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ラノベ: 『なれる!SE10 闘う?社員旅行』感想

 このシリーズもついに10巻。二桁の大台に乗ったわけですが、これ勝手にサブ・サブタイトル付けていいですかね。例えば
ハイパーインフレ三人娘
とか。
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(2013/08/10)
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 10巻は6巻以来の短編集です。以下の四編からなります。
  • エピソード 1 闘う? 社員旅行
  • エピソード 2 もう迷わない? システムサイジング
  • エピソード 3 インタビュー? ウィズ・ニューリクルート
  • エピソード 4 誉=コンティンジェンシー
 と、あとはいつものように巻末の付録です。

 というわけで感想を順に……ではなく、ちょっと変則的にまずエピソード2から。

 この話は、まあいつもの感じと言っていいと思うんですけど、社長から直接SE部に仕事が来ます。
 「ASAPで」。
 つまりAs Soon As Possibleでってことで、一見最優先事項のように見えますが実は優先度も期限も明示されていないために気が付くとASAPだらけになっているという魔法の言葉です。
 それでこれまたいつものように工兵達(あと立華と梢)が担当することになるんですが、内容は要するに、要件に従って機器やなんかを選定したりコストを見積もったりといった作業です。勿論、納期も要件もムチャクチャなのが「いつものように」ってことで(笑)。

 途中で、これは明らかに自分等には無理とわかり、なんとかスルガシステムに来ないように見積もりを出したら、努力の甲斐あって失注……と知らされた直後に社長から受注の知らせ、という謎の展開。
 勿論その展開は社長の勝手な行動によるものでした。

 分量の割に技術用語がかなり多い、割合からするといつにも増してという感じなのは、やはりテーマからして必然、という感じでしょうか。何しろ、何でもかんでも入ってる要求ですから。

 という話に続いて、以降は順にエピソード1, 3, 4。
 まずエピソード1は社員旅行ですが、前半はまるでAnotherのような恐怖展開……のようですが実はそれは、藤崎さんと立華が共謀して工兵をからかっていたのでした。

 ちなみにそんな話の中で、旅行先は温泉なのですが立華が間違って男湯にやってきてしまうというハプニングがありました。そのシーンは口絵イラストにもなっているのですが……。
 立華、バスタオル巻いてる筈ですよね? 「一応申し訳程度」という形容はくっついていますが。
 あのイラストのどの辺りにバスタオルがあるのだろう……(笑)?

 さて、今回勝手に付けたサブ・サブタイトルの三人娘の一人目は、カモメさんです。
 まずは序の口と言うかジャブというか、カモメさんが作ってくれた卵焼き(出汁巻き玉子)がとてつもなく美味しいのですが、実は彼女、和食料理店でバイトしていたことがあるのだとか。
 京都祇園にあるらしいんですけどね、その店!

 ところがコトはそんなものでは済みません。
 後半、カラオケ大会になるのですが、実は前回ここに来たときのことのせいで呪われていると恐れられていたのですが、今回も同じことが起きます。つまり、歌おうとすると次々にトラブルで呼び出しがかかり、最後まで歌えないのです。
 ちなみに優勝者には長期休暇。

 そんな中、なぜか司会のカモメさんも歌うことになっていたのですが、彼女もその「呪い」からは逃れられなかったようです。
 不意にかかってくる電話。

「あたしよ」
 つぶやくような声音。瞳が怜悧な光を帯びる。
「そう……オ■マはどうやらあたし達とやる気みたいね」
 憂いを含んだ表情。
「えぇ、分かってる。彼らなりの考えね。イサナ・ミスヤオ・ネル・エ・カウモ」
 通話を切る。彼女は「それが世界の選択ね……」とつぶやきマイクを採用担当に渡した。そのまま軽く会釈し部屋から出ていってしまう。

 ……カモメさん、世界を動かしてる人なんでしょうか?
 これまでにもこういうことありましたが、最早その存在は何かを超越してしまった先にあるのでは???

 どうでもいいですけど、p96の小指を立てた立華が(笑)。

 エピソード3は、8巻で登場した工兵のライバルの次郎丸縁の話。
 何やら、『フレッシャー・ナビ』なる新卒のための就活情報サイトからのインタビューを受けることになったようです。就職活動中の学生をターゲットにした企画で、新入社員一年生の仕事の様子を見てもらおう、というもののようで。
 企画書の最後にはこんなことが書いてあります。

【第一回取材先】アルマダ・イニシアティブ合同会社 次郎丸縁様(※IT戦略部K坂部長経由で紹介していただきました。つかみはまず女性ということで(笑) ルックスもなかなかですし華のある記事になると思います)


