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ラノベ: 『天使の3P!×4』感想

 今回作中で響がリヤン・ド・ファミユの歌作りの手伝いをしているんですが、そこで結構音楽理論の初歩、音の理屈みたいな話が出てきます。

天使の3P!×4 (電撃文庫)天使の3P!×4 (電撃文庫)
(2014/10/10)
蒼山サグ

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 なら、というわけで、感想もちょっと分析的に書いてみようかな、とか(笑)。
 ……あんまりいつもと違わないかな?
[追記: 2014-10-11]
 何だか書き出しが気に入らなかったので書き直しました。実はこれが当初のものだったんですが(笑)。
 あとついでにちょこちょこ手を入れました。
[追記終わり]

 ところで、響が色々説明しているときに、「丸暗記より、ある程度『なぜ』の部分がわかっている方が、最初苦労しても忘れづらいかなって思ったんだ」とか言っていたのが印象的でした(p158)。
 物語で主人公がそういうことを言う場合、作者の考え方感じ方が反映されていることが多いのではと思うわけですが、なのでこれは何となくですけど、蒼山サグさん自身やっぱりそういう考え方なんじゃないでしょうかね。

 それにしても、響が小学生相手に和音とか音名と階名の話とか移調の話とかしていましたが、響なのか作者さんなのか、苦労がにじみ出ている感じです。相手が中学生くらいの数学とかわかっているとやりやすいんでしょうけど。特に対数とか座標とか。
 別にその話で対数が必要というわけではないんですが、それがわかるくらい比率というものに馴染んでいると音の周波数の話とかできますし、また、そのレベルだと相対と絶対とかの説明もできると思うんですよ。でも、みんな多分分数を習ってすぐくらいなんじゃないでしょうか。まあ今の小学校のカリキュラムがどうなっているかわかりませんが。

 さて、感想を分析的にと言ったのはそういう話ではなく、物語の構造と人物配置について。だからあんまりいつもと違わないかもってことになるわけですが。

 今回の話は、成り行きで響が柚葉と「懇ろ」になったことが発端となります。……などとつい流行に流された表現をしてしまいましたが(笑)。
 それで色々あって結局、すでに響の配偶者のつもりになっている霧夢が挑戦状を叩き付けるわけです。自分もバンドを作る、リヤン・ド・ファミユと勝負だ、と。

 リヤン・ド・ファミユは、潤の個人的な事情、つまり夏休みの宿題の自由研究のネタ探しというのもあり、潤が作詞作曲した新曲で迎え撃つことになります。
 一方の霧夢は、実は柚葉がかなり素晴らしい歌い手であることもあって、くるみを演奏者としてスカウトに来ます。そして、に島で演じたようなパフォーマンスをここでも披露することに。

 ところで、私は『×2』の感想で「くるみ=霧夢」説を展開して結局『×3』でそうでないことがわかったわけですが。
 まあ別にそれに拘っているわけではないんですけど、一旦そういう発想をすると見方がそれに影響されるもので、実際昔のくるみと霧夢のキャラが被る部分もあり、つい考えてしまうのです。

 つまり、作品中の人物配置を見たとき、シリーズ序盤でくるみが担っていた役割のようなものの一部が霧夢の登場で分離・独立して、今はくるみと霧夢が分担しているように写ってきます。

 視覚的なクリエイティビティの部分と、あとやや攻撃的な部分が霧夢として具現化していて、今回その特性が対立軸を作り出すことになりました。そして焚き付けたらしばらく出てこなくなるし。……対立って何だか険悪っぽいニュアンスがあるように感じますが、もっと穏和な表現ってないかな。
 で、くるみはと言えば、音楽と、あと独立自尊的なしっかりした部分と。
 思えば、くるみはだいぶ落ち着いた、どっしりとした貫禄さえ感じさせるような人物で、つまりは頼りどころというか基盤とか座標軸のような役柄だし役割なのではないかと。

