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ラノベ: 『天使の3P!×2』感想

 くるみかっこいい……惚れそう。
 ただし、何だか男同士みたいな感覚で(笑)。
天使の3P!×2 (電撃文庫)天使の3P!×2 (電撃文庫)
(2013/10/10)
蒼山サグ

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 二巻のメインヒロインはと言えば、多分希美ということでいいんでしょうが、主人公は響と、あとくるみのサポートがとてつもなく大きい。
 なんというか、響が自動車で、くるみがドライバーで希美が助手席にいる、みたいな感じでしょうか。

 今回の話では、ライブの宣伝をしよう、という展開になりました。
 招待とかではなく販売できたチケットがたったの二枚。売り上げは千円。
 自分のプロモーション不足に忸怩たる思いの響ですが、正義さんは、最初はこんなもんだ的なノリで受け止めてくれました。しかし現実問題として、イベントスペースとしての維持費には全く足りないという指摘も当然ありました。
 というわけで響は、色々考えることになります。

 このときの正義さん、いいこと言ってますね。「響が友達からせびった金積み上げて『売り上げです』って持ってきたときはお説教タイムだなって思ってたんだけど」と。
 そう言う正義さんも、そうしなかった響も、長期的にそれでやっていけるのかということを意識しているわけで、賢明と言えましょう。

 勿論、響には非常に効果的なプロモーションの手段があることが最初からわかっていました。
 つまり、ネットで動画を公開して展開すればいいのです。
 しかし、その危険を、響みたいな経歴の人物は知り尽くしていると言っていいわけで。何と言っても、宣伝しようというバンドが小学生の女の子ですから。

 そこで背中を押してくれたのが、響のネット上での知り合い、ハンドルネーム「霧夢」(きりゆめ)さん。響の曲のイメージイラストを描いてくれたことがきっかけで親しくなった、所謂ネット絵師で、どうやら女性らしい。
 本人達に相談もせず悩んでいる響に、チャットで霧夢さん曰く。

【霧夢】あのさー。それって、失礼だよ。その子たちに。小五だよ? 赤ん坊じゃないよ? もう自分で考えて行動できる歳だよ。横暴かどうかを決めるのはひびきじゃない。その子たちでしょ。

 彼女は、「ネットだって悪いところばかりじゃないでしょ? この頼もしい霧夢さんにひびきが巡り逢えた場所だよ?」とも言いました。
 この後、正義さんの了解というかあっさりした承諾があって、プロモーションはその方向で進むことになりました。
 で、響はスタジオライブ以外にもPV的なミュージックビデオも作りたいと進言すると、正義さん達が近く行くことになっていたキャンプに響も同行することになりました。

 何だか、響曰く「単純所持しているだけで末期的によろしくないことになってしまう」ような画が撮れてしまったり、そらが危うく「すくーぷしょっと」を撮ってしまいそうになったりしましたけど(笑)、最終的にはちゃんと公開にまで辿り着けました。

 その動画が驚異的なアクセス数を記録し、順風満帆に思えたのですが……。

 さて、主人公たる響がここで、

 全てが、順風満帆。そう思えて仕方がなかった。

 ──この日。リトルウイングに到着する、ほんの一瞬前までは。

などと宣ってくれると、凄く嫌な予感がしてくるわけです。
 しかし、やはりこの作品では、というか多分この作者さんの話ではそんなことはなく、実際に発生したことは、まあ当人達にとっては深刻な事態ですが、それは決して「悪い」ことではありませんでした。

 公開された動画により、希美の祖父だという人が現れたのです。

 彼、ライアン=ブルネル氏は英国で企業を経営している人ですが、希美の母親は彼の娘で、結婚を認められなかったために夫の故郷である日本に来て、結局亡くなっていた、という経緯でした。

 その後の展開は、概ねこういう話ではよくあるパターンなのですが、その印象は大きく違います。
 それは多分、ライアン氏(みんなこっちの方で呼ぶので)が、英国紳士「らしい」人だからです。それも、作品のテーマに従い、「ロック」に対する何か熱い想いみたいなものも持っています。終盤、通訳を通じて氏がこんなことを言っていました。

「忘れましたか? 私と、ここにいる多くのパートナーたちが、いったいどこの国からやって来たのかを。ロックに対する寛容で、我々英国人が、日本人に負けるわけには参りません。今日、唯一ファッ……気に入らない点があったとするならば。それはPeppersがアメリカのバンドであること。ただ、それだけです」
 今、通訳さんが危険な単語を漏らしそうになったような。伝言の途中で混入させそうになったのか、源泉掛け流しなのかはわからないけど。
 でも、そうか。イギリスの人であればこそ。こんなぶっ飛んだ趣向も、日本人より受け入れやすいのかもしれない。


 思うのですが、こういうところで(実際はどうか知りませんが私のイメージの中では)日本人というのは英国紳士と比べてガキですよね。以前も言いましたが、「大人の対応」というのが日本ではどうにも単に逃げることを意味するみたいだし、「紳士的」という言葉も、一般的な意味と私が持っているイメージは実は随分違います。

