FC2ブログ

独り言: 「若造」の姿

 ぼんやりとテレビを見てて何となく感じたことを。
 何の番組かというと、『和風総本家』なんですけど、実は番組そのものとは殆んど関係なくて、常々思っていたことです。

 何だか檜皮葺きの屋根の修復だかなんだかの作業が出てきたんですが、それに携わっている職人さんが比較的若い人でした。インタビューを受けていた人は26歳とかでしたし。
 こういう(狭義の)職人だけでなく、例えば「ある地方に伝わる伝統漁法」とか色々なんですけど、中に若い人とかいると、何だかほっとするんですよね。

 まあ、その道60年とかいう人の仕事を見るのも素晴らしいことですが、そういう人ばかりだと、何だか後継者はいるのかな?とか心配になってくるのです。だから、そういう場に若者の姿があると、はらはらせずに安心していられる、というか。

 というわけでいつものように逆説的なタイトルを付けてみました(笑)。

アニメ: 2014秋アニメ感想(4)

 今週のアニメ感想です。

異能バトルは日常系のなかで 第3話「邂逅 ランデブー ポイント」
 先生、突っ込むべきはそこじゃないと思います。

inou_3_1.png
Q. Tom wakes up at every morning.
A. トムは毎朝、六時に覚醒[めざ]める

 どうして安藤君は、トムが覚醒[めざ]めるのが「六時」だとわかったのですか? もしかして異能ですか?

ヤマノススメ セカンドシーズン 新十五合目「雨具の記憶 ~ねえ、ゆうか。今なにしてるの?」
 いつもとは違う始まり方。まさかの楓さん主役の話です。
 というかこれ、「新十五合目」でいいんでしょうかね。どっかのSAO2みたいに本当は「新十四.五合目」だったり?
 まあともあれ、話は荷物を整理していた楓さんが見つけた雨具から。昔、「ゆうか」さんと一緒に買ったものです。
 彼女は元同級生で、楓さんが山に出かけてはたまに
yamanosusume2_15_1.png
怪我をして帰ってくることを、本当に心配してくれていた人でした。でも、いつも笑って受け流す楓さん。ゆうかさんんはある日ついに……。

yamanosusume2_15_2.pngyamanosusume2_15_3.png
何が大丈夫なのよ、何も大丈夫じゃないじゃない!

 走り去るゆうかさんの目に光る、涙。
yamanosusume2_15_4.png

yamanosusume2_15_5.png
 それで楓さんは、自分のこと、心配してくれる友達のこと、色々なことに思いを馳せて色々なことに気付きました。そして今は、あおい達のことを心配する側になっています。
 ゆうかさんとはちゃんと仲直りして、一緒に登山のための装備を買いに行ったりしました。その時に買ったのが、冒頭に出てきた雨具です。

yamanosusume2_15_6.png
(ねえ、ゆうか。今なにしてるの? 会いたいよ……!)

 そんなゆうかさんも、今はもう……。

yamanosusume2_15_7.png
「あ、ゆうか? 今なにしてた? なにもしてない? だったらさ、ちょっと買い物付き合ってよ!」

 をい
 楓さん全然変わってないな! 俺達の心配をどうしてくれる(笑)!?

yamanosusume2_15_8.png
 ちなみに、これがゆうかさんの見立て。

Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #03「初戦」
 以前の校庭でのものもそうでしたが、戦闘の描写力が凄過ぎる。
fatesnubw_3_1.png
 セイバーの魔力もあれば、バーサーカーのこの巨体が軽業師のように繰り出す攻撃も。アーチャーの、アーチャーらしくどこからともなくやってくる攻撃もまた。
fatesnubw_3_2.png
 そして、魔術師の方も、こちらは全く違う種類の迫力です。
 ただ、ちょっとだけ引っ掛かったところもあったりしますけど。例えば、
fatesnubw_3_5.pngfatesnubw_3_6.png
右下に受け流した後に左に構え直すところとか。
 まあいいとして、そんな中でも話は動いています。例えば、
fatesnubw_3_3.png
コイツの登場とか。それがあることで、
fatesnubw_3_4.png
こういうシーンの意味がまた深まろうというものです。

ソードアート・オンラインII 第16話「巨人の王」
 いきなり、ゲームシステムそのものの話が出てきたりして、怪しい流れに。ALOは、所謂≪ザ・シード≫から作られたものではなく、アインクラッドを作り上げていたSAOのシステムのコピーなので、カーディナルシステムも同等であり、なんと、クエストを自動的に作り上げる能力があるとのこと。
 恐るべし、茅場。
 しかしそれはつまり、もしかすると、彼等の愛するこのALOの作品世界もアインクラッドのように崩壊し消滅してしまうかも知れないということを意味しています。

 ここでちょっと演出の話になりますが、SAOと違いALOは、そこまで深刻になる話なのかという受け手(視聴者)の反応もあるかと思います。そこを彼、クラインの言動によりケアしているんじゃないかと思いました。

saoii_16_1.png
「まだ運命の人とも出会ってねぇってのに……」

 クラインがこうして茶化して(いや本人は真剣なようですが)くれることで、その辺りを緩和してくれている感じがします。
 それにしても、あんたゲームの世界に一体何を求めてるんですか(笑)。

