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ラノベ: 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』12巻感想:レイヤー#2 ラスボスについて

 12巻感想の二つ目です。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)
(2013/06/07)
伏見つかさ

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 感想一つ目に書いたように、ここではちょっとメタな話をします。

 11巻の感想で私は麻奈実を「ラスボス」と表現しましたが、どうやら京介もそのことについては考えていたようです。ただし、もっと認識は深かった。
 卒業式の日の「最終決戦」のときのことです。

 そもそも、最終決戦だなんてご大層な前フリをしたが、麻奈実はラスボスなんかじゃない。
 この物語のラスボス、俺が立ち向かうべき敵は、一番最初から変わっちゃいないんだから。
 俺はそいつ、あるいはそいつらに言ってやった。
「知るか!」
 ってな。

p350, 下線部は原文では傍点

 桐乃にしてみれば麻奈実は恋敵という意味でラスボスという位置付けでもあるでしょうが、京介にとって、そして桐乃にとっても京介との間柄に対してどうかという意味では、そうではない。
 麻奈実よりも、麻奈実がその威を借ることになった「虎」が「俺(京介)が立ち向かうべき敵」だった、ということです。
 そして見落してはならないのが、京介が「一番最初から」と言ったことです。

 それはつまり、一番最初から京介は「そいつら」が敵になるようなことを予期していたし、ということは彼の気持ちも一番最初から決まっていたということを意味します。
 いや、他にも解釈はできます。例えば、今振り返ればそうだったんだ、という意味。そして、例えば、最初は自分達の関係にとってではなくエロゲーをすることに対して、という意味。さて。

 まあそれは措いといて、ではその京介が言うところのラスボスとは何かというと、麻奈実が口にした正論であり、それを口にする人であり、それは次元を超えて「そいつら」のモデルとなった我々のこの世界の正論をも意味するでしょう。
 ……ラノベって二次元か(笑)?

 元々本作は、特にアニメ化されたときに話題に(問題に?)なりましたが、女子中学生がエロゲーなんぞやってる話であり、社会道徳的にどうなのよ、というところがありました。加えて、どう見ても桐乃は実の兄の京介に恋愛感情を抱いている。京介もそれは同様。
 ならば、ラストには当然、そのことが描かれる筈。実の兄妹の恋愛関係は、一体どうなるのか?

 勿論、麻奈実が象徴的に語っているように、「気持ち悪い」と社会は反応しようし、間違っている、と糾弾するでしょう。
 京介はそれに対し、こう言いました。

「いいか、よっく聞けよ──おまえは正しくて、俺たちは間違っている。悪いことをしているってハッキリと分かるぜ。倫理とか、常識とか、世間体とか、エロゲー主人公の中には、くだらねえって切り捨てちまうやつもいたけど、痛快でカッコイイとは思うけど、俺は、くだらないとは思わない。そういうの全部、すげー大切な考え方だと思うぜ。平凡な高校生が幸せに生きるためには、守るべきルールってもんがあるんだ」
 だから常識や世間体として、広く定着している。
 正しいからだ。けどな、
「俺はそれを破る! もっと大切なものがあるからなあ!」


 しかし京介はこう言いつつも、前のエントリに書いたようにこの時点で既に、卒業までの期間限定の恋人、という結論を出しています。
 これは、現実と折り合いを付けた、と言っていいでしょう。倫理、常識。そういったものは「正しい」。だから、逸脱は一時(いっとき)だけにする、逆に言えば、一時の逸脱は看過してほしい。
 そして、心の中の自由くらいは許してほしい。
 これが、彼らの選んだ「現実的な落しどころ」だった。

 この物語は、主人公たちがそうして「現実的な落としどころ」を見出して現実と折り合いを付けるという結末を迎える、という「現実的な落しどころ」を見出して現実と折り合いを付けた、だから、せめてこういう「間違った」物語を愛することくらいは許してほしい、と。
 そういう作品なのだと思います。

 勿論、作者の言いたいこと、伝えたいことが那辺にあるか、そんなのは推測、というか妄想するしかありません。どこかで書いているか、有名作品なのでどこかでインタビューなどに答えているかも知れませんが。
 しかし、このように思える作品が、今のこういう時期に出版されることになったのは、一つのささやかな偶然として大切にしたいと思います。まあ、因果関係がある可能性もありますけど。どちらの順番でも。

 ともあれ、まだアニメやゲームや漫画や、もしかすると他の形態の関連作品も続いている『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』も、ついに原作本編が完結しました。
 ここで、あとがきからちょっと引用します。この部分を選んで引用することで、まあまだ雑談のエントリを予定していますが、一つの締めくくりとします。

 本作はこれで最終巻で、皆さんとはお別れになってしまいますが、どうか桐乃たちのことを、もうほんの少しだけ、覚えていてください。
 そして、何年かあとで、ふと、あの頃あんなやつらがいたな、と思い出してくれたなら、いま何やってるのかな、と想像してくれたなら。
 桐乃たちは、これからもずっと、人生相談をしたりされたり、千葉やアキバの街を歩いたり……そんな騒々しい日々を元気に生きているんじゃないかな、なんて思います。


関連項目:

tag : 電撃文庫 伏見つかさ

コメント

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No title

そういえば、美少女文庫でも二次元ドリームでも実の姉妹と関係持つ
作品というのは少ないけどありますが、みんな(僕の知る限りは)ハーレム
であって単独、あるいは実の姉妹を最後に選択するという作品って言うのは
もしかしたら「俺の妹が」が初めてかもしれない。

 姉妹系の単独は皆「義理」ですね。(知る範囲においては)
  
 遠野渚さんあたりがやってるかも知れませんが。
 「俺の妹が」をエロパロにした作品かいてますので。

 期間限定とはいえ、そういうルートをとる作品って一般ライトノベルじゃあ
初めてなのかも。
 

Re: No title

> もしかしたら「俺の妹が」が初めてかもしれない。
考えてみれば、選択肢はたくさんあったのにわざわざ実の妹を選ぶ、という作品はそうないかも知れませんね。

>  期間限定とはいえ、そういうルートをとる作品って一般ライトノベルじゃあ
> 初めてなのかも。
まあ数多あるラノベの中には他にもあったかも知れませんが、これだけメジャーになったものは多分ないでしょうね。

本文では「間違った」物語と言いましたが、ここではそれがたまたま妹(兄)を愛することであるだけであり、別にそれに限らず同じことが言えると思います。
人を殺す作品はたくさんあって許容されているのに、と。

No title

エロゲ原作の『あかね色に染まる坂』のアニメ版では、最終的に主人公は実妹を選んでましたねぇ。実に素晴らしい決断だったと言わざるを得ない。

ただ原作では実妹確定なのに、アニメ版では義妹の可能性を仄めかしていたのはいただけませんでしたが。

まぁOVAで「実妹とか義妹とかもうどーでもよくないですか!?」と妹に言わせたのは評価できる点でしたね!

Re: No title

> 『あかね色に染まる坂』
「決断」を誉め称えるべきは主人公かスタッフか(笑)。
もう、それを目的としたものであるならばそれを貫徹するのが、レーゾンデートルに合った在り方ですよね。
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
   

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