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ラノベ: 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』12巻感想:レイヤー#1 京介と桐乃について

 ついに最終巻に辿り着いた本シリーズ。思い起こせば長かったですね……。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)
(2013/06/07)
伏見つかさ

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 いつものようにネタバレありで行きますが、加えて今回は、感想を二つのレイヤーにわけて書いてみます。一つ目は純粋に作中のことについて。もう一つは、登場人物、特に京介も口にしている、ややメタな話について。
 そして更にその後に雑談的な話。
 という三つを、三つのエントリにわけて書く予定です。か、もしかしたら後の二つの話題は一つのエントリにまとめられるかもですが。

 というわけでまずは早速その一つ目の感想から始めます。第二層は次のエントリで。

 12巻の構成は、第一章から第五章、そして最終章があってエピローグが続きます。
 第一章では京介と桐乃のクリスマスデート(!(笑))の様子が描かれ、第二章では10巻でフラグが立ったあやせにどう向き合ったか、第三章では同じく黒猫〜第一章で中断した桐乃エピソードの決着、第四章ではやっと付き合うことになった京介と桐乃の、仲間へのお披露目。
 第五章では、語り部である京介は付き合い始めた二人の送っている日々と表現していますが、実際には最終章、つまりラスボスとの決戦の序章であると私は思います。確かに日常……的でない日常の描写が続きますが(笑)。

 まあね、なんつーか、第三章までは、どっかのラノベの魔法少女みたいに「爆発してください」とコメントするしか(笑)。
 実際、第一章では京介と桐乃は見ていた人にバカップルとか言われていましたし、下宿時代のあやせとの生活は、相手があやせであることを考慮に入れれば(客観的にはどうあれ(笑))らぶらぶな感じでしたし、黒猫とプールでデートだし。

 ともあれ、あやせにも黒猫にも、京介は他に好きな人がいると言ってごめんなさいし、結局桐乃にプロポーズしてしまいます。
 それは言葉の綾ではなく、ほんとにこう言いましたから(笑)。

「どこにも行くな! 俺と、結婚してくれえええええええええええええええええええええっ!」


 ところで、11巻の最後に、桐乃が「エロゲーよりすっごいことしてやるんだから!」と叫んでいましたが、エロゲーよりすっごいことをしたのはこのシーンの京介だったんでは?と私は思ったりするんですが、どうですかね(笑)?
 というか桐乃は後に、

「もしもあんたが告白してこなかったら──今日、あたし、あんたに告白するつもりだったんだよね」

と言っています(p241)。もしかするとそれが「エロゲーよりすっごいこと」になる予定だったのが、京介に先を越されてしまったとか?

 実際、12巻ではほぼ一貫して、京介が主導権を握っています。……そのようには見えないかも知れないですが、結局はそうなっていますよね。本人いつものように調子に乗って、

 なんて扱いやすい女なのだろう。あやせと互角のチョロさである。

とかのたまっています(p222)。彼の場合、大概それで後になって足を掬われるのですが、今回は……?

 とまあそんなこんなで、京介のプロポーズに

「はい」

などという、え?これだれ?みたいな返事を桐乃がして(だからイラスト付きなのか(違))付き合うことになった二人ですが、決戦は京介の高校卒業の日となりました。

 ゴスッ! と、麻奈実の拳が桐乃の腹にめり込んだのだ。


 さて、あれだけの策士ぶりを見せた麻奈実ですが、前巻では形勢不利と見て一旦は引いたものの、結局は一つしか新たな策を講じられなかったようです。つまり、こう説得することです。

「このあと二十歳になって、三十歳になって、二人は同じことを言い続けるの? それでいいと思っているの? 親しい人たちに、それをなんて説明するの? えっちなげーむの悪影響でそうなったって責められたとき、否定できるの? 納得してもらえるの?」

 これは即ち、彼ら(京介と桐乃)の大切にしているものを人質に取る策です。
 彼らと真に親しくなれる人。であればそんな関係を打ち明けても否定はしないでしょう。しかし、本当に心から祝福できるのか。そういう人達を悩み苦しませることにならないか。
 そして、彼ら、特に桐乃の愛する「えっちなげーむ」が、プレイする人に悪影響を与えるものであると人々に思わせるようなことをしているのではないか。

 まず先に手が出てしまったように、麻奈実は多分、それで京介を取り返せるとは思っていなかったでしょう。だから、最初から敗けはわかっていたことと思います。
 多分、この後に麻奈実が京介に、