 ともあれ、誰も彼もが一旦は相手のことを考えて引いたために、希美もイギリスに渡るという決断を下しました。
 しかし、ぎりぎりのところでで響がちゃぶ台返しをします。

「希美だけじゃ、足りないんだ。僕は希美も、潤も、そらも、桜花も、正義さんも。リトルウイングの人たち全員が幸せじゃないと気が済まない。だから、お願いだから聞かせて欲しい。潤の、希美に対する想いじゃなくて。潤自身が、どう思っているのかを。潤が、希美にどうして欲しいのかを!」


 みんなが他の人のことを慮って膠着状態になってしまっているところで、人のことだけじゃなく自分の気持ちも押し通し、それで解決に導いてしまう。そんな別の作品の登場人物を思い出しました。
 それは、今期アニメになっているエロゲ『WHITE ALBUM2』の朋です。

 とまあそれはおいといて、ここで最初の話題に戻ります。つまり、くるみ最高!という話です。

 実際にはライアン氏の登場からずっとうじうじしていた響がこう思い切った行動に出られたのは、つまり、希美のことを思っている気持ちはどうあれそうしている本人はどうなのという視点に気づいたのは、くるみの助言によるものだからです。
 希美も本当は止めて欲しいと思っているのじゃないかとくるみは言います。そして。

 強い口調と切迫した表情で、くるみは僕の至近まで歩み寄って、シャツの袖を両手で掴む。
「……あは。もうバレバレだと思うから言っちゃうけど。……これ、責めてるんじゃないよ。すがってるの。お兄ちゃんくらいにしか、私は思ったままの言葉なんて伝えられないから、甘えて頼りきってるの。そもそも実は超的外れかもしれないし、ね。希美は本当にイギリスに行きたくて、自分勝手なこと一方的に伝えたらやっぱり迷惑かけちゃうかも。でもね、いいじゃない。わがままでも、自分勝手でも。そのわがままが、身勝手さが。……人を幸せにすることだって、きっとあるよ」

 ここでまた、くるみ自身も完璧じゃない、いっぱいいっぱいででも一所懸命なんだ、というところがいいですね。人間らしいし、まあ何よりまだ小五だし(笑)。

 いや小五ですけど、この台詞は一体何!?

「……しかた、ないな。じゃあひとつだけ、お兄ちゃんに勇気をあげる。……私が自信を持ってわかるのはね、私自身のことだけ。お兄ちゃんが何かして、希美がどう思うかは保証はできないけど。私は、どんな結果になっても、私ができなかったことをしてくれたお兄ちゃんのこと……かっこいいって、思うよ。それだけは、約束する」

 前の台詞もそうですが、彼女の台詞に説得力があるのは、ちゃんと事実をありのままに伝えているからではないでしょうか。ごり押しで誤魔化したりしない。こうすれば全てうまく行くなどとは言わない。
 その代わり、確実なことだけはしっかりと伝える。
 言葉の内容は明らかに女の子っぽいんですが、すごく男らしいというか、ヤマトの真田さんみたいなところを感じたりします。そんなところがあるから、冒頭に書いたように、男同士みたいな感覚で、ということになってしまうのでしょう(笑)。

 しかも、ライアン氏が希美発見ということで親しい人を集めて歓迎パーティーをするということになっていたのですが、その場に乗り込むとき、二人のSPをだまくらかして響を会場のホテルに潜入させたのもくるみでした。
 なんという女の子でしょう!

 こうして、希美は日本に残ることになったのですが。
 響と希美、そしてリトルウイングの人たちの間に起きたことについて、要所要所で響と物語を引っ張ったのがくるみなら、その相手方はやはりライアン氏ですね。彼もまたかっこいい人物でした。
 この「×2」は、こういう構図の物語だった、という印象です。

 ところで、作中に登場するいくつかの実在の曲、例えば『Around The World』(Red Hot Chilli Peppers)、『Don't Look Back In Anger』(Oasis)などですが、私はロック方面はさっぱりなので名前も知りませんでした。というわけで検索すると、YouTube辺りにさらっと置いてありますね。
 こういう風に、「聴く機会がある」というのは、曲そのものにとってはいいことなんだろうな、と思います。

 …………。
 さて。

 上記の話は、つまり、くるみが響と物語を引っ張っていたという話は、一つの前提の上に立ててあります。
 勿論、「霧夢=くるみ」、ですよね? そうですよね?

 だって、「ひびき」が悩んでいたバンドのメンバーが小学生だと知ったときの反応とか、小学生に妙に拘ることとか、ネット絵師であることと冒頭のポスターやカード制作スキルとか、諸々……。ハンドルネームだって、
くるみ

KURUMI

KIRIMU

霧夢(きりむ)

霧夢(きりゆめ)
ですよね?

 でもそうだとすると、なんだかSAOの和人と直葉みたいな(笑)。

tag : 電撃文庫 蒼山サグ

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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