 まあともあれ、エクスキャリバーを求めて戦闘。
 久々にみたキリトのソードスキルが何だか二刀流っぽくないなと思ったら、実はシステムに存在しないために片手のソードスキルを交互に出していたとか、何やらマニアックな説明もあったりしましたが、やはり気になったのはこちら。
saoii_16_2.pngsaoii_16_3.png
 ピナにこんな能力が!とか、他にも、シリカの活躍が見られて嬉しい……とか。
 いや本当に、SAOでキリトと出会って助けてもらった頃のシリカを思うと、何だかしみじみと何か感じてしまいますね。
 あとは、アスナ。
saoii_16_4.png

saoii_16_5.png
 バーサクヒーラーの片鱗を見た気が(笑)。

 また、クラインの活躍も見逃せません。
saoii_16_6.png

saoii_16_7.png
 ……ALOって出会い系だったのか(笑)。

結城友奈は勇者である 第三話「風格ある振る舞い」
 世界観もそうですが、毎回サブタイトルに出てくる言葉も結構好きです。「綺麗事」になって最早忘れられようとしているこういう言葉が。
 OPテーマ曲の『ホシトハナ』も、とても好きです。まずあのイントロにやられました。あと、Bメロの優しいメロディが作品にとても合っている気がします。

 しかし物語はと言えば……。

yuyuyu_3_1.pngyuyuyu_3_2.png
「あなたたちは用済み。ほい、お疲れ様でした~」
「ええー!?」

 いきなり現れた五人目の魔法少女……じゃなく勇者からいきなりの「用済み」宣言。これは、

yuyuyu_3_3.png
「最強の勇者を完成させるためにね!」

勇者部の面々は彼女のための戦闘データを集めればもう必要ないということでした。
 この傲岸不遜な態度、高い戦闘能力、そして「赤」。
 どうにも、どこかの杏な子のことを思い出します。

 唐突ですが、この勇者、夏凛の言葉は実は正しいのではないでしょうか。つまり、大赦が彼女をここに来させた理由のことです。
 夏凛はこれまで、最強の勇者になるために訓練を続けてきました。直接の描写はありませんが、多分、血の滲むような思いをして自分を鍛え上げてきたのだろうし、そのために全てを犠牲にしてきたのでしょう。だから、彼女の能力には、それを誇るだけの理由がある。

 そんな彼女を、大赦は、「育てる」ことを企図しているのではないか。

 勇者部の集めた戦闘データとかではなく、夏凛の言うところの
yuyuyu_3_4.png
「ふわっとしたスローガン」を掲げているようなところで、少し力を抜くことを憶えたらどうだ、というような意味で。
 実際夏凛は、

yuyuyu_3_5.png
「じゃあ部員になっちゃった方が話が早いよねっ」

友奈の天然攻撃!には振り回されるし、勇者部のふわっとしたゆるい感じには、なすすべもなく翻弄されるばかり。
 そういえば夏凛の訓練の様子が描かれていますが、
yuyuyu_3_6.png
持っている武器の形状の割に、何だか中国拳法っぽいですね。これには、力を抜くことの重要性も象徴的に描かれているような感じです。
 あちらでは剣術は、手の延長という概念らしいですし。

 それはともかく、あんな態度を取っていても夏凛は基本的に真面目なので、

yuyuyu_3_7.pngyuyuyu_3_8.png
「なんで私が子供の相手なんかを!」
「嫌?」
「!」

こんなことで狼狽えたりする、実はメンタル弱い少女かも(笑)。言っていることの刺々しさと比べ、実に「赤き心」の人です。もしかしてイメージカラーはここから?

 ともあれ、最後まで振り回されて結局結構いい子であることがばれてしまった夏凛(笑)。
yuyuyu_3_9.png

 定時連絡として報告のために送っているメールに夏凛はこう綴っています。

yuyuyu_3_10.png
現勇者達を一から指導
あまりの頼りなさに今日まで無事だったことが奇跡に思える

 実は勇者部は、本当に奇跡を起こしているのかも知れません。

 ところでそうなると、夏凛について気になることが。
yuyuyu_3_11.png
 樹の占いでは死神のカードが出たそうで。
 というか、悪魔と死と塔って、一体どんだけ縁起悪いカード(笑)。また、樹は死のカードを気にしていますが、確かこれって、塔こそが最悪のカードだったと思うんですけど。

tag : アニメ

艶漫画: 『全開露出少女』感想

 何やら一部で話題騒然らしい(笑)作品です。

全開露出少女 (XOコミック)全開露出少女 (XOコミック)
(2014/10/25)
草野ゆぅ

商品詳細を見る


続きを読む

tag : XOコミック 草野ゆぅ

おカネ: 日本経済、もうダメかもわからんね

 日経BPの記事で、興味深い解説を見掛けました。

 この記事のうち、消費税増税の後の落ち込みの大きさについての話です。どの辺りが興味深いかというと、実際の下落分だけを見るのではなく、トレンド成長率も見込もうという発想。つまり、その時代は大体このくらいの成長率、という状況から、何もなければこのくらいになっていた筈という状態を想定し、そこからの下落幅を見るというものです。
 たとえば、消費税導入時(1989年)なら、80年代は大体年率4.3%、四半期なら約1.1%(この世界では四半期は4で割って求めるらしい)。だから、反動減の-1.3%は、トレンド成長率を考慮すると、実態としては-2.4%だったということです。

 そういうことを考えると、2014年の落ち込みは、1997年の落ち込みよりは大きいが、消費税導入時よりは小さいと言える、という話。

 ここで私は、一つの簡単な計算をしてみました。トレンド成長率を考慮した落ち込みは、トレンド成長率、つまりその時代の成長力というか、そういうものをどのくらい毀損したことになるのか、と。つまり、落ち込みがトレンド成長率に比してどのくらい大きいのかということです。
 表にしてみます。
 1989年1997年2014年
(A) 反動減-1.3%-0.9%-1.8%
(B) トレンド成長率1.1%0.38%0.35%
(C) 実態としての落ち込み (=(A)-(B))-2.4%-1.3%-2.15%
(D) 成長毀損率 (=(C)/(B))-220%-340%-610%
 左にある各タイトルは適当に付けたものです。また、(D)の数値は10未満を四捨五入しました。

