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ラノベ: 『ソードアート・オンライン プログレッシブ002』感想

 作中のゲーム「ソードアート・オンライン」の世界での出来事を、その始まりの頃から描いている本シリーズ。
ソードアート・オンライン プログレッシブ (2) (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ (2) (電撃文庫)
(2013/12/10)
川原礫

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 その第二巻の感想です。

 しかし、何だかどうにも散漫なものになってしまいますね。何故かというと多分、ストーリーがあまりはっきりしないからです。
 はっきりしないというのは、物語性がないとか矛盾しているとかいうことではなく、収束していない感じ、という意味です。何人もの人物が登場し、しかし謎を残したまま終わるので。
 つまりこの巻は、大きな物語の中の、序章が終わってさあ話が拡がろうか、という辺りに位置付けられるのでしょうね。一巻などは、主人公であるキリトがアスナと出会い、コンビを組んで歩み出す、という感じでしたから。

 さて、そうなってくると勢い、人物そのものが印象の主体になってきます。
 様々な人物、例えばキバオウやリンド、ジョー、モルテ。
 そして二巻で最も重要な筈の人物、キズメル。
 特に、いきなりキリトに絡んできてデュエルにまで持ち込んだモルテは例の黒ポンチョなどと共にラフコフを想起させますし、NPCの筈の黒エルフの女騎士キズメルは、もしかすると後のキリトの感性にも大きく影響を与えたかも知れないほど人間らしい人物(?)でした。

 どうでもいいいつもの指摘ですけど、ほんとこの作者の作品て、お姉さんキャラ多いですよね(笑)。

 ただ、結局はそういった人物は謎ばかりを残していき、「これから」に属するキャラと言えましょう。
 ということになると、やはり注目はアスナです。

 この『ソードアート・オンライン』というシリーズは、キリトを主人公に据え、様々な関係性の人物との接触でキリトが物事を感じたり考えたりする、というのが本質ではないかと思っています。それは、伴侶(アスナ)であったり、家族(リーファ)であったり、自分自身の分身(シノン)であったり。
 ……って全部女の子ですね(笑)。まったくキリトってば。
 しかし、この「プログレッシブ」では、その役割はほぼアスナ一人が担っています。
 そうなってくると、本当にキリトとアスナは、互いを伴侶とすることを定められた組合わせに思えてきます。

 実際、この二巻を読んで頭に浮かんだ言葉があるんですよね。それは、「破鍋に綴蓋」そして「情けは人の為ならず」。
 キリトは、まあ主人公なんぞやっていますが、かなりバランスを欠いた人物です。世間一般的には。
 しかし、そのでこぼこ具合いに、アスナという人物が見事にぴったりと収まるんですね。まるで鍵と鍵穴のように。
 こういう比喩を使うと、大概の場合は男の方が鍵になりますが、この場合は逆の方がしっくりくるような気がします(笑)。

 まあ考えてみれば、アスナ自身もあまり普通の家庭に育ったとは言えないし。
 そんなこんなで、二人のものの見方、感じ方は大きく違うので、互いに相手の言葉に様々な気づきを得ます。そして重要なことは、そんなに違う二人なのに、実は、何を大切に思うか、そういう価値観はとても近いんですね。
 そんな対話のシーンを一つ挙げるなら、エルフの鍛冶師にアスナの武器の作成を依頼したときがいいでしょうか。

「……正直、まだ、大きな希望を持てる気はしないの。百層は遠いわ……あまりに遠すぎる。でもね……君に言われて、ウインド・フルーレを手に入れて、強化して、それで戦った時から、少しずつ、変わってきた気がする。ゲームクリアとか、現実世界に帰るとかじゃなくて……一日。きょう一日を、生き抜く希望を持とうって。そのために、剣も、防具も大事にして、いろいろ勉強もして、それと……自分自身にも、必要なメンテはしていこうって、そう思えるようになったの」
「…………自分の、メンテか……」

p132

 その言葉でキリトも、自分自身やこれまでに出会った人のこととの関係を考え直すのです。
 しかし、武器を使い捨てにしていたアスナをそのように変えたのはこの言葉にもあるようにキリト自身でした。
 このように、互いの言葉を互いが考え、螺旋を描くように進んでいく様は、まさに伴侶。

