので、空は佐古会長に向けて発言していたと思います。
(佐古会長と同じ思いで見てる読者宛の可能性もあるので否定はできませんがw)

美羽ちゃんの初恋からの卒業発言、本当に気になりますね
美羽ちゃんが実際どれくらい祐太を思っていたのか気になりますし
中々祐太みたいな人は現れないでしょうから、美羽ちゃんのおめがねにかなう男性が
現れるかどうか心配です。
あ、でも美羽ちゃんフリーになって喜んでますけどサーシャさんが居ますからね
美羽ちゃんの心は今からサーシャさんとの生活(ひとり暮らし)で一杯でしょうからw

でも本当にいい作品だったと思います三姉妹や祐太だけじゃなくて本当いい人ばかりで・・・
いい人多すぎて、現実の話とか騙しあいの話とかを見るとさびしくなるくらいですが
後半の駆け足が無ければもっとこの家族の話が読めるのに!って言う不満以外はすばらしい作品だったと思います
(祐太視点で読んでたせいで過保護になってる気がする読者のコメントでした)

Re: 空の言葉について

> 書いてある通り18巻は予定調和で人物を追い描くって感じだったと思います。
実際のところ、みんなあれだけ苦労したのだから最後くらいは大過なくまとめてあげたいですよね。
我々読者についてもある意味同様ですが。

> ただ伯父さんが言ってたことが、さらっと軽く言われているだけなので、
これまでよし子さんはよく登場して色々話をしてくれましたが、信好さんはそうでもなかったですからね。
まあ、ああいう人でもありますし、途中で機会があってもあまり語ってくれなかったかも知れませんが。
でも、色々話を聞いてみたい人ではあります。

> それとブログで書かれている空の「祐太は光源氏なんじゃなくて」の部分は
いや、そりゃ読者に言っているわけないでしょう(笑)。それこそ次元が違いますしね。
でも、(特に男性の)読者の多くは、ちょっと身につまされる感じだったのではないでしょうか。

> 美羽ちゃんの初恋からの卒業発言、本当に気になりますね
実は個人的には一番のお気に入りキャラですので、フリー云々は別にしても、先に進めるようになったのは喜ばしいことだと感じました。

> 中々祐太みたいな人は現れないでしょうから、美羽ちゃんのおめがねにかなう男性が
> 現れるかどうか心配です。
まさか、祐太に対する想いの反動で、逆に佐古先輩みたいな人に……(笑)。

> あ、でも美羽ちゃんフリーになって喜んでますけどサーシャさんが居ますからね
ということは、将を射んと欲すれば……。

> (祐太視点で読んでたせいで過保護になってる気がする読者のコメントでした)
基本的にそうなっている人多いと思うんですよね、この作品は(笑)。
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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