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ラノベ: 『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 9』感想 - 夏川真涼の復活

 何だか久々のような気がするラノベ感想です。
 いやこういう話題があってよかった。トップに真面目なエントリが並んでいるとみっともないですからね(笑)。

俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる9 (GA文庫)
裕時 悠示
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 で、しばらくもにょもにょしていた夏川真涼が、ついに復活! メインヒロインの帰還です。
 ごめん千和、俺、真涼派なんだ。真涼の方が胸がでかいのにな。
 ……あれ?

 さて、今回は自演乙の女子部員四人の物語上での立ち位置が、特にくっきりとしているように思いました。
 あーちゃんこと愛衣は、そもそも今鋭太が目指している状況の提唱者だし。ヒメこと姫香は、何やら妙に興味深い視点からの分析をしてくれるし。真涼は勿論メインヒロインとして。
 そして千和は、皮肉にも、そのメインヒロインの復活を高らかに宣言したと言えそうです。

 ちなみに、カオルが真那を落としたシーンは見事、というか恐ろしかった(笑)し、カオリが「お腹が減った時は僕をお食べよ!(意訳)」などと言い出したのも衝撃的(笑)でしたが。

 鋭太は愛衣にそそのかされてハーレムを作ろうなどと考えているのですが、そこはそれ鋭太は鋭太、妙に真面目と言うか偽悪的というか。しかもカオルにそう問われて、「『偽悪』どころか、『真の悪』なんじゃないか?」などと言っていますし。
 つまりは、らしいというのはそういう、わかった上で妙なことを始めるところです。

 そして、自身の目標のこともあり、生徒会長に立候補などすることに。

 ところで、わざわざ上で指摘した姫香の分析は、例えば、鋭太がハーレム計画について告げたときのこと。
 姫香は、真涼を「今度こそ『本物の彼女』にしてあげて」と言うのです。それは、真涼が不安定だからだし、千和についてはむしろ振るべきだ、と。

「チワワはもう安定している。良い意味で『普通の人』。エイタと結ばれなくて一時は落ち込むかもしれないけど、ちゃんと別の恋に走り出せる」

(p162)

 また、この時もそうでしたが、千和に対して同じような話をした時も、千和の指摘にこう答えています。

「否定。むしろわたしが間違ってた。考えを改めなくてはならない」

(p233)

 つまり、常に状況判断の方向修正を行なえる柔軟性もあるということですね。

 そして、真涼。と鋭太。
 この二人が、奇しくも時をほぼ同じくして極めて近い結論に達している、というそのシンクロニシティはやはり、何か運命的なものが見えてくる演出と言えます。

 ある日鋭太の所に突如、客人が。それは誰かというと、行徳寺ソフィア。つまり、真涼の母です。彼女は、以前鋭太と真涼がこっそりと姿を見に行ったとき、そのことに気づいていたのです。いやさすがにあれを一発で見抜いたわけではないようですが(笑)。
 そのソフィアさんが言ったことが、鋭太に衝撃を与えました。
 彼女と、元夫が、どうして真涼に対しあのように接している、つまり政略結婚などさせようとしているのか。それは、正に真涼の幸せを考えてのことだった。
 別れたことを非難する鋭太に、彼女は言いました。「私たちは燃えるような恋をしたから失敗した」と。続けるソフィアに、鋭太は既視感を覚えます。

「恋愛の熱はいつか冷める。情熱を永遠に燃やし続けることは誰にもできない。ならばそれを織り込んだ上で人生を設計すべきだと、彼は言いました。人生における恋愛要素の排除。私もそれに賛同し、夏川の家に残ることが真涼の幸せだと決意して、あの子の前から去ったのです」

(pp200-201)

 物語の始まりから、主人公である鋭太、そして彼が出会った同類の少女真涼が共有していた「恋愛アンチ」。その考えこそが、鋭太が不幸と考えていた真涼の状況を作る根拠だったわけです。
 これは、物語そのものの大転換の瞬間と言っていいのではないでしょうか。

 一方の真涼は、もうここしばらく、姫香は「不安定」と表現していますがそんな穏当な言葉で表現し切れているのか疑問なくらい奇行に走っていますが、その延長で起きたことが同じく真涼に衝撃を与えます。
 鋭太と二人で街を歩いていたときに出会った学校の先輩、生徒会副会長に、「『恋愛脳』みたい」と言われてしまうのです。
 この時、真涼の中で何が起きたのか。それは一言で言うと、自分の中にあるものを、全て認識したということではないでしょうか。矛盾するものであっても説明はつけず、そのまま。あるものはある。そういうものなのだと。

 現在鋭太の目標である生徒会長への道。その具体的な第一歩である立候補の表明の挨拶の日、真涼は、それこそ全力で「自らを演出する乙女」として出現し、立ちはだかりました。

 いいぜ。それでこそ真涼だ。
 わかったよ。よくわかった。
 偽彼氏は上手くいかなかった。部活仲間でもぎくしゃくした。もちろん本物の彼氏彼女になんか絶対なれっこない。
 俺とお前が一番しっくりくる関係。
 それは──敵だってことか。

 これがあるべき姿なのよ、鋭太。
 彼氏でもなく、偽彼氏でもなく。
 友達以上で恋人以上の関係、汝の名は“強敵”。

 なんかここだけ抜き出すと「以上」が続いて誤字のようですが、ともあれ、ジョナサンとディオのような(笑)、そんな関係こそが真涼の出した答えだし、鋭太も瞬時に理解し、受け入れています。

 物語が始まってからずっと抱いてきた信念が崩れさったその時、彼らが見つけた答えがこれでした。
 そして多分、これが二人の正解なのでしょう。

 なんとなれば、千和がこう感じているからです。

 どうしてえーくん、笑ってたの?

 夏川だってそう。
 あんな晴れやかな笑顔で、えーくんのこと見つめて。
 彼氏彼女だった時よりも、よっぽど仲良さそう。ううん、仲が良いとかそんなんじゃない、二人にしかわからない世界に行っちゃってるように見える。

(p250)

 千和の立ち位置から本当に感じた危機。それこそが真涼の復活を示しており、しかもそれは以前のような消去法的にたどり着いていた空疎な姿でなく、真に生きている真涼であることも意味しています。
 千和が感じたことだからこそ、その宣言になり得る、というわけです。

tag : GA文庫 裕時悠示

コメント

非公開コメント

No title

  鋭太と真涼にかんしてはああいう関係こそが最も正しいのではと思う描写でした。
 あの生徒会長選挙の第一歩は。

  元々鋭太と真涼が主人公で千和がヒロイン。
  あとの二人は話を盛り上げるための存在、だったのではと思う展開でもあった。
 
 この作品もラスト近いのかな。
 

Re: No title

>   鋭太と真涼にかんしてはああいう関係こそが最も正しいのではと思う描写でした。
>  あの生徒会長選挙の第一歩は。
今、真涼は初めて「生きている」という感じですね。
ヒメではないですが、鋭太なしの真涼はもうあり得ないかも知れないと思えるくらい。

>   元々鋭太と真涼が主人公で千和がヒロイン。
>   あとの二人は話を盛り上げるための存在、だったのではと思う展開でもあった。
個人的な好を別にしても、やはり物語の構造や牽引力の主体、そして主人公を突き動かす影響力という意味では、人物の配置はそういう感じなんでしょうね。

>  この作品もラスト近いのかな。
何かそんな雰囲気です。一体、どんな決着を付けるのでしょうか。
決めないという決め方も含めて(笑)。
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

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