 それが「破鍋に綴蓋」なんですが、では「情けは人の為ならず」は何かというと、まあこれは以前からのことですが、いや「破鍋」もそうですけど、キリトはアスナの輝きを本当に大切にしていて、今回も、アスナが危うく周囲と衝突しそうになったときにも必死にそれを回避しようとします。

 アスナは、俺にはない資質を秘めている。大集団を率いてこそ輝く、リーダーの資質を。第三層に上ってきたばかりの、まだまだ攻略序盤と言わねばならないこの時期に、主流派に楯突いて自分の可能性を打ち捨てるような真似をしてはならないのだ。

p212

 以前からというよりも、最初からですね。
 コミュニケーションとかでハンデを負っている(笑)キリトですが、その切実さがあったからこそ、アスナの暴走を止めることができたと言えます。

「……俺は、君に、死んで欲しくない」
 アスナの瞳が、ほんの一瞬ではあったが大きく見開かれた。
「……だから、いまは我慢してくれ。リンドや彼のギルドが、俺や君の命を救うことだって、きっとあるはずなんだ。彼に助けられるくらいならとか、そんなことは、思わないでくれ」

p218

 まあこれに関しては、アスナの方の事情もありましょう。このちょっと前にも出てきましたが、アスナはその育ってきた環境から、人のためと称して何かを押し付ける人物を嫌っているので、キリトのこういう本音しか語れない部分は好ましく思えるのでしょう。
 まあ、その順番というか因果関係については色々あるかも知れませんが(笑)。そもそもこのとき、アスナが普段とは逆に静かになってしまうほど「空前絶後に激怒」したのは何のためだったかを考えるとね。

 そんなアスナなので随所で「隙」(というか「好き」(笑))を見せてくれますが、あれは一体どういう心の動きを意味していたんでしょうね。
 もうしばらくコンビを組んでいたいとキリトが言ったときのこと。

 行儀悪く寝転がったままぼそぼそと発せられた俺の台詞を聞いたアスナは、しばらく背筋をぴんと伸ばして沈黙していたが、不意に細い体をぶるぶるっと震わせた。ように見えた。
 ──え、いまのどういう反応?
 と思う間もなく、そっけない言葉が投げ返される。
「ふうん。なら、もうしばらくの間よろしく」

p192

 本当に、「いまのどういう反応?」という感じです。

 とまあ、何だかアスナの話ばかりしましたが、もう前述の通り仕方ないのかな、と。
 しかし、 登場の回数の割に妙に印象に残った人物がいます。それはこの「ソードアート・オンライン」にはいない、キリトの妹の直葉のことです。登場というか、名前すら出てこないキリトのモノローグでついでのように、多分二度くらい触れられただけですけど。
 やはり、彼らがあの状況で現実のことを考えるというのは、この物語ではちょっと特別なことですからね。
 まあ、(アニメ版の)映像が記憶にあったせいかも知れませんが。
 それは、入浴を済ませたアスナとの会話の中でした。

「わたしが着替えないと、何か問題があるの?」
 氷点下の切り返しに、慌てて首をぶんぶん左右に振る。
「い、いやいや何も。ただその、風呂に入った後くらい、それっぽい格好をしたくなったりしないのかなーって……ほら、浴衣とか、バスローブとか、Tシャツいっちょとか……」
 しまった最後のは余計だった、現実世界で風呂上がりによくそんな格好をしていた妹のせいだ、などと思いつつ逃亡の準備をしていると、(略)

p240

 なるほどー。キリトの記憶の中の直葉は、
sao18_suguha3.pngsao18_suguha4.png
こんな風に慌てたりしなかったのかなー、とか。
 って、一体何の印象なんだ(笑)。

 という感じの二巻の感想でしたが、最後にあとがきの話。
 この「プログレッシブ」というシリーズの誕生について触れられています。それによると、アニメ化にあたり、そのシリーズ構成では各エピソードを時系列順に並べることになっていたので、一話と二話の間が空きすぎてしまう、ではそこを埋める話を(原作者が)書こうということになったのだとか。
 で、そうしてみるとその後二人がどうなったのか気になって、ということらしいです。
 まあ、「らしい」ですよね(笑)。

tag : 電撃文庫 川原礫

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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