「わたしがっ、ずっと……ずっと……きょうちゃんのことが好きで……いまここで、付き合ってくださいって……告白したら?」
「!」
「……そうしたら、わたしのそばにいてくれる?」
 彼女の頬を、涙が伝った。

ついに本当の気持ちを打ち明けたことは、作戦でも何でもなく思い余って言ってしまったにすぎない、筈。京介も思ったように、あまりにタイミングが悪すぎるからです。こんなのは作戦ではあり得ない。少なくとも麻奈実がこれまでやってきたことを思い返せば、それは明らか。

 この「決戦」は麻奈実の一人相撲という要素が大きい。麻奈実は彼らのことを知悉している。であれば、どういう決意をしているかはともかく、自分が突いたようなポイントは、すでに乗り越えた上で付き合い始めたのだろうということは麻奈実にはわかっていたはず。
 実際、当事者である彼らは、もっとずっと先を行っていたからです。
 種明かしは、こうです。

 クリスマスの日──俺たちは『約束』を交わした。

 ──卒業まで、二人は期間限定の恋人になる。
 ──卒業したら、二人は普通の兄妹に戻る。

 つまり、この日が期限だったのです。

 京介がこのことを麻奈実に言わなかったことは、「誠意」の証しだと思います。
 12巻の中で、これと同じようなことをもう一つ京介はしていました。桐乃に「どこにも行くな」と言ったことについて、後に桐乃は、以前京介に一つだけ言うことを聞くと約束していたことを持ち出し、その『お願い』を使うと思っていたと言いました。

 たぶんこんとき、桐乃は俺に『おまえとのことは、自分の力でなんとかしたかったんだ』とか、そーゆうカッコいい返事を期待していたと思うんだよな。あとから考えてみっとさ。
 でも俺はこう答えた。ドキドキしているっぽい女の子に向かって。
「いや、あんなもんエッチなお願いするに決まってんだろ? 他の発想なんてなかったわ」


 まあ、ここ笑うとこ、ですが(笑)、これで桐乃は期待が外れて幻滅したか? そんなことはないでしょうね。であればそもそもこんな関係にはならなかった。そういう「カッコいい」ことを考えていなくても、京介は結果的には同じことをしてきたから。
 麻奈実に対しての今回のことも、多分同じ。

 というわけで、結局は「恋人」の関係は終了して兄妹に戻った二人。
 ですが、さて。
 「恋人」だった間と、一体何が変わったのか?

 何も変わってはいないのではないか?

 要するに、どうでもいいことなんですよね、二人の関係が「何であるか」なんてのは。
 結局のところ、こういう「玉虫色」のようでいて、決着から逃げたようでいて、名を捨てて実を取る、肉を切らせて骨を断つようなのが真の勝者なのかも知れません。
 ほら、浮気されるにもプラトニックの方がダメージが大きいと言うし(笑)。

 そして、そういう選択ができるのが、真に深いつながりなのでしょう。

関連項目:

tag : 電撃文庫 伏見つかさ

コメント

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No title

僕は実妹キャラ萌え人間ですけど、よく思うんですよね。

──「いま」は幸せな彼ら(兄妹)も10年後20年後、もっと言えば老後になったときにどうなっているんだろうか?

──倫理や道徳や世間や常識に背く彼らは幸せになれるんだろうか?

──彼らの幸せが、誰かを不幸にするのではないだろうか?


なかなか答えを出しにくい、それこそ「そんなもん知るか」とか「自分たちが幸せならそれでいい」みたいな形になってしまいがちな問題ですけど、それから逃げることなくちゃんと向き合っているこの作品は好感が持てますね。

Re: No title

> それから逃げることなくちゃんと向き合っているこの作品は好感が持てますね。
同感です。
「レイヤー#2」の方に書いたように、ちゃんと向き合う主人公、そして主人公をちゃんとそれに向き合わせた物語、そういう二つの意味で同じことが言えるかと思います。
更にそちらの話をすると、今回の作品は実の兄妹の恋愛という話でしたが、他の「間違っている」ものでも同じなんだ、ということが言えますね。

そういうものに真面目に向き合うことは、何も「真面目な文学」だけではない、という風に思いますが、しかし、何かが「ライト」ノベルをそういうものにしてしまったとか、宿命的にそういう方向に向かうのだ、とかいうことももしかするとあるのかも?
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水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

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