 いや、「(笑)」とかやってる場合じゃないんですけどね(笑)。インタビューの結果を言うと、あっさりボツになりました。

 だってねぇ。
 縁が新入社員らしさを見せてくれるわけがないじゃないですか(笑)。
 もうストーリーも決まってて先にナレーションなんか収録しちゃってるわけですが、それとの食い違いがまた笑える。
 朝はいきなり20Kmくらい「ジョギング」(笑)した上に筋トレ、ヨーロッパやアフリカ、日本など五ヶ国語を喋る、などと言ってるそばから挙げた言語の中にないドイツ語でチャットを始めるし、朝は大量のメールにてこずるかと思いきや移動中などにも処理していて大して残ってないしメール以外も使いこなしているし、以下略。
 先輩社員に聞いてみれば、まるで通販会社の宣伝文句みたいな答えが返ってくるし。

【テロップ】プリンシパル K=B(男・42才)
「信じられないよ! 彼女と一緒に働いただけで持病の肩凝りが治ったんだ。家族との関係も良好になって気づいたら出世までしてたんだよ。もう幸せの絶頂ってやつさ!」

 例えばこんな胡散臭い回答ですが、それがどのように実現されたかが想像できる辺りが絶妙な書き方ですね。

 なんというか、初めて客先訪問したときのことを「今から考えると懐かしいですね」などと語るとか(笑)。学生達へのコメントを求められれば、大会社の経営者が言いそうなことを言うし。

 まあ、編集部のデスクが「こんな新人いねぇよ!」と言ったとか言わないとかいうインタビューだったわけですが。
 工兵、こんなのと渡り合ってライバルになったんだなぁ。ある意味、その方が凄いことかも?
 というわけで、カモメさんに続きハイパーインフレの二人目、縁の話でした。

 エピソード1に続いてここでもどうでもいい話ですが、p165の縁、ジャージ姿なのに妙にいい……。

 さて、ハイパーインフレ三人目は、まさかの誉、つまり工兵の妹。まあエピソードのタイトルになっているのでまさかも何もありませんが。
 彼女には実は失踪癖があります。いきなり何日かふらっといなくなる。
 周囲は呆れていますが、実は彼女なりに考えています。

『私はね、たまに自分の生きる力を試してないと不安になっちゃうんだよ』

 つまり、まだ子供の自分は周囲に依存して生きているわけで、非常に不安定であり、

『だから練習しときたいんだよ、家や親・収入がなくても一人で生きていけるか、知らない場所で暮らしていけるか』

ということを考えています。
 まあ、一見マトモなようでいて、話を全部聞いてみるとかなりムチャクチャですけど(笑)。

 というわけで、本当は別のところに行く予定がちょっとした手違いと気紛れで工兵の会社にやってきた誉。
 そこでもその破天荒ぶりというか何と言うかで周囲を混乱させますが、意外なところで活躍します。
 工兵のミスで、事前に客先に届けておいてこの日リモートで設定をする予定の機器が、発送されていませんでした。物流センターに直接届ければ何とか間に合うと言うことでしたがうまく行かず、困り果てていたところで、なんと、誉が自転車で配送!
 規格外れっぷりを見せ付けてくれます。

 三人目のハイパーインフレは、というか三人順番にその規模が大人しくなってきますが、年齢を考えると何れ劣らぬ超人ぶりなのではないか、とか思ったり。
 まあ、一部に年齢のよくわからない人もいらっしゃるようですが。

 というわけで、実際には色々なことが語られてはいますが、10巻を読んでみて残った印象は、この三人のことばかりでした。で、冒頭のサブ・サブタイトルなのです。

 ところで、最後のエピソード4では、スルガシステムの重要な機密事項の漏洩事故がありました。正確には、漏洩しかけたというか、はっきりと判別できない程度で辛うじて止められたというか。
 それは、押し掛けてきた誉を両親が来るまでどこにいさせるかという話の中で出てきたことです。
 藤崎さんが、オフィスの中でいいんじゃないかと言って手続きして入れてくれたわけですが、それに立華が食って掛かります。顧客情報などもあるのに部外者を入れるとかどうなのか、と。

「ああその件は僕がいいって言ったんだよ。ほら、妹さん未成年……学生だし、見知らぬ町に一人で放り出すのも危ないと思ったから」
「未成年だからなんだっていうんですか? 企業のコンプライアンスに年齢も学年も関係ないでしょう。だいたい成人前を理由に特別扱いが許されるっていうならわた……むぐっ!? むぐー!?」
 カモメの手が室見の口元をふさいでいる。


 これは一体……(笑)!?

 ちなみに、エピソード1でも、工兵とカモメさんの間で「どこぞのお姫様だったりするんですか?」「そういうのとはまた違うんだけど」という会話がありました。
 なんとなくですが、こういう表現って、まるっきり違うものには使いませんよね。違うは違うけど、レベル的には近いとか、そんな感じですよね。
 果たして立華は何者か。
 実は、ハイパーインフレ四人娘、なのか?

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水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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