 その点について言えばくるみは、霧夢登場の『×3』では出番少なかったですけど、今回は前のように、リヤン・ド・ファミユと並び立つような立ち位置にいました。リヤン・ド・ファミユの方では今回は潤が中心だったわけですが、その潤とくるみの二人で、重要なテーマを担っているようです。
 それは、次の二カ所に表現されているように感じました。

 まずは潤。
 歌作りの最中、響は色々アドバイスをしていたわけですが、曲全体の構成について検討しているとき、響の提案に対し潤はきちんと自分の考え方を述べました。

「今回は、明るさを大事にしてみたいと思います。私、いつも迷ったり、悩んだりしてばかりで、前に踏み出すのがすごく苦手でした。だからこそ、自分で作ってみようってやっと決めた曲は、迷いのない、まっすぐなものにしてみたいです」

(p.186)

 ここには、二重の意味で自立の姿勢が表現されています。つまり、考えている内容と、それをちゃんと持っていて伝えること。

 続いてくるみ。
 今回くるみはライブに向けて、大胆にもキーボードを購入することにしました。覚悟のほどが感じられます。
 そして、いざライブのために出かけるとき。

 キーボードを肩に担ぎ、扉を開こうとする僕をくるみが呼び止める。
「それ、自分で持つ」
「ピアノほどじゃなくても、重いよ?」
「大丈夫。自分のだし、自分で持つ」

(p.197)

 この言葉では、単にステージで自分が使うからというだけではない、何かの覚悟のようなものが表現されているようです。

 こうして見ると、潤の物語が発生したとき、それを支える側、受け止めて成立させる側にくるみが立っているという感じです。
 そういえば、『×2』の感想の冒頭でも似たようなことを書きましたっけ。

 ところで、上で独立自尊と表現しましたが、そこからは、自尊心/プライドという言葉が想起されると思います。
 思うんですけど、そういう言葉って何故か、虚栄心みたいな独善的なニュアンスを伴って聞こえますよね。ここで言っているのはそういう意味ではないんですけど。

 ともあれ、かくして競うことになったリヤン・ド・ファミユと霧夢・柚葉・くるみの(……バンド名は?)ライブは見事に成功したわけですが、霧夢がその構造を作り出し、潤とくるみがそれぞれの自立を表現した、というところでしょうか。
 霧夢については、そのパフォーマンスが見ていた人々にかなりの感銘を与えたようで、今後大きな展開がありそうな雰囲気です。

 さて。
 そうなるとじゃあ潤がみんなと一緒に作った歌ってどんなのだろう、聴いてみたいな、と思うわけですが、あとがきに気になることが書いてあります。

 また、このシリーズの『文』だけでは絶対に伝えられない要素を、補足的に自分のホームページ(http://sagaoyama.com/)でもフォローしてみようかと構想中です。

とのこと。
 というわけで見てみたら、まず10/10のエントリに

明日11日夜に、第2弾として4巻内に登場するオリジナル曲をアップロードする予定です。

とあります。さすが!
[追記: 2014-10-11]
 というわけで公開されていますね。
天使の3P!×4登場曲『スタートライン!』を公開しました。
 現在23:57。数分前に見たときにはなかったようですが(笑)。
[追記終り]

おまけ1:
 大体この人の作品て、冒頭に何やら怪しげな文章が続くのが通例であるわけですが、今回は比較的状況が直接描写されていましたね。なんせ、響のモノローグですから。
 ただ、やっぱり「白濁液は穴の中へ。これが正しき行いであることを忘れてはならない」などといった表現が出てきますけど(笑)。ちなみにこれの意味するところは、シャンプーで洗うべきは頭髪ではなく毛穴だということですが。

おまけ2:
 柚葉が薄い本に魅入られた(笑)ときにそれを阻んだのはコスパだったわけですけど、なんかそれよりも、年齢制限に引っ掛かったんかな、と思ったんですけどね(笑)。

tag : 電撃文庫 蒼山サグ

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

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