 まあ、ちょっと計算してみた、というだけの話ですけど(笑)。

 以前、この4月の増税の影響を含め、今の経済状況をどう見るかということについて、個人が名前を出して示している分析は比較的悲観的で、それが公人、団体(新聞社等)になると段々楽観的になっているな、という感想を書いたことがあります。
 それは多分、自分の名前を出していて外れると将来困るというのがあるから、というのがあろうかと推測しましたが、また、公人が言うことは実体に影響するというのもあるでしょう。
 ところが最近は、新聞等でもだいぶ状況が変わってきたようです。
 そんな辺りで、実はかなりアレな状態にあるんではないでしょうかね、日本経済。

 実際、アベノミクスとか称する政策群に何か期待できるものがあるとは思っていませんでしたし、また実際に消費税率を上げたときにはそれまでに何か効果があったとしてもチャラになるとは思っていました。
 しかし、実際に経済を動かすのは極論すると人々の「期待」であり「希望」であるので、みんなが信じるとそうなってしまうという部分も大きく、止まっていたお金が流れ始めれば、企業が溜め込もうが(今は企業が貯蓄の主体)政府が消費税を上げようが(消費税はお金の流れをせき止める極めて効率的な手段)なんとかなる可能性はあったのですが、どうやらない袖は振れなかったようです。

 そんなわけで扇情的なタイトルを付けてみたわけですが(笑)。

 そもそも、色々な宗教用語が飛び交っていますよね。
 円安でうまく行くわけがないというのは、「下請」というキーワードを提示すればわかった筈なのに。まあ、その辺りについても庶民は、円安=購買力低下って発想でわかっていたと思うんですけど。別に輸出なんて日本の経済ではそんなに大きくないんだし。いや、円安になっても全然増えなかったのはちょっと個人的には悪い方に想定外でしたが。こんだけ悲観的だったのに(笑)。
 株高にしても、短期的に見ればそんなのは買った人から売った人にカネが流れただけの話。海外かも知れない。
 賃金? 業績上がる前に上げる企業があるわけがない。いやまあ、貯金するのなら株主に戻すか従業員に払えってのが普通の考え方ですが、そこは日本の企業ですから。賃金については、政府の強請りにも効果はなかったようです。そういうところだけ真っ当ってのもたちが悪いですね。

 なんでここまでダメなのか。

 まず、ここ四半世紀の経済政策を見てみると、諸外国から何度言われようとも "too little, too late" の方針を貫き通してきた。兵力の逐次投入です。また、何かをする時には必ずそれを打ち消す政策も打ってきた。それに、売り上げが落ち込んで利益(税収)が減れば値段を上げれば(増税)いい、みたいな謎めいた考え方だった。
 また、政策を助言する者(有識者(笑))も、木に竹を接ぐようなことしか言ってこなかった。つまり、「現状」がどうであろうと構わず、それと正反対の状況のために考えられた理論を当てはめようとした。
 そして、民。
 新興国が台頭してきたら、わざわざその土俵に降りて行って対抗するとか一体どんだけ……? これは「人」の話でありこれまでに何度も糾弾してきたことではありますが、つまり、人にカネを払いたくなければそうする以外なかったということでしょう。
 後は、IT〜ICTですか。

 以前にもこの比喩は使ったことがありますが、ITは生物の進化で言えば、人間の登場に相当すると思います。巨大でスカスカの大脳を持つ、つまりプログラマブルな生物の出現です。
 日本の電機、そしてユーザも、大脳というプログラマブルな機構を特長とする生物の、まさにその部分の価値を認めなかった。
 その比喩を更に押し進めると、通信できるようになったことは言葉や文字の発明、Webは活版印刷くらいのインパクトでしょうか。本質的な類似点という意味ではそう近くはないですけど、それによる普及、商用利用への圧力といった点では大きいでしょう。
 また、人間が環境に与えた影響というのも、ITの情報産業以外の業種への影響を考えると似ている。
 まあ、私がITを重要視することには、以前はその業界にいたというバイアスもあるかも知れませんけど。

 そのことをずっと理解していなかったのは、所謂先進国では日本くらいではないでしょうか。上記の「人」の軽視はIT/ICTの不理解と多分本質的に同根です。
 そして多分、今でも理解していないと思われます。一例を挙げると、ソニーがハイレゾなどという下らないことをやっていることとか。

 という風に、考えていることと意味が違ってしまう表現をするのは私の文体と言ってもいいくらいですが(笑)、ではハイレゾの何が腐っているのか。
 それはつまり、ハイレゾデータの再生機器を作りはしても、肝心のデータの配信に全くやる気が見えないところです。再生機など、端末、つまりはシステムの末端に過ぎないのに。もちろん、人とのI/Fが重要なのは確かなんですけど。

 過去にちゃんと例があるというのに、歴史から学ばないんでしょうかね。iPodやiTMS(当時)を作ったAppleという例が。あの、過去の契約なんぞ反故にしてしまうようなえげつなさまで真似しろとは言いませんが、しかし、そのくらいしないと不可能なのかも知れません。
 日本で言えば、著作権法や権利者をどうにかするくらいの気概なしに、うまく行くわけがない。実際、今売られているハイレゾデータなんて、メーターの付いていない欠陥車みたいなものなのに。いきなり最初からは無理というのは作る側の事情で、それを何とかしてから発表するくらいでないと誰も見向きもしない。
 何故なら、今のままではハイレゾは今あるものの延長にすぎないからです。

 いや、一例を挙げるだけのことにちょっとのめり込みすぎましたが、言いたいことは何かというと、イノベーションがどうこう以前に、やろうとしていることの全体像というのを見ていますか?ということなんですけど。政策にしても製品開発にしても。欧米で失敗して反省し是正しようとしているようなことを周回遅れで導入しようとするのも。
 全体像を見るということは、仕組みを意識するということでもあります。結局、それができないからできない、ということでしょうか。
 あとは、もう何度書いたかわからないくらいですが、形のないものを軽視するのはダメだってことです。勿論、モノはどうでもいいのかというとそうではないんですけど。それこそ上の話ではないですが、何か指摘するにしても対象によって違ってくるわけで。
 でも考えてみると、これも仕組みを意識することと同じですね。どちらがより本質的でしょう。

