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独り言: 漫画規制と「合理性」

 もういつものことですが、相変わらず「保守」系の人たちは表現規制が大好きなようで。……などとネトウヨを自認する私が言うのもおかしな話ですが(笑)。
 漫画規制についても、手塚治虫等の素晴らしいのだけあればいいんだみたいなことを言うのが出てきています。でもこれもいつものことで、まあ今更どうこういう話でもない。

 しかし、こういう話を聞く度に思うのが「合理性」のこと。

 鍵括弧でくくってあるのは意図してのことで、ここでは私が本来なら使いたい意味でではなく、一般的な意味、つまり短絡的、近視眼的、無思慮というニュアンスで使っています。
 要するに、劣悪な物など最初から作らず、いいものだけ作ればいいんだよ、という考え方を指しています。

 ところで、こんな本があります。
池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇
(2014/04/03)
池上 彰

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 ……なんか、似たような本を立て続けに出していますねこの人(笑)。
 で、冒頭でそもそもなぜ今「教養」「リベラルアーツ」なのか、ということについて説明しています。
 すぐに役に立たない「教養」が見直されたことについては、優れた頭脳を持った理系の信者によるオウム真理教のあの事件などにも触れ、また、徹底的にクリーンに作られた筑波学園都市で自殺が急増したこと、逆にセゾングループを率いた堤清二氏が関西の「つかしんショッピングセンター」を開発したときに、裏路地のようなところがないといけないと言って整然として機能的な街の設計にダメ出しをしたことなども紹介しています。

 このような、本書で言うところの教養がない「目先の合理主義」と似たようなものを感じるのですよ。

 いいものだけ作ればいい、他は規制しろ、みたいな考え方に。

 大体、じゃあ小説とかはどうなんだ、という話でもありますけどね。芸術的な小説以外は存在してはならないのか。
 ……うーん、言いそうですね(笑)。

 また、若干話は違って来ますが、生物学とベンチャーの起業の話を関連づけたりしています。生物の進化の話にこう続けています。

 これ、何に似ているかというと、起業の世界ですね。ベンチャーは誰が生き残るか誰にもわからない。だからアメリカのビジネスの世界では、予測を立てるのではなく、多数のベンチャー企業を一気に走らせて、「結果として」生き残った会社に投資する。まさに進化論的なアプローチです。
 世の中が大きく変化するとき、たとえば進化生物学の知識体系があれば、どう対応すれば生き残る確率を上げられるかを考えるきっかけができる。
 たくさんトライしろ。失敗を恐れるな。生き残ったやつに投資しろ。
 あらゆる変化に対応する知恵を、なんと生物学から得られるのです。

 まあ、自民党には成長戦略とかの考えがあって、最初から生き残るやつがわかるようですが。
 だから、「合理的」にいいものだけ作ればいい、なんてことが言えるのでしょうかね。
 島津製作所の田中耕一氏のようなのは邪道ってことでしょうか。

 ついでに言うと、こんな記事があります。

フランケン:日本でもう一つ改善してはどうかという点はマインドセットですね。これも話に出ましたが「失敗していいですよ」というマインドセット。もちろん大失敗をしてはいけない。でもポジティブな意味で、やってみて失敗して、そこから学んで次は成功した、そういう取り組みへのリスペクトがあった方がいいと思います。

 日本人は失敗が怖過ぎて、失敗をしないように考え過ぎる。あまり自由にやれない。結局、何も進まないパターンも多くあると思います。

 日本では、失敗したものは切り捨てるから、結局、最初から成功したものしか生き残らない。しかも、失敗はなかったことになるからそこから知見を得ることもできず、同じ失敗を繰り返す。歴史ではなく経験からしか学べないが、学んだ人は退場。
 あまりにも非効率的で、つまり合理的じゃないですね。
 上記のように「いいものだけを」という感覚が、こういうところにも影響し、「大きな意味での合理性を欠いた」社会になっているじゃないでしょうか。

 そういうクリーンでお綺麗な国が「美しい日本」なのかどうかは私は知りませんが、昔の筑波で自殺が増えたように、聖人だけの国が「地獄」と呼ばれるように、また、合理性を求めた日本の各種産業が敗け続けているように、誰か優れている(と自分では思っている)人がこれは良い、これは悪いと決める国は、果たしてどうなるのか。
 興味はありますが、できれば他人事であってほしいものです。

おまけ:
 今回紹介した『教養のススメ』は東工大の、つまり「理系」の学生に「教養」を、という取り組みから生まれたもので、理系の人に文系の教養を、という色合いがやや強くなっています。
 しかし、元々、例えば古代ギリシアの哲人などが考えていたことを見ればわかるように、教養が文系的なものだけから構成されるというわけではないでしょう。本書でも出てきますし、同時期に出ている『おとなの教養』では第二章のテーマが宇宙だし、続く二つの章は生物学的な話になっています。
 だから、現代の「教養」には、例えばITのことなんかも含まれるべきだと思うんですよ。
 勿論、小手先の技術にはあまり出番はないでしょうけど、その何かが本質的に一体何なのかくらいはわかってほしい。
 以前も突っ込んだ話ですが。
 所謂「PC遠隔操作事件」が騒がれ始めた頃のこと。パソコンを遠隔操作するウイルスが!などとメディアは騒いでいましたね。でも、その同じメディアがその少し前には、ボットネットの解説とかしていたわけですけど(笑)。

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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