 アタマのいい人は沢山いる筈なので、そこんところに気をつけると何か出てきそうに思うんですけど、さて。

マンガ: 『そわそわDrawing (1)』感想

 いやー、カテゴリどうしようか迷いましたよ。


 なんたって表紙めくると扉にいきなり全裸の女子中学生ですから(笑)。つかそもそも表紙だってボディペインティングだし。
 主人公は、美大一年生の高陸洋一と、その美大でヌードモデルを始めた14歳の千暁萌葱。
 二人とも美術が好きで、洋一は反対する父親を説得して入学しているし、萌葱は自分で描くのはまるでダメだからとモデルを志願。叔父が美大で教授をやっているので口を利いてもらってなんとか実現しました。

 って、14でヌードモデルって一体どんだけ非現実的な設定よ(笑)。

 萌葱は、その熱意は大変なものなのですが、やはり恥ずかしさは拭いきれないし、洋一は女の子が苦手でせっかくのヌードモデルを直視できずただでさえあまり上手でないのに……。
 そんな二人が、互いに美術に真剣に向き合いながら支え合って学んで成長して行くお話です。
 脇として、洋一の従姉妹で一年の陽夏(はるか)、同じく一年でも天才的と言われている、実は浪人生で年上なのに萌葱からすらも年下と間違われる宵。
 それに萌葱の叔父、のくせに女性にしか見えない格好(笑)の有栖川教授。そんなわけで、洋一以外はほぼ(外見では)女性キャラばかり(笑)。

 陽夏も意外と洋一のために色々してくれるし、宵はどこか変人で、萌葱を縛って絵のモデルにするなどと言った奇行もしばしば。

 さて、前述のように洋一も萌葱も真面目で、萌葱が最初に洋一の絵のモデルになったときには、その真剣な眼に萌葱はちょっとどきっとしてしまうし、洋一も萌葱がとても魅力的だと感じています。
 萌葱は常々、いい(ヌード)モデルになりたいと言っていますし、それはつまり、描く人の役に立ちたいと思っているからです。
 こんな可愛い娘にこんなに真剣にヌードになられたら、そりゃちょっと困りますよね(笑)。

 ところで、タイトルに書いた通りこれは第一巻で、しかも4コマ漫画なんですけど、この巻の終り辺りではちゃんと結構話が盛り上がっていますし、最後のオチにはちょっと意表を突かれました。いや、気付かない方がおかしいのかも知れませんが(笑)。
 どういう展開になるのかというと、前述のように洋一は反対する父親をなんとか説得して美大に来ているのですが、成績が悪かったら退学させると言われてしまいました。
 それで、みんなが一致団結してなんとか洋一を危機から救おうとするのです。

 学内コンクールで良い作品を出せれば評価が上がるということでそれに向けて動き始めるのですが、題材は何でも可ということで、直視できないヌードよりももっと他のものをと色々試すのですが、うまく行かず。
 そこで宵さんが一言、「萌葱を描けばいいんじゃないのか?」と。宵さんは続けてこう言っていました。

「お前が今まで描いた絵を見たが 彼女の絵が最も丹念に描かれていた」
「本当に好きなものを描けば自然と血が通うものだ」
「そしてそれは必ず見る者に伝わる」

 物語の冒頭が思い起こされます。最初から洋一は、萌葱を真摯に描いていました。
 それで初心に帰って一念発起、萌葱の裸体を直視できない洋一を何とか慣れさせようとドタバタが始まるわけですが(笑)、それでもそう簡単に行くわけもなく……。

 ここで洋一がはたと閃きました。
 結局描き上がったのは、…………。

 一巻がこのように終わったことで、こんな風な小さな一歩から、この二人は少しずつ先へと歩んでいくのかな、と感じさせるようになっていることに、ちょっと色々感じました。
 まずは、出会いの頃に萌葱がどきっとしたあの眼、それがここへとつながる話になっているし、こうしてちょっと盛り上がってひとまず決着し、それがこのような形になったことでこの先が楽しみになってくるし。

 何より、こういう人たちの姿を見るのは、とても心地好い。

 まあ、もっと単純に、萌葱が可愛いしお色気もたっぷりだし、という心地好さもありますが(笑)。

 ともあれ、人を感動させる絵を描きたいと言っていた洋一の目標は、少なくともある方面ではクリアできたし、じゃあ次は?
 というわけで、早々に続きをプリーズ。
 などというムチャ振りを(笑)。

関連項目:

tag : 4コマKINGSぱれっとコミックス 火曜

読んだ: 『ファンタジスタドール イヴ』感想

 本屋のハヤカワ文庫の棚で、何やら柔らかいタイトルの本を見掛けました。

ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)
(2013/09/20)
野崎まど

商品詳細を見る

 ……は? 『ファンタジスタドール』って、アレ? アニメ見ましたけど、ハヤカワ文庫で扱うようなものじゃ……でも最近はハヤカワも野尻抱介がラノベのレーベルで出した作品を巻き取ったりしてますけど……でもいくらなんでも柔らか過ぎじゃ……でも『ファンタジスタドール』って偶然一致するようなタイトルに思えないし……。
 しかし、帯を見るとしっかりと「アニメ「ファンタジスタドール」前日譚」と書いてあります。

 まあ、巻末の解説を見ると大体事情がわかります。解説は、そもそもこの『ファンタジスタドール』というプロジェクトを企画した谷口悟朗氏によるもので、タイトルも「陰としてのファンタジスタ」となっています。
 平たく言うと、つい設定に凝ってしまうのでアニメの監督はせず、でもそういうところも形にしたいなということで、どうせならとこういう形態での発表になったようです。つまり、早川書房で野崎まどでみたいな。

 そんなわけでなのか、この『イヴ』という作品もあまりストーリーそのものにはそう目立つところもありません。描かれているのは、ファンタジスタドールを存在せしめるための原理のサイエンティフィックな部分、その技術がやがて彼女達を産み出すことになる理由、そしてそれを成し遂げた主要人物、大兄、遠智、そして中砥の三人の関係です。
 笠野という大兄の大学時代の同期生も重要人物ですが、彼は言わば、大兄や遠智とは違う、普通の世界の住人です。まあその意味では中砥もそうなんですが、中砥は女性であるという一点で、物語の中心に食い込んでしまいます。

 物語とは言っても前述のようにあまりストーリーはなく、大兄が自分の子供時代からのことを淡々と一人称で述べる形式になっています。
 始まりは、彼が幼い頃、ミロのヴィーナス像、もっと言えばその乳房に魅入られてしまうこと。それが始まり、なのかきっかけなのか、ともかく、彼が本質的に希求するものがここで定まっています。
 またそれとは別に、彼がサイエンスに傾倒するきっかけもその数年後にありました。

 彼は女性、特にその身体に惹き付けられていつつ、しかしいくつかの出来事のためにそれを押し殺しているわけです。
 もう一方のサイエンスについては、大学の研究室で、後輩の中砥とともにとある着想を得て、そこから発展させた仮説から大規模な研究が始まります。
 そこに現れたのが遠智です。彼は極めて優秀な頭脳の持ち主で、大兄は彼と話して、それまで自分が能力を抑えていたことに初めて気づいたくらいです。

 そんな彼らには、女性に対する共通点がありました。しかしそれを細かく説明することにあまり意味はないでしょう。理由は後述。
 ともあれ、色々な事件や事故の末、大兄と遠智は研究チームを離れ、川越にある別の組織に移ることになります。その時にはもう、その技術で何を作るのかが定まっていました。

 この回想の物語で大兄は自身を、人から離れてしまった存在と規定しています。どこか異常なのだと。
 ところで、実はこの本の形式は、本文はこれまで述べてきた通りなのですが、実際には冒頭の「はしがき」と最後の「あとがき」が別の人物の手になるものです。つまり、あとがきも作品の一部。
 その「あとがき」には、本文の最後よりも後のことが描かれていますが、そこに、多分中砥であると思われる人物が登場し、大兄、と思われる人物のことをあとがきの筆者に向けてこう評します。

(略)でも、この人は、普通の人でした。人並みに女性が好きで、人並みに嫌いな、……ただそれだけの、普通の人だったんですよ」


 中砥は前述のように、その性別から大兄や遠智の世界に食い込んできていましたが、しかしやはり、普通に人と付き合い普通に生きる普通の世界の人でした。
 普通に男も知っているし、だから、大兄が自分のことを、異常で人としてどこかおかしい存在と思っていたとしても、いやでもみんなそんなもんでしょ、とわかってしまっているのかも知れません。
 これが、上で説明を省略した理由です。

 大兄が女性の身体、例えば乳房について、何故その形なのか、などと考えるシーンがありました。何故なのかそれが窮極なのだと。
 しかし言ってみれば、それが窮極なのは自分の中にそのような基準がビルトインされているからであり、それが男というものなのだ。そう思い至るべきだったのです。
 そして、中砥(と思われる人物)による述懐は、それを客観視できる立場からの直観的な洞察であると言えます。

 『ファンタジスタドール』という作品世界のサイエンティフィックな意味での基本設定についても、男性と女性の奇数と偶数へのマッピングという何やら古典的な表現がまず登場し、ある次元に下から干渉するには一つではなく二つ下の次元が良い、つまり奇数同士偶数同士が良いという話に展開し、それがあの「カード」という二次元の形態の根拠ということになったものとしているようです。
 その他、物質そのものの操作に関する様々な常識を超越した技術の根拠が描かれています。

 こんなようなところから、「ファンタジスタドール」を具現化する技術、何故それが「ファンタジスタドール」なのか、そしてそもそも「ファンタジスタドール」が生まれた理由、などが導かれます。
 それは何やら、アニメ作品のあのきらきらと華やかな世界とはまるで掛け離れたもので、まさに解説にある「陰の側面、闇の部分」と言えるでしょう。

 表紙にも本文にもあの可愛らしいドールを描いたイラストはなし。
 大兄達がどうなったかは描かれず、巻末には15ページにも及ぶ年表が掲載され、何だか、先日紹介した小説版『ゼビウス』と似たような雰囲気も感じられます。
 やはり、成り立ちが似ていると到達点も似通ってくるのでしょうか。

tag : ハヤカワ文庫JA 野崎まど

アニメ: 2014秋アニメ感想(3)

 今週のアニメ感想です。

 前回の感想の冒頭でエロゲがどうこうという話をしましたが、実際、エロゲメーカーの活躍が目立っていますよね。これもしかすると、まどマギその他で虚淵玄がニトロの名を売ったというのがあるかも? 今期、エロゲが原作というのもありますが、そういうところが企画したというのも目立っている感じなので。
 昔は、色んな発想がまずその分野で誕生し(イノベーション)一般化して行くという流れが、大河のようなとまでは行かずとも確実にあったと思いますが、少し別の流れが発生してきた、というか模索し現実化してきたのかも知れません。
 とまあ気づいたのは今なんですが、きっとそれなりに前から進行してきたのでしょうね。

ヤマノススメ セカンドシーズン 新十四合目「お母さんと霧ヶ峰!」
 何だか今回は、あおいのお母さんが主役みたいでした。
yamanosusume2_14_1.png

yamanosusume2_14_2.png
 どんどん先に行ってしまうあおい。その成長が眩しいようです。
yamanosusume2_14_3.pngyamanosusume2_14_4.png
 成長とは、体力のことだけではありません。娘の世界が拡がっていくことが喜ばしいのでしょう。
 今回の登山の、特にここのシーンでは、ピアノ主体のリズミカルなBGMがとても新鮮で印象的でした。

 今回は霧ヶ峰、そしてその風景から小さい頃のことを思い出し、次は谷川岳。ストーリーが連鎖して行きますが、そういう流れから富士登山(と挫折)を思い起こしてみると、シリーズ構成がとても綺麗です。

 それにしても、ひなたのお父さんが霧ヶ峰を勧めたときにエアコンがアップで写されるとか、あまつさえひなたがエアコンじゃないのかと突っ込むとか(笑)。

甘城ブリリアントパーク 第3話「テコ入れが効かない!」

amaburi_3_1.pngamaburi_3_2.png
「私もやれることは、何でもやるつもりだから」
「ん? そうか。では早速一肌脱いでもらおう」

 まあ、フラグですね(笑)。
 ところで、笑顔が固いと言われたラティファですが。
amaburi_3_3.png
 むしろこちらの方がいいんでわ……。

クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 第3話「ヴィルキス覚醒」
 主人公が人間になりました。いい最終回だった。

Fate/stay night Unlimited Blade Works #02「開幕の刻」
fateubw_2_1.png
 何だか妙な雰囲気の関係が構築されていますし。

fateubw_2_2.png
「喜べ少年。君の願いはようやく叶う」
「わかっていた筈だ。明確な悪がいなければ、君の望みは叶わない。たとえそれが君にとって容認し得ぬものであろうと、正義の味方には、倒すべき悪が必要なのだから」

 士郎の本質、そして今後についても重要な意味を含んでいますね。
 その辺り、重大なネタバレを#01の感想に書いたわけですが、わかっている人にしか通じない(多分)のってネタバレになるんだろうか。
 それにしても、
fateubw_2_3.png
他のキャラもそうですけど、ついこの間まで見ていた別の番組のことを思い起こすと、こういうのって……(笑)。

ソードアート・オンラインII 第15話「湖の女王」
 SAO2も16回目ですが、前回は第14.5話だったので。
 今回から始まったキャリバー編は、アニメのフェアリィ・ダンス編(一期後半)では省略されたイベントから発展する話です。あの象水母は、リーファが助けてやってくれとキリトにお願い
saoii_15_1.png
して、結果彼らを運んでくれたわけですが、アニメではトンキーと名付けたのはリーファということになりました。
 まあ、フェアリィ・ダンス編ももう終わってしまったので、そこは別にどちらでもいいということでしょうか。
 キリトはしきりにキモいと言っていますが、
saoii_15_2.png
リーファから見ると「可愛い」ようで(笑)。

 今回彼らが挑むクエストは何だか随分変わったもので、キリトも、ゲームの運営的にそんなことするかなぁと不審がっています。
 ともあれ、≪聖剣エクスキャリバー≫を巡るクエストでは、他のプレイヤーがどうやら本来の請願者である女王ウルズとは敵対している相手に騙されている中、キリト達が正しいルートを辿るということになります。
 それにしても、ウルズと二人の妹って日本では……(笑)。

 ところで、ケットシーの尻尾には謎の感覚があるようで、怖れを知らないキリトはシノンの尻尾を掴んで悲鳴を上げさせたり(笑)していますが。
saoii_15_3.png
 そこで、自分の尻尾を見るシリカは、果たして一体何を想っているのでしょうか???

 あとどうでもいい話ですが。
saoii_15_4.png
 階段降りるときにこの角度になるって変じゃね?

結城友奈は勇者である 第一話「乙女の真心」, 第二話「ろうたけたる思い」
 遅れてやってきた今期の真打ち
 なんというかこう、物凄く衝撃的でした。

 まあともあれ、まだ話はよくわからないので、取り敢えずは映像表現。……と思ったんですが、更にその前に作品世界の様子。
yuyuyu_1_1.png
 神樹様に守られたこの世界、学校での挨拶でも神樹様への感謝の礼。
 なんというか、この極めて日本的な設定が、まず私の感性を直撃しました。何だか神道的なもの、そしてバーテックスのような外来語由来の言葉などが混在し、敵を封じるための儀式に祝詞風の呪文があったりしますが実は「要は魂込めれば言葉は問わない」とか(笑)、そういういい加減なところが。

 勇者部に所属する友奈達は、侵略してくるバーテックスから世界を守る勇者、としての適性が高く、まあこの日までは候補者に過ぎなかったわけですが。
 襲い来る危機の映像表現に、まず驚愕。
 いきなり停止する時間。そして遠くに発生し、迫る異変。
yuyuyu_1_2.png

yuyuyu_1_3.png

yuyuyu_1_4.png

yuyuyu_1_5.png

yuyuyu_1_6.png
 この綺麗でかつ狂気に満ちた色合い。それに幻想的なBGM。飲み込まれてみれば……。
yuyuyu_1_7.png
 そして、敵バーテックス。
yuyuyu_1_8.png
 なんだか、まどマギの魔女の結界とかエヴァの使徒を見たときの衝撃を思い出します。これは決してパクりと言っている訳ではないんですけど。
 また、こういうところでの浮遊感、飛翔感。
yuyuyu_1_9.png
 姿勢。
yuyuyu_1_10.png
 構図。
yuyuyu_1_11.png
 様々な点で、広い意味での画力が魅了します。それに、
yuyuyu_1_12.png
こういう時の音とかも。
 絵の話に戻ると、バーテックスも様々だというのが表現されているのと同時に、
yuyuyu_2_2png
こういうのを
yuyuyu_2_3.png
見事に撃ち抜いたり、

yuyuyu_2_4.png
状況、終了
yuyuyu_2_5.png

この台詞、一体何者(笑)?
 どうでもいい話ですが、
yuyuyu_2_1.png
こういう一々手間の掛かる武器って妙にかっこ良く見える気がするんですけど。

 話の方も面白そうではあるんですが、まだまだわからないことが多いので、取り敢えず今回は触れないことにします。とは言っても、前述のようにまずその第一印象的な感触は極めて良好。
 こりゃ期待できそうな作品が始まったものです。
 ただ、今のところの直感では、いつものお気に入り作品のように色々思索して楽しむタイプではなく、あくまで感覚的に、という感じになりそうな予感。

tag : アニメ

ラノベ: 『なれる!SE12 アーリー?リタイアメント』感想

 今月、電撃文庫的にはプロポーズがブームなんですかね。

なれる!SE (12) アーリー?リタイアメント (電撃文庫)なれる!SE (12) アーリー?リタイアメント (電撃文庫)
(2014/10/10)
夏海 公司

商品詳細を見る

 そういえば、この間読んだもう一冊でも、ラストで図らずも告白まがいのことをしちゃった人がいたし。

 というわけで、前の巻から10ヶ月くらい焦らされた「七隈さん」の正体が、はっきりとわかりました。いや勿論、立華のことだというのはわかっていたわけですけど。
 そして、いつもながら看板に偽りありのこのシリーズ、SEじゃなく超人になろうとしている主人公の工兵が今回挑んだのは、言ってみれば労使交渉でしょうか。
 ただ、当然のことながら工兵なので(笑)、そのやり方も、そして要求内容も全く以て普通ではありません。

 あとは、いつものムチャ振り顧客ですが、国内最大の自動車メーカーであるト……じゃなくミカサの関連会社。
 個人的にはその設定だけで殺意がわいてこようというものですが、今回の相手は完全に脇役、雑魚、噛ませ犬、ちょい役です。ざまぁw
 まあ、私としてもここ最近はそこまでXXXではないですけど。
 今回はもっと重要な人物がいて、前回立華を「七隈さん」と呼んだ女子高生、名前は香椎あ……じゃなく瀬那、そして立華の叔父である七隈陣です。

 年度末で切羽詰まっている中、例によって社長が持ってきた案件がミカサの関連会社のもの。で、工兵と立華が対応するのですが、どうにも立華の様子がおかしい。いつもならその外見で初見では不安がられても仕事が始まればギャップに驚かれるものなのですが、今回は逆に、大丈夫なん?と不安がられる始末。

 大体、冒頭30ページ目くらいまで読んで、立華のその大人しさというか心ここにあらず的な様子に明らかに違和感があります。
 そんなこんなでどうにも捗々しくないミカサの案件、その他。
 そこに現れたのが、陣。そして、社長のところに彼がやってきた直後から、立華が消息不明になってしまうのです。
 スルガはああいう会社ですから途端に非常に困った状況になるわけですが、それどころかなんと、立華は退職することになっていました。

 陣のことについてはちょっと後回しにするとして、まずは瀬那。何とか立華の居所が掴めないかとさ迷っていた工兵が、ばったりと彼女と再会します。
 以前会ったときに、つまり11巻の末から12巻の冒頭で、立華は人違いということにして振り切ってしまいましたが、瀬那は一時期立華の同級生でした。

 唐突ですが、今回のこの12巻は、さほど分厚いわけでもなく、電撃文庫としては薄い部類に入るかも知れません。しかし、その内容の濃さは半端でない。それは多分、時間レンジの長さがあるでしょうし、そこに描かれる立華の過去の描写の印象の強さもまたあるでしょう。
 その第一弾が、瀬那の証言です。
 立華はとてもいわくありげに転校してきたわけですが、最初は別にそう問題もなかった。しかし、立華は自分を七隈でなく頑なに室見と称し、また、クラスと馴染もうとする気配もない。やがて、立華はささやかな悪意を以て遇されるようになります。
 それでも彼女はそんなことでどうこうすることもなかったのですが、ある日、「室見」の名前に対しちょっとしたいたずらをされた。

 このときの立華の反応は、真に恐怖すべきものでした。

『今名乗り出たらそいつとだけ話をつける。名乗り出ないならクラス全員の仕業とみなす』

 その姿については瀬那による述懐がありますが、声についてはありません。多分、あくまでも冷徹に、静かに、何より冷酷に語ったのだと思います。そして、震え上がって誰も動けなかった。
 立華は、『後悔するわよ』と一言。
 一体何をするのかと思ったら、まさに立華。少ししたある日、クラスで利用されていた所謂裏サイトが、いきなり公開状態になったのです。そして、クラスの人間関係は崩壊。

 立華がやったこととしか思えない。瀬那は「七隈さんの仕業」と言っていました。実際、立華になら可能だし、最も効果的な報復であると言えます。勿論、その効果についてもちゃんとわかっている筈。

 ただ、ここで一つ思ったことがあります。瀬那は、その裏サイトで「犯罪自慢とかしてません」と言っていました。しかし、本当にそうだったのでしょうか。瀬那が知らないだけで、実はあったのではないか。
 そして、立華がパスワードを解除するとき、事前にその種のものだけは削除していたのではないか。
 そう考えた理由は二つのレイヤーにそれぞれあって、まずは、こういう台詞が出てきたこと自体がそれを示唆していないか、ということ。もう一つは、立華ならその辺りに線引きするのではないか、ということです。
 そのように思うのは、「現在」の立華のイメージに引っ張られ過ぎでしょうか。

 さて、では何故立華はそこまで「室見」にこだわるのか。それを明してくれるのが、もう一人の重要人物、七隈陣です。
 彼は、立華の母の弟であり、スルガにも投資しているVCの一員であり、彼女をスルガに預けた人でもあります。彼の語った立華の生い立ちは、詳細については省略しますが、とても過酷なものでした。
 そんな中、唯一立華の支えになっていたのが、別居していた父親の室見だったし、その彼の職業が、システムエンジニアだったのです。

 立華にとってたった一つ大切だった父親とのコミュニケーションのために、彼女は10年程も、SEの世界のことを学んだ。それが、立華の能力の源泉だし、以前この物語に登場した立華の偉大な師は、多分この室見氏だったのでしょう。

 ここでは、ちょっと本作とは関係ない感想を述べますが、このような家庭の事情は、昨今の創作物、特に公共の電波に乗るドラマではあまり描かれていないように思います。若しくは、描いていない、描けないようにも。
 どこが、とは言いませんが、そのことについてのちょっとした意図を込め、数年前に小説を書いたことがあります。

 まあその辺りのことは関係ないのでおくとして。
 工兵と梢は、瀬那の線から立華の実家に辿り着き、陣からこの話を聞いたわけですが、その時の立華はもう、受け入れてしまったようでした。そして、別れ際にこう言ったのです。

「あんたが羨ましい」


 今回、元から事情を知っていたと思われるカモメさんは都合で離れていたのですが、梢から状況が伝わって駆け付けてくれました。彼女も複雑な背景があるらしく直接何かをしてくれるわけにはいかなかったのですが、勿論、力になってくれました。
 何より、工兵を連れ回して勇気づけてくれた。そして、一番重要なことに気づかせてくれた。

 まあ、こうなればあとはもう工兵だから(笑)、いつものように常識はずれの方法で突き進みます。

 冒頭で労使交渉と表現したのは、社長を相手に社の方針に口を出すことにしたからです。ただ、目指すところは待遇の改善とかではなく、いやまあそうであるとも言えますが、立華を退職させないこと。
 それが叶わないのであれば、自ら独立して立華を雇う。
 それも、梢と福大を引き抜いて(笑)。

 しかし、それは社長に対しての交渉であり、真の相手は陣です。何故なら、陣の方が強敵であるからであり、それが何故かというと、陣の側にはそれが「立華のため」であるという錦の御幡があるからです。
 その陣を動かしたのは、多分最後の一言です。

「室見さんの幸せがなんなのか、本当に輝ける場所がどこなのか、もう一度考えてみてください。世間一般の尺度や常識なんかじゃなく」

 穏当な言葉を使っていますが、その意味するところは、「あんた立華の幸せとは何なのか考えたことがあるのか!?」という糾弾でしょう。

 ちなみにこの時、即ち立華の居場所は、人生は、という話をしている中で、工兵はこう叫びました。

「要は室見さんが与えてくれたものを僕も返し続ければいいんでしょう。ずっと、ずっとそばにいて」
「ずっとっていつまでだ。十年か二十年か」
「生きてる限りずっとですよ!」

 十年か二十年か。生きてる限りずっと。この二つは、表面上は時間の長さのことを表現していますが、しかし、その言葉が伝えるものは全く違います。工兵が続けて、立華の人生を背負うと言っていますが、その時間をではなく、立華の人生、立華その人自身のことという意味になるのです。
 これが、冒頭で「プロポーズ」と表現した台詞です。

 結局、色々条件を付けられはしましたが、立華はスルガに戻ってきました。ワガママを言っていたミカサの関連会社も、きちんと対応した上で上の方から(笑)黙らせてもらえましたし。
 色々ハッピーにまとまったわけですが、当然のことながら、オチが付いています。

 常識的に解釈すれば「十年二十年」と「生きてる限りずっと」というのは意味の違う言葉であるわけですが、常識はずれな工兵は、単に時間のことを言っていたわけで。
 上記のように伝えられた「意味」は、実は伝送路でのプロトコルの非互換のために発生した誤変換だったようです。その点では、立華も常識人だったようですね(笑)。

 そして、このような結末を迎えると気になるのは、立華の両親の消息です。あとがきの最後にあっさりと、「次回、激動です」とか書いてあるわけですが、もしやそのことでしょうか? なんせ、七隈の家に話が及んだわけですから。まあわかりませんけど。
 というわけで、今回はあとがきに「引き」があったということで。

 ところで、今回の話のテーマは属人性ということにでもなりましょうか。
 企業というものは、まずはスタートアップではその「人」に極めて大きく依存することになるものです。
 そして、形が整って今度は「生き続ける」ことが重要になってくると、属人性の排除が課題になってきます。何故なら、特定の人(の持つもの)に依存することはリスクであるからです。組織を維持するためには、人が入れ替わっても問題なく業務を遂行できるようにしなければいけません。
 そうして、組織は突出する何かを持たなくなる。
 やがて、効率化のためと称して無駄を省いていくと、引き出しがなくなっていく。そうすると組織は成長の芽を失っていくのです。

 これは極めて難しい問題で、身近な範囲では、ソニーなんかが最も典型的な例なのではないでしょうか。勿論、うまく行かなかった例です。
 一般解というものは存在しない、か少なくとも見つかっていないのではないかと思いますが、一つ言えるのは、組織というものは全体が一様なものではないということでしょうか。
 そう思うのはやはり日本の企業が身近だからでしょうが、それらは往々にして、一律に何かを課そうとします。しかし、例えばどこの企業でも同じ法律に従っているのだから同じことをしている筈、と言える部署はある筈。正確に言えば、そういう部署は同じことをしていなければいけない。
 そのようなところを標準化せずに独自性を持っている辺りに、日本企業の弱点があるんじゃないでしょうかね。

 まあ、先にも述べたようにこれは簡単に答えの出る問題でもないし、作者さんもあとがきで触れています。
 そこでは、「答えは多分、両者の中間にある」としていますが、さて、どうでしょう。

tag : 電撃文庫 夏海公司

プロフィール

水響俊二

Author:水響俊二
水響 俊二 [MIZUKI Shunji]

暫定的に、18禁作品の感想などは裏サイトで書いています。
 

最新記事
勝手広告その2
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
月別アーカイブ
